スバルショップ三河安城の最新情報。ニュル24時間予選レースでクラス優勝。SP3Tクラスのライバルを徹底検証。| 2019年5月30日更新

 
Nurburgring 24H Qualify
SP3Tクラスで、優勝を飾る。
 
2019年5月19日 ニュルブルクリンク24時間予選レース。
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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

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担当:余語

 

グリーン・ヘルと呼ばれる、世界一過酷なサーキット。

深緑に覆われたドイツ北西部の山あいに突如現れる、自動車の聖地ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェ。自然の起伏をそのままにレイアウトされたこのサーキットは、世界屈指無類の厳しさを誇ります。その全長は20.8kmに及び、市販車テストのメッカとして、そのラップタイムは総合性能を示す指標として、世界にその名を知られています。

現在のラップレコードは、2018年6月29日に「ポルシェ 919 Hyibrid Evo」が記録した5分19秒546。その映像からは、サーキットと呼ぶには余りにも危険なこのコースの特徴がよく分かります。

80年代末、その過酷さを知った日本人は、遥か聖地に次々に渡洋。果敢に挑戦を始めます。R32型GT-RやNSX、インプレッサWRX等、数多のクルマたちがこのコースで鍛え上げられました。今や、トヨタイムズのTVCFで、お茶の間の皆様もご存知かも知れません。

 

「隠れワークス」により様変わりする、ニュルブルクリンク24時間。

Nurburgring 24H Qualify WRX STI

このコース最大のイベントが、ニュルブルクリンク24時間レース。日本からも数多くの挑戦者が訪れています。

スバルは、2008年WRX STIでチャレンジを開始。可能な限り市販車に近い状態で参戦し、過酷なサーキットでマシンを鍛え抜き、将来へ向けた人材育成を図ることを目的としていました。当時は、牧歌的雰囲気が漂うお祭りレース。総合優勝を狙うのは精々数台で、各自思い思いのマシンがごちゃ混ぜに走っていました。

ところが、昨今はGT3クラスを中心に「隠れワークス」が大挙出場し、24時間を全力で駆け抜ける厳しいレースに様変わり。本来、GT3クラスはプライベータ向けのカテゴリーで、すべてのマシンに同一性能を保証し、ワークス活動も完全に禁止のはず。

ところが、なし崩し的に「隠れワークス活動」が始まると、技術開発は先鋭化し、車両価格も急騰。今や、お祭りレースの雰囲気は、完全に崩壊してしていまいました。

 

第1ラウンド「ブランズ・ハッチ」:開幕戦PPレース2で表彰台を獲得。

6月22〜23日に開催される本戦を前に5月19日に開催されたのが、6時間で争われる予選レース。スバルは、今年もSTIと共同でワークス参戦。WRX STIは安定したペースで順調に走行。出走98台中総合34位、SP3Tクラスでは優勝を飾っています。

SP3Tは、ニュルブルクリンクのこのレース独自のクラス。エンジンは排気量2000ccまでのターボ付きで、市販車両をベースとしたマシン争われるクラス。ライバルは少なく、出走は5台のみ。というのも、現在の主流はFIA-GT3やGT4クラス。SP3Tと違って、これらの車両は世界の様々なレースに参加できるからです。

決勝まで、残り1ヶ月弱。スバルWRX STIが争うことになる、SP3Tクラスに参加する4台をすべて見ていきましょう。なお、今回の予選レースに出走しなかった94号車はエントラント名が不明なため、調査できませんでした。

 

93号車:Bonk Motorsport [AUDI RS3 LMS]

ブルーとグリーンに、オレンジのアクセントが鮮やかなマシン。このBonk Motorsportはカスターマー向けレーシングチームであり、「勝ちに行く」というより、今あるクルマを「キチンと走らせる」のが仕事。ドライバー等の持ち込み資金で、保有車両を請負で走らせる仕組みです。今回、Bonk MotorsportはBMW M235iを2台エントリー。RS3はもう1台ありますが、今回は走行していません。

このRS3 LMSはAUDI Sportが製作したTCRマシンですが、なぜか今回はSP3Tクラスでエントリー。このRS3のファステストラップは、9分19秒台。一方、TCRクラストップのHyundaiのワークス車両は、9分2秒台と結構な俊足ぶりで、1周18秒の差があります。プライベータと本気のワークスチームとの差、と考えれば妥当でしょう。

WRX STIの今回のファステストラップは9分1秒台ですから、このRS3よりもHyundaiとの闘いの方を意識した方が、面白いかも知れません。ただ、Hyundaiは2台体制です。

 

89号車/91号車:GITI TIRE MOTORSPORT by WS RACING [VW Golf VI GTI]

この2台もSP3Tクラスにエントリー。このチームのプロジェクト名は「Girls only」で、世界でも珍しい女性だけのチーム。ドライバーだけでなく、エンジニアからメカニックまで。全てを女性でオペレーションするのが目標です。チームの主体はWS Racingで、GITI TIREとVolkswagenをパートナーとして、チーム体制を構築しています。

この真新しい2台のGolf TCRは、VWから提供されたものらしく、これまたSP3Tクラスでのエントリーとなっています。レースペースは厳しいものがあり、89号車のファステストラップは9分22秒台ですが、91号車は11分2秒台と大苦戦。

でも、遅いからといって駄目っていうワケじゃないのが、このレースの醍醐味。彼女たちの24時間のチャレンジに期待しましょう。

この他、まったく同じエントリー名の2台のAUDI R8 LMSが、GT4クラスにエントリーしています。こちらは、総合35位/49位で完走。ターボなしのGT4車両となる、SP8クラスで優勝しています。

 

かつてのライバル、レーダーモータースポーツは何処へ行った?

かつてWRX STIの好敵手だったのが、Raeder MotorsportのAUDI TT RSでした。FRvs4WDという事で、ドライ路面では明らかにTTに分があり、スバルファンは幾度も雨乞いをしたものでした。が、パタリとそのエントリーは無くなり、その役はLMS engineeringのTT RSが引き継いだものの、2017年にはこちらの活動も終了。今や、WRX STIは実質的なライバル不在の中での挑戦を強いられています。

さて、Raeder Motorsportの活動がどうなったのか調べてみると、2013年にマンタイ・レーシングと合併していました。その後、このマンタイ・レーシングの株式の51%がポルシェが取得。今では、ポルシェの(隠れ!?)ワークスチームの一部門として存続しているようです。

LMS Engineeringの方は、2017年頃にエントラントとしての活動は中断し、今ではスペアパーツ供給等の裏方として参加しているようです。

 

本来の参戦意義を果たすなら、クラスを変えて厳しいコンペティションに臨むべき。

Nurburgring 24H WRX STI

やっぱり、今年もスバルにライバルは実質的には不在。間もなくやってくる、2019年ニュルブルクリンク24時間レース。さて、今年のチャレンジはどうなるのでしょうか。

昨年のレースは序盤からトラブルを頻発。しかも、騒音規制に抵触するなど、準備不足を露呈した不満の残るレースとなりました。それでも、結果はクラス優勝。。。。

こういった耐久レースの場合、完走への一番の近道は、レースペースを落として負荷を下げること。マラソンで考えてみましょう。例え、小さなマラソン大会であっても優勝を目指そうとすれば、並大抵のことではありません。序盤からオーバーペースで飛ばせば、完走さえ不可能です。それには、相当の準備と鍛錬が必要なのは、言わずとも明らかです。

ライバルがいれば、相手を上回るべくレースペースは自ずと決まってしまいます。このペースアップがリスクを指数関数的に増大させ、真の力量が試されることになるのです。

その意味では、スバルの参戦目的の半分は最早失われていると言って過言ではないでしょう。

 

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