スバルショップ三河安城の最新情報。EV戦略第1弾:スバルの生き残り戦略。EV時代のスバルの姿とは。| 2019年6月8日更新
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トヨタの仲間づくりに、スバルも参加する。
2019年6月6日、トヨタとスバルは共同で「トヨタとSUBARU、EV専用プラットフォームおよびSUVモデルのEVを共同開発することに合意」を発表しました。続けざまに、6月7日にはトヨタが「EVの普及を目指して」と題する方針発表を行いました。
電動化に関して、世界でもっとも先行しているのはトヨタです。1997年に初代プリウスを発表して以来、原価、生産性、信頼性、衝突安全性、アフターサービス、リサイクル等々、様々なノウハウを積み重ねてきました。
突出した先進性では他に譲る所はあれど、トヨタの経験は世界のどのメーカーも持っていないものなのです。
スバルは、トヨタの仲間づくりに参加することで、協業を通して電動化に関するノウハウ不足と信頼性とアフターサービスに関する懸念は一気に解消されることになります。
この項では、具体的な商品計画や技術的な内容については別項に譲るとして、まずはビジネス面での影響について考えてみたいと思います。
一大変革期を乗り切る希望。それが、トヨタとの共同開発。
VIZV2で公表していた、スバルのHV+AWDのコンセプトイメージ。
自動車業界は一大変革期に突入しています。昨日破綻したFCA(フィアット・クライスラー)とルノーとの経営統合など、その典型でしょう。未だ見ぬ嵐を目前にして、得体の知らない不安と暗雲に、人々の冷静さを奪い去ったかの如く。。。
今、この時代に重要なことは「藁をもすがる」のではなく、自らの経営の永続性を確実にするため、強みを武器にしつつ、弱みを他社連合によって補強する、着実かつ冷静な体制づくりにあります。
2005年に始まるトヨタとの協業については、86/BRZでの不協和音が伝えられ、スバルにとって経営上の懸念材料となってきました。さらに、EyeSight ver4の海外サプライヤとの共同開発やHV/HVの独自開発など、スバルは独力での苦境打開を目指していたように思われました。
ここで幾度も記載してきたように、スバルは独自に次世代HV/EVを開発してきました。もちろん、主要部品はサプライヤからの調達となるものの、自らの責任でアッセンブリーし、自らの商品として製品化する計画だったのです。
今回、独自開発のEVに関しては独自開発を中断。トヨタとの共同開発に舵を切る、としています。
スバル単体では思ったような独自EVを開発できないジレンマ。
完全新規となるEVプラットフォームを開発するには、莫大なコストを要します。大量のバッテリを安全に床下に収納できる、全く新たなプラットフォームを用意する必要があるのです。また、バッテリ、モータ、インバータ等々、調達先も新規製造設備を用意せねばならず、そのリスクは相当大きなものです。
しかし、スポーツイメージが先行するスバルが、それらの工場稼働率を維持できるほど、EV販売が進むとも思えません。
すると、立場は逆転します。OEMは、サプライヤの意向に従わざるを得なくなります。コストは一気に急騰し、しかも独自仕様の製品ではなく、共通仕様の製品を採用せねばならなくなるのです。コレでは、まったくの本末転倒です。
困ったとなったところで、勢いコストの安い海外製品を採用すると、これまた別項記載の通り、罠が待ち受けています。不具合やトラブル等が生じると、契約書ベースの無理難題を突きつけられることになるのです。
CASE時代に突入する際して巻き起こる嵐は、到底中規模メーカーに堪えうるものではない事が明らかです。そこで、独自開発にこだわっていた方針を白紙転換。トヨタの仲間づくりに参加し、自らの強みを活かすことで合意したようです。
スバルは、トヨタとの共同開発の深度化を公表することで、ステークホルダーの利益を維持しつつ、経営の永続性に対し、冷静かつ効果的な一手を打ったと言えるでしょう。
6つのバリエーションを持つ、トヨタのEVグローバル展開。
トヨタグローバルニュースルームより
トヨタ自動車副社長の寺師氏は今回のプレゼンの中で、2017年予測に対して電動化に関して、5年前倒しで考えるべき、と述べています。つまり、これまで2030年にEV+FCVで100万台生産とするところ、2025年にはこの体制を整えていなくてはならないだろうと、言うのです。たった、5年半後のことです。
逆に言えば、今回公表した6つのEVバリエーションのうち、幾つかは2025年には市販済みで、それらの合計(FCVを含む)が100万台に達する可能性があるとしているのです。
トヨタは、EVをサイズ・ジャンル別に6つのバリエーション(ラージSUV、ミディアムセダン、ミディアムSUV、ミディアムクロスオーバー、ミディアムミニバン、コンパクト)で展開。このうち、ミディアムSUV(フォレスターやRAV4、NX等)をスバルと共同企画、コンパクトクラスをスズキ・ダイハツと協業するとしています。
以上をシンプルに考えれば、スバルと共同開発中のミディアムSUVは、2025年以前に発売されるであるのは間違いありません。そして、このモデルが100万台計画の主軸を担うことになるでしょう。
新たな時代、スバルに何ができるのか。何をするのか。
トヨタグローバルニュースルームより
今回のプロジェクトは、新会社BluE Nexusから電動化ASSYを購入するだけのものではありません。トヨタからは電動化技術を、スバルは秘伝のAWD技術を展開。両者の強みを活かし、新時代の「もっといいクルマづくり」を目指して、互いの技術をドッキングさせた次世代EVの開発を進めます。
これまでOEM(自動車メーカー)は自らの技術を囲い込み、秘中の秘として育て上げ、ブランドイメージを築き上げてきました。しかし、時代は移り変わり、メガサプライヤーが主導権を握る時代となると、OEM自身の技術領域は狭まってきています。
そう、誰でも同じようなモノが作れる時代となってしまっているのです。それは、スバルの誇る4WD領域でも同じです。
そんな最中にあっても、「強み」は決して捨ててはいけません。OEMにとって、それは唯一自身のブランドを維持する糧となるからです。スバルにとって、それはAWDであり、走りであり、安全なのです。
スバルの21世紀中盤を担うであろうEVプラットフォームに、スバルの強みである独自技術をどれだけ発揮できるか。それは、現在のスバルが持つ技術力を指し示すことになるでしょう。
次世代に通用する、スバルのレシピとは。
将来、協業が進んでいけば、トヨタースバルーマツダでミディアムEVセダンを開発することもあり得ます。その中で、どれだけ頼られる存在でいられるか。それは、そのままOEM自身の価値を表すことになります。OEMでありながら、エンジニアリング会社ともなるのです。
そして、共同開発されたプラットフォームを、自らの製品へと作り込んでいくレシピ。このレシピこそが、21世紀中盤に最重要となる新時代のブランドバリューとなります。
ケンタッキーフライドチキンや吉野家の如く、そのレシピこそがブランドそのものとなるのです。そう、EVでは、どれも買っても中身は結局同じなのですから。
トヨタは、自動車のコモディティ化を何よりも恐れています。どれを買っても一緒。なら、安い方がイイ。この流れで自滅したのが、日本の家電業界でした。その反省を含め、このEVプラットフォームには極力柔軟性を与え、OEMが個性を発揮できる配慮が成されているようです。
中身は一緒でも、トヨタとスバルとマツダでは全く違うミディアムセダンに仕上がるのです。ポップなトヨタと、美しいマツダ、クルマ本来の風合いの残すスバル。そんな棲み分けが自然かも知れません。
CASEのEに始まる、新たな協業。次は、CとA。
今回の協業は、依然としてCASEのE(Electric:電動化)に過ぎません。先だっての拙稿で述べた通り、スバルにとってS(Shared:シェアリング)は必須ではありません。しかし、C(Connected:つながる化)やA(Autonomous:自動運転)についても、スバルは新たに協業先を探す必要があります。
しかし、トヨタと同一のEVプラットフォームを採用するのに、スバル独自の次世代運転支援システム(ADAS)を採用するのは、現実的とは言えません。はたまた、ラインナップの限られるスバルが、独自システムにこだわって、2種類のADASを用意するのも同様に現実的ではありません。
となれば、新たにトヨタとの協業を開始するのが、何より自然でしょう。つまり、今回発表されるミディアムSUVには、トヨタと共同開発された次世代ADASが搭載され、このシステムは順次他モデルへ波及していくことになるはずです。
この影響を最も受けるのは、次期レヴォーグです。EyeSight ver4の搭載を前提に開発を進めていますが、ver4は短命のショートリリーフで終わってしまうのです。ver3.5に差し戻す可能性も、多いに考えられるでしょう。