スバルショップ三河安城の最新情報。新型レヴォーグ[VN型]特集:その1 近代エンジン技術史とリーンバーンターボ。| 2020年10月21日更新
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ダウンサイジングから、ライトサイジングへ、ガソリンエンジンの更なる革新。
CB18のトルク特性。ライトサイジング化により低速トルク・最大トルクを大幅に増強している。
2010年代のトレンドが、エンジンのダウンサイジング。現実的な使用環境に於ける常用負荷と最大負荷時の出力のバランス、そして低負荷時の熱効率を鑑みた上で、エンジンをミニマムサイズで設計。常用の低負荷時は「小排気量自然吸気エンジン」さながらに作動させ、高負荷時は過給圧を高めて最大トルクを確保しようというのが、ダウンサイジングコンセプトです。様々なエンジン技術をフル活用することで、エンジンの熱効率は飛躍的に改善。小排気量ターボエンジンでも充分なトルクと良好な燃費を得ることが可能になったのです。
ただ、ダウンサイジングターボは高過給圧ターボエンジンであるが故に、常にターボラグという悪癖が付きまといます。低負荷時の排圧が低いため、タービン回転数が充分上がらず、過給圧が低く留まるのが原因です。この状態では、過給エンジンながら、「自然吸気」でトルクを確保しつつ、排圧上昇を待つことになります。そのため、充分なトルクが確保されるまで、時間が掛かってしまうのです。
そこで近年導入が進んでいるのが、ライトサイジングターボというコンセントです。過給器への依存度を下げ、ターボラグの悪癖を極限しつつ、滑らかかつスムーズなトルクデリバリーと、高度なリニアリティの実現を目指します。
ダウンサイジングターボの場合、持ち前の排気量が小さいために、高負荷時は過給圧を高めにして最大出力を確保します。ドライバーがアクセルをゆっくり踏み込んでいくと、低負荷時[極低過給]→中負荷時[常用過給・最大効率運転]→高負荷時[最大過給・最大出力運転]とマッピングが次々に入れ替わっていくことになり、エンジンのキャラクターに変化が生じます。結果、ドライバーが望むトルクと実際に得られるトルクにギャップが生じます。この特性はECUの学習効果にも強く依存するため、渋滞を抜けた後や、高速道路を降りた後などは、より一層ギャップを感じることになります。
一方、ライトサイジングの場合、過給器への依存度が下がるため、こうした悪癖を和らげることが可能です。低負荷時は、多めの排気量で低速・低負荷時のトルクを確保し、中負荷・高負荷時も多すぎない過給圧でこれを補います。こうすることで、トルクカーブの谷間を解消しつつ、リニアリティの改善を図ることができるのです。
何故、今再びリーンバーンなのか。旧世代リーンバーンとは何が違う?
CB18のリーンバーンイメージ。低負荷時に積極導入することで、実行燃費の改善を図っている。
そして、最新の話題。それが、スバルがCB18で初めて導入した、新世代リーンバーンです。トルクが薄い割に、NOxを盛大に生成するために、一旦は放棄されたリーンバーン。なぜ、再びリーンバーンが脚光を浴びているのでしょうか。
これに先立つこと、約2年。マツダは、予混合圧縮着火エンジン(HCCI)コンセプトを世界で初めて実用化しました。ただ、完全なる圧縮着火の実現には難があり、マツダは火花着火を行うことで火種を作り、燃焼圧でシリンダー内圧力を高めることで、同時多発的に自己着火を促す火花点火制御圧縮着火(SPCCI)を採用しています。
HCCIとは、予混合した薄い混合気(つまり、ポート噴射)を高圧縮下で、自己着火・均質燃焼させるという技術です。ただ、HCCI燃焼が可能な条件(空燃比・混合気温度)は非常に限定されており、回転数・負荷の変動に応じることに難があることもあって、実用化は難しいとされてきたのです。マツダは、これを火花着火で克服することで、HCCI燃焼が可能な領域を一定程度に拡大。充分な実効性があると判断し、実用化に漕ぎ着けたのです。
そもそも、HCCI燃焼の最大の目的は燃焼温度の低下にあります。先述のように、高い燃焼温度では大量のNOxが生成されますし、冷却損失も増加します。HCCI燃焼では、混合気全体が一気に均質燃焼するため、効率の高い燃焼が実現。また、空燃比が低いため燃焼温度が低く、NOxの生成が少なく、冷却損失も相当抑制できるのです。また、空燃比を下げると、混合気の比熱比が低下しますから、これだけでも熱効率が改善します。
スバルがCB18で導入した新世代リーンバーンは、HCCIの前段階に位置付けられる技術に基づくものです。吸気・圧縮工程でのパイロット噴射による帰化潜熱でシリンダー内温度を下げながら、ターボ及びEGRにより空気を押し込みつつ、強力なタンブル流を生成。ピストン上死点付近で、着火アシスト用に燃料噴射を行い、火花周辺のみ理論空燃比領域を形成。火花着火による拡散燃焼により、低い空燃比下でも燃焼室全体を安定して燃焼させます。ただ、HCCI程には燃焼温度が低くないため、少なくないNOxが生成されます。そこで、これをNOx吸蔵還元触媒にて吸蔵。極短時間のリッチ燃焼によって、これを還元します。
もちろん、リーンバーン可能領域は燃料噴射量の少ない低負荷に限られます。ただ、リーンバーン領域でも、過給を用いることで一定程度のトルクを得ることが可能です。これにより、実効性のある出力及び燃費改善を実現しているのです。
NOx吸蔵還元触媒の原理。なお、低負荷での使用を継続すると、触媒に硫黄成分が蓄積するため、リッチ燃焼による高温下による定期的除去が必要。
期待はずれと言われてしまった、CB18のスペック。情報公開が足りていない!?
今回のレヴォーグのフルモデルチェンジに際して、エンジンスペックが公開されるや否や、CB18のカタログスペックに対する「否定的意見」がSNS上で飛び交いました。その論点は大凡一定していて、+200ccの「行方と効能」にあります。排気量が10%以上増えたのに、出力が+7ps増とは何ぞや、との見解です。
ファンから見れば、1.8Lという排気量は、1.6Lと2.0Lの中間。すなわち、新エンジンは1.6Lと2.0Lの中間の性格を持つべき、と考えるのはごく自然なことです。その期待値は、200psは固く超えてくるだろうというものでした。
しかし、その実態は違いました。それはあくまで、ダウンサイジングコンセプトからライトサイジングコンセプトへの移行に伴って与えた、「余裕」に過ぎなかったのです。つまり、CB18はFB16DITの後継なのであって、2.0Lは単に廃止されただけなのです。2.0Lの後継グレードの計画は存在していますが、それが実現するか否かは、このご時世ですから分かりません。
ただ、少なくともデビュー前に期待値を下げる情報があったのですから、スバル自身は新型レヴォーグのプロデュースについて真摯に見直す必要があるでしょう。せっかく購入をご決断頂いている方を悲しませませるような事は、如何なる事であってもあってはならないです。昨年のモーターショー公開時点で、大凡のスペックと目指す技術を公にし、CB18があくまでFB16DITのライトサイジング版である旨を伝えておくべきでした。それは、次世代WRXにも当てはまるでしょう。
兎にも角にも、革新的な技術を秘めて登場したスバル期待の次世代エンジンCB18。次は、その技術的詳細に迫っていきましょう。