スバルショップ三河安城の最新情報。スバリズムレポート第2弾「航空機はなぜ飛ぶのか?〜飛行機が飛ぶ原理とは〜」| 2018年12月29日更新
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航空機の性格を決定づける、翼面荷重。
翼面積と重量の比を翼面荷重と呼びます。揚力と翼面積は比例すると考えられますが、揚力は対気速度とも比例します。そのため、低速の機体ほど翼面荷重が低く設計されるのが一般的です。
低翼面荷重の機体は、低速でも充分な揚力を確保できるため、短距離での離着陸が可能な他、高い上昇性能と小さい旋回半径を有しています。ただ、気流に流されやすく、悪天候にも左右されやすいのが難点です。
高翼面荷重の機体は、失速速度が高くなります。フラップ等で揚力を補ったとしても、離着陸には長い滑走路が必須となります。翼面積が小さくても、対気速度が高ければ充分な揚力が得られるため、高速機では抗力低減を考慮して高翼面荷重が採用されます。
艦上戦闘機零戦は、大戦初期においては傑作機でした。空母から発艦せねばならない零戦は、徹底した軽量化と抗力低減が図られ、思い切った低翼面荷重(21型:107kg/㎡)を実現。素晴らしい格闘性能と長大な航続性能を誇っていました。零戦は数々の戦歴を築き上げ、その存在は既に伝説にまで昇華していました。
ところが、大戦後期に主流となった一撃離脱・編隊空戦といった空中戦闘に於いては、高翼面荷重で高速性能に優れた機体が適していました。零戦は、完全に時代遅れになっていたのです。
にも関わらず、海軍首脳部は、低翼面荷重で格闘性能に優れた戦闘機に固執しました。後継機として三菱に開発を命じた2000ps級の烈風は、低翼面荷重(130~150kg/㎡)を実現するため、30㎡に及ぶ翼面積を持つ層流翼を持っていました。しかし、それは終戦に間に合わず、代わって急遽投入されたのは、紫電改でした。陸上戦闘機として艦上運用を考慮しない、紫電改は170kg/㎡の高翼面荷重の機体で、高速性能に優れており、大戦末期に素晴らしい戦歴を残しています。
[左]:高翼面荷重を採用し、高速性能で米軍機に対抗した紫電改。USAF [Public domain], via Wikimedia Commons [右]:低翼面荷重を実現すべく巨大な主翼を採用する予定であった、烈風。
尾翼は、何のためにある?
航空機には主翼の他に、水平尾翼と垂直尾翼の2種類の尾翼があります。これは何のためにあるのでしょうか。
航空機は揚力によって、飛行を維持しています。しかし、この揚力が、突風や乱気流等の外乱によって変動することがあります。この時、機体の挙動が発散しないようにするのが、尾翼の役割です。
一般的な旅客機で見てみましょう。円形断面の胴体に主翼を備え、ここにエンジンナセルを吊下し、水平尾翼、垂直尾翼を胴体後方に装備しています。水平尾翼は縦方向の安定を司り、垂直尾翼は横方向の安定を司ります。
水平尾翼は、実はマイナス揚力を持つ。
水平尾翼は、実は下向きの揚力が発生するような翼型を採用しています。これは、主翼の空力中心を機体重心より後方に置くことで頭下げのピッチモーメントとし、これを尾部に設けた水平尾翼の下向きの力でバランスさせているのです。
外乱によって頭上げが生じた場合、水平尾翼の迎え角増加により、揚力が増加。頭下げのモーメントを発生させます。逆に、機首が下がった場合は、水平尾翼の迎え角が減少し、機首上げのモーメントが発生して挙動をバランスさせます。
垂直尾翼が作る、方向安定。
垂直尾翼は風見鶏と同じ原理で、ヨーの安定を生み出します。外乱によりヨーが生じると、迎え角の増加により逆向きのヨーモーメントが発生し、機体を安定させます。
尾翼の作用によって機体の姿勢安定を自然に維持する設計を、正安定と呼びます。多くの航空機は正安定を与えられていますが、近代の戦闘機はこの限りではありません。意図的に正安定を成立させないことで、機動性の向上を図っています。
機体を制御する、動翼。
A:エルロン[ローリング]、C:エレベータ[ピッチング]、D:ラダー[ヨーイング]
Piotr Jaworski; PioM EN DE PL (Poznań/Poland)
[GFDL or CC-BY-SA-3.0], from Wikimedia Commons
通常、航空機は機体に作用する力の釣り合いによって飛行を維持しています。動翼は、この力の釣り合いに変化を与えることで機体制御を行うためのものです。
ローリング:補助翼(エルロン)は機体をバンクさせるためのものです。主翼後縁の外側に設けられており、これを左右非対称に作動させることで機体にロールモーメントを与えます。エルロンが、フラップの機能をも果たすものはフラッペロンと呼ばれます。
ピッチング:昇降舵(エレベータ)は、水平尾翼全体もしくはその後縁部が左右対称に作動することで、ピッチモーメントを生み出します。水平尾翼全体が可動する全遊動式のものは、エレベータ+スタビライザからスタビレータとも呼ばれます。
ヨーイング:方向舵(ラダー)は、垂直尾翼全体もしくはその後縁部が作動することで、機体にヨーモーメントを与えます。ラダーの作動だけでは、機体が斜めに進むだけで旋回しません。右旋回させるには、エルロンで機体を右バンクさせた後、ラダーを作動させます。
失速領域の機動を改善するストレーキ。
主翼付け根の前縁を延長したものを、ストレーキやLERXと呼びます。原理的にはダブルデルタ翼と同様で、失速速度を低下させる効果があります。
戦闘機で求められる激しいマニューバでは、時に迎角が過剰となって失速(→スピン)に至ることがあります。そのため、機種ごとに最大迎角が指定されており、これを超えて機動することは禁じられています。LERXはF-5戦闘機の開発時に発見されたもので、前縁フラップのアクチュエータ収納部が離着陸性能の改善に有効であることから見出されました。
主翼の失速は、翼上面の気流がエネルギーを失って剥離することで起こります。超音速機で採用されるデルタ翼は、翼端失速しやすい特性を持っています。そこで、大迎角時にLERXが強力な渦を発生させ、これを翼上面に導くことで、エネルギーを与えて失速を防ぎます。LERXは、激しいマニューバや離着陸性能の改善に極めて有効です。
[上]ノースロップF-5E。原型機YF-5Aの前縁フラップ用アクチュエータのフェアリングが、空力的効果があることが偶然発見され、LERXが生まれた。ウィキメディア・コモンズ経由で
[中]Su-30MK。前部胴体両脇のカナードには失速を防ぐ効果もある。English: Aleksandr MarkinРусский: Александр Маркин [CC BY-SA 2.0], via Wikimedia Commons
[下]ロシア最新のSu-57では、LEVCONと呼ばれる可動式のLERXが特徴。Anna Zvereva from Tallinn, Estonia [CC BY-SA 2.0], ウィキメディア・コモンズ経由で
ゆっくり安全に着陸するための、高揚力装置。
前縁と後縁双方のフラップを展開して、着陸態勢に入るボーイング747。
Arpingstone [Public domain], via Wikimedia Commons
離着陸時、主翼後縁からカーテンのように現れるのが、高揚力装置(フラップ)です。翼面荷重を高めると巡航速度と経済性は向上する一方で、低速性能(主に離着陸性能)が低下します。これを補うのが、高揚力装置です。後縁に装備されるものを後縁フラップと呼び、前縁に装備されるものを前縁フラップまたはスラットと呼びます。
フラップの展開によって、主翼のキャンバーと翼面積が一時的に増加して発生揚力が大きくなり、離着陸時の滑走距離を改善します。また、フラップに隙間を設けると、翼上面の層流境界層にエネルギーが供給されるので、失速速度を下げることができます。よって、機体は大きな迎角で大きな揚力を得つつ、効果的に減速して、より低速で着陸することができます。