スバルショップ三河安城の最新情報。SK型フォレスターがマイナーチェンジ。後期型の詳細と変更内容を徹底解説。| 2021年11月12日更新
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2021年秋、史上最大の危機に見舞われた日本の自動車産業。その最中のデビューとなった後期型フォレスター。
2020年初冬に端を発するCOVID-19による世界的パンデミックにより、発表スケジュールの大幅変更を余儀なくされているスバル。中でも一番大きな煽りを受けたのが、この後期型フォレスター。珍しく米国に先行して8月19日に国内発表、9月2日には米国独自仕様の「Wilderness」仕様が発表されています。予定が狂ったのは、この後のこと。
先進国に比してワクチン供給が遅れている東南アジアで、感染者数が急増。医療崩壊を阻止するため、各国政府は軒並みロックダウンに踏み切ります。その結果、多くの部品生産を東南アジア地域で賄ってきた国内自動車産業は、サプライチェーンが途絶。ジャスト・イン・タイム方式を徹底してきた自動車産業は、弱点を露呈。部品在庫はあっという間に払底し、生産ラインは凍り付くが如く、動きを止めてしまいます。一番酷かったのは、9月。ここ西三河一帯では、一時帰休が出るほどの大混乱となりました。
世間一般では、自動車産業の混乱の原因を「半導体不足」としていますが、実態は異なります。その最大の要因となったのが、ワイヤーハーネスでした。自動車の神経系統を成す、ワイヤーハーネス。近年では、あらゆるコンポーネントが電子制御化されているため、その構成は極めて複雑化しています。
このワイヤーハーネス、実はすべて手作りなのをご存知でしょうか?無数のカプラと車両各部を網の目のように這い回る配線。余りに複雑なため生産の自動化は現実的ではなく、一本一本すべて手作業で作られているのです。莫大な人件費を要するため、現在は生産の殆どを東南アジアに依存しています。それがロックダウンで機能不全に陥ったため、サプライチェーンが途絶するに至ったのです。
この影響に伴い、後期型フォレスターの出荷は最大2~3ヶ月の遅延を招いてしまったのです。現在は、状況は緩和。国内生産規模を限界まで引き上げつつ、東南アジアの生産を徐々に復旧させることで、納期遅延は漸く改善されつつあります。
ご注文頂いたお客様におかれましては、多大なご迷惑をお掛けしておりますことを、この場を借りて心よりお詫び申し上げます。
話題となっている、小さなお目々。そして、見逃せないSUVデザイン言語の変更。無塗装部分を一気に縮小。
今回のフォレスターのマイナーチェンジに伴う変更点は、内外装のリフレッシュと新世代アイサイトへの換装、足回りの小変更がメイン。なお、レヴォーグ譲りの1.8Lリーンバーンターボを搭載するSPORTでは、足回りのセッティングは「後期仕様」でデビューしているため、今回は変更は見送られています。
このマイナーチェンジで中でも最大の話題となっているのが、「小さなオメメ」でしょう。後期型フォレスターでは、フロント周りを中心に大胆な意匠変更が行われました。その結果、ヘッドランプ形状が変更となり、その形状の「是非」が話題となっているのです。
スバルは現行レヴォーグ以降、ヘッドライトが小型化しています。アダプティブドライビングビーム化によって、ハイ・ローの各光源が統合されたため、小型化が実現。その一方、スバルは自らのキャラクターを象徴するヘキサゴングリルの大型化も進めています。その結果、グリルに押し込まれるようにヘッドライトユニットが小型化。相対的にオメメが小さくなってしまったのです。
ただ、見逃せないのは、後期型フォレスターではデザイン論理が変更されていることです。これまで、スバルは大胆に無塗装部分を拡大することで、彼らの言う「ラギッド感」を増し、SUVならではのタフネスさを演出してきました。
ところが、後期型フォレスターでは無塗装は一気に縮小。その面積は最小限に留められています。それに代わって存在感を増したのが、先述のヘキサゴングリルです。ただ、グリルが大きくなったと言っても、ほんの数cm。大きく見せているのは、ヘッドライトとグリルの間を縦に太く走る、ボディ色部分。加えて、この縦のラインに突き刺さるように横から太く入るラインを追加することで、ヘキサゴングリルを強調し、SUVらしい骨太感を演出しているのです。この新たなSUVデザインは、次期XVを始めとした、様々なモデルに展開してくことになるでしょう。
一点、小生が疑問に思うのが、フォグランプカバーのメッキ3本線。オプションのLEDアクセサリーライナーを装着すると無くなってしまうので、わざわざ追加した理由が解せません。しかも、骨太感と真逆のソフトな丸棒。。。やるのなら、太めのボディ同色ラインの方が効果的だったと思うのですが、皆さんはどう思うでしょうか。
新世代アイサイトじゃない?アイサイトver.4??レヴォーグとは、何が違う???
後期型フォレスターに搭載されるアイサイトは、ver.4。「???」と思う方もいるでしょう。それもそのはず、レヴォーグでは「新世代アイサイト」と呼んできたのですから。ただ、公式にcer.4と呼称した以上、今後はver.4と呼ばれていくことになるのでしょう。その技術的詳細は別途拙稿をご参照頂くとして、後期型フォレスター独自の仕様について詳しく見ていきましょう。
レヴォーグとの最大の違いは、アイサイトX仕様が存在しないこと。アイサイトXを実現するには高価なユニットが多数必要なため、搭載にはダッシュボードの全面刷新が不可欠。そのため、マイナーチェンジでの搭載は不可能なのです。期待していた方にとっては、残念なお知らせかも知れません。ただ、アイサイトXはナンバリングされた高速道路のみで使用可能な機能。予防安全機能には差異はないため、実用上はそれ程大きな差にはならないでしょう。
この他、アイサイト単体でも仕様に重要な違いがあります。それは、フロント左右のミリ波レーダが外されていること。これにより、斜め前方のセンサー領域が縮小されています。これに伴って、前側方プリクラッシュブレーキの機能が省略されています。前側方プリクラッシュブレーキは、見通しの悪い交差点等で、左右から接近する車両に対してプリクラッシュブレーキを作動させるもの。完全にステレオカメラの視野角外となるため、バンパーコーナー部に設置されたミリ波レーダが必須なのです。
ただ、省略された機能はこれだけで、それ以外の機能は引き続き利用可能です。交差点での右左折時の対向車両、右折時の対向歩行者、直進時の横断自転車の他、緊急時プリクラッシュステアリングなど、レヴォーグで新たに対応したシチュエーションにも同様に対応します。ヴィオニア製ステレオカメラユニットは、前期型のver3.5に比して、視野角が大幅拡大。これに伴って、大幅な機能向上を実現しているのです。
可視光線を認識する光学カメラと異なり、ミリ波レーダはレーダ反射波で物体を識別します。しかし、その反射波で見る世界は、私たちが目で見る世界とは全く異なるものです。例えば、斜めに置かれた金属板や不導体の樹木、道路上の白線などは、反射波を全く返さないため「存在しない」ことになります。つまり、レーダはあくまで補完としてしか用いることができないのです。
スバルがステレオカメラにこだわる理由がここにあります。ですから、前側方レーダが外されても、機能上には大きな違いは出ないのです。
パワートレインに大きな変更はなし。但し、細かな改良を実施。
C型にてCB18型リーンバーンターボを搭載する「SPORT」グレードを追加していたため、今回のマイナーチェンジではパワートレインに大きな変更はありません。モデル構成も、同様に維持されています。ただ、幾つか細かな改良が成されています。
e-BOXER車に限って、新たな変速制御モード「e-Active Shift Control」が追加されています。これまで、e-BOXER車を「S」モードでワインディングを走行させると、コーナーでの不用意なエンジン回転の上下がフィーリングに良からぬ影響を与えていました。e-ACtive Shift Controlは、アクセル操作量及びGセンサー情報により、コーナリングへの積極性の有無を判断。積極性が高い場合に限って、コーナリングに適した変速制御を行います。進入時は、ダウンシフトを行ってエンジン回転を高く維持。旋回中は、低めのギア比を保持することでエンジン回転を高く保ち、アクセルワークに対する応答性を確保。脱出時は、モータアシストを最大限活用して、より鋭いダッシュを可能にします。
VSCを活用して極低μ路での走行性能を確保するX-MODEにも、今回小改良が実施されています。これまで、X-MODEを作動中、車速が40km/hを超えると自動的にOFFになります。ところが、再び車速が40km/hを切っても、X-MODEは自動復帰しません。今回、これが改善され、車速が35km/hを下回ったタイミングで、X-MODEが自動復帰するよう変更されています。また、急勾配の斜面を下る際の車速制御を自動で行うヒルディセントコントロールの制御も改善されています。アクセルを離した際のブレーキ介入速度を高め、より安定した降坂を可能にします。
スバルが取り組む、スカイフックコンセプトとは。フラットライドな乗り心地の秘密に迫る。
走りに人一倍のこだわりを持つスバルですから、今回のマイナーチェンジでも当然セッティング変更を行っています。ただ、C型でデビューした「SPORT」は、後期型コンセプトの足廻りを既に与えられているため、今回は改良対象外となっています。
近年、スバルが積極的に取り組んでいるのが、スカイフックコンセプト。ボディを架空の線に宙吊りにしたと見なして、乗り心地・振動系を仕立てていくというものです。
通常、ボディの振動・挙動を解析するのであれば、地面をZ軸のゼロ点として考えます。それは、路面の凹凸がタイヤ入力となってサスペンションをストロークさせ、その副次的効果としてボディが振動・揺動するからです。但し、この解析手法では、ボディの振動・動揺の解析は極めて複雑になります。路面→タイヤ→ハブ→サスペンション(ブッシュ)→スプリング&ダンパー又はサブフレーム→ボディと、その「→」の全てに弾性系が含まれるからです。しかも、前後軸の路面入力のタイミングは常にズレていますから、必ず路面入力に際して、ボディにはY軸廻りのモーメントが生じます。左右の路面形状差も考慮すれば、X軸廻りのモーメントも考慮せねばなりません。ここまで複雑になると、解析はほぼ不可能。経験則に頼る他ありません。
これに対し、スカイフック理論では架空の宙吊り線をZ軸のゼロ点とし、ボディはこの線から架空のダンパで吊下されていると考えます。前後左右のサスペンションマウント基部4点の振動系を考える場合、ゼロ点に対する1次振動のみで考えることができます。4点の変位だけを考慮すれば良いので、ボディの振動・揺動を極めてシンプルに考えることができます。
如何なる路面入力・サスストロークがあろうとも、常にこの4点がフラットであるように、サスペンションを仕立てていく。それが、スカイフックコンセプトのサスペンションです。かつての魔法の絨毯と絶賛されたシトロエンのハイドロニューマチック・サスペンションは、スカイフック理論を象徴する存在です。路面と完全に隔絶されたボディは完なフラットライド感覚。まるで、浮いてるか如く、滑るように走ります。
先代SJ型フォレスターが陥った罠。乗り心地志向が、走りのフィーリングをぶち壊す。
後期型フォレスターのe-BOXER仕様では、フロントのスプリングを変更。「動き出しをよりスムーズ」にするよう改良されています。また、前後ダンパーの減衰力特性を見直し、「乗り心地の向上」を図っています。この文言から分かるように、スバルが乗り心地の改善に腐心していることが伺えます。
スバルは、元来硬めの仕立てを特徴としてきました。しかし、それはドライバーオリエンテッドなモデルだからこそ、許されてきたもの。WRXやレヴォーグのユーザには歓迎されたとしても、フォレスターでは必ずしもそうではありません。なぜなら、SUVの助手席や後席には様々なパッセンジャーが乗り、目的地を目指して長距離を移動します。そこで重視されるべきは、やはり乗り心地と快適性なのです。
実際、C型SPORTの足廻りには、スカイフックコンセプトの影響を強く感じることができます。ボディのフラットライド感が強く、不快な路面入力を殆ど感じさせません。スーッとボディが穏やかに走りつつ、下の方でスタタタとタイヤが忙しく動いている感触です。それでも、フワついている感覚はなく、感覚的直進安定性も十分あります。ダイレクト感は薄いものの、乗り心地は極めて快適で、ロングドライブも苦になりません。恐らく、後期型e-BOXER仕様も同じような仕立てとされるものと思われます。
過去に同じようにスカイフックコンセプトを志向したのが、先代SJ型フォレスターの前期型。ところが、この時はフラットライド感が強過ぎて、路面入力を感じにくく、「スバルらしさ」に欠けていました。SIシャシーでは剛性が十分ではなく、ブッシュ系を緩めることで仕立てていたからです。ダイレクト感と接地感に欠け、路面からのインフォメーションはすっかり途絶されていました。SJ後期型では、サスペンション剛性を徹底改善。剛性感とダイレクト感を強めた、硬派な仕上がりに仕立て直されました。接地感が劇的に改善され、動的剛性感を飛躍的に高めたのです。ただ、その分だけ乗り心地は割りを食い、後席での快適性はむしろ後退していたのは事実です。
大切なのは、バランスです。スバルらしい走りと、SUVに求められる快適性。その両立を目指したのが、後期型フォレスターなのです。
感性領域の数値化と、感覚的評価。大切なのはバランス。新たな開発体制の中でも、スバルらしさは維持できるのか。
スカイフックコンセプトには大きな問題が潜んでいます。ボディの振動・揺動を路面と隔絶して考えるがために、悪く言えば乗り心地を「結果オーライ的」に仕立てることが可能だからです。それがために、路面との連動性が不十分となり、接地感とダイレクト感を逸してしまう可能性があるのです。それは、SJ前期型で犯した失敗そのものです。
では、なぜスバルは一旦は放棄したスカイフックコンセプトに回帰したのでしょう。その最大の理由は、これまで経験と勘に頼り過ぎていた開発工程に、再現性と一貫性を持たせるために、感性領域の積極的な数値化による定量評価を持ち込んだことにあります。スバルは、2021年4月1日付けで開発体制を変更。高度化かつ複雑化する開発環境に対応するために、より価値軸と機能軸を有機的に組み合わせることで、より機動的な開発体制を実現することを目指しています。ただ、これを実現するには、部署間を跨ぐ開発工程の中で一貫性を確保するために、感性領域の定量的評価が欠かせないのです。
その目的は、開発工程の効率向上にあります。開発目標を数値化することで、ターゲットが明確化されるだけでなく、各段階に於いて一気通貫に絶対的基準を設けることが可能になります。それは、開発工程のマネージメントを大いに改善するでしょう。
ただ、全ての感性評価を定量的に数値化するのは容易ではありません。そればかりか、数値化により意味が「縮退」する可能性さえあります。乗り心地だけを考えても、何を評価軸に置くかで良否は変わります。例えば、上下動単体では不快でなくとも、そこに横移動が加わると途端に不快感に変わります。単にZ軸だけを取り出しても、定量的評価は不可能なのです。しかし、それを網羅すべく、X・Y・Z軸の変位にモーメントも合わせれば、6自由度にもなるため、グラフで表現するのは不可能です。
そんな事に腐心するくらいなら、間違いなく自分で走った方が早いでしょう。確かに、経験と勘は再現性と一貫性には欠けていますが、数値化するという無駄な苦労を省き、時に一足飛びに正解に辿り着くこともあるのです。
常に心がけるべきは、バランスです。スバルらしい経験と勘を最大限活用した開発手法と、新たな数値化による再現性と一貫性の確保。後期型フォレスターは、それが上手く機能しているか判断する良い試金石になるかも知れません。