スバルショップ三河安城の最新情報。スバルの未来予想。電動化戦略と国内生産体制再編計画。| 2023年5月29日更新
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2023年5月、新たに発表されたスバルの電動化戦略。
2023年5月11日、スバルは2023年3月期の決算発表を行い、その中で直近の電動化戦略の見通しを公表しました。今回は、スバルの電動化戦略とその未来について考えてみましょう。
まずは、社長交代から。スバルは2023年6月1日付で代表取締役社長が交代します。中村知美氏から、新たに大崎篤氏にバトンが渡されます。大崎氏は、久方ぶりの技術畑出身。スバルでは、2代続けて営業部門出身者が経営の舵を握ってきましたから、社長交代によって企業戦略に動きがあるのか。その動向に注目が集まります。
今回の発表のポイントは2つ。一つは、BEVにの自社生産を開始すること。二つめは、次世代e-BOXER生産開始に伴って新たに北本工場を再稼働させること。これにより、BEV40万台生産体制と、次世代e-BOXERの標準パワートレイン化を実現。抜本的な生産体制変更により、長期的なCAFE規制対策を実現します。
さてさて、電動化、電動化って、猫も杓子も。。。と嘆く方もいるでしょう。それは、仰る通り、ご尤もです。今、自動車産業に求められているのは、地球環境保護であり、大気汚染防止であり、温暖化防止です。電動化は手段であって、目的ではありません。そんな事は、エンジニアなら誰でも百も承知のはず。ただ、外野のマスコミと経済アナリストとやらが、ガヤガヤ騒いで株価がフラフラするので、対応するのは致し方ないこと。でも、ミイラ取りがミイラになるのは。。。本来目的を見失わないことを祈るしかありません。
国内生産拠点は完成車2工場、パワートレイン1工場。
スバルが富士重工と呼ばれていた頃、鉄道車両、産業機器(富士ロビン)、トラック架装、バスボディなど多様な事業部門を抱えていました。ところが、2000年代の「選択と集中」により、各部門を順次売却。需要減少に伴い事業を終了したバスボディ以外は、鉄道車両は新潟トランシスへ、産業機器はマキタへ、トラック架装は新明和工業へと売却。今は、自動車と航空機のみが残り、新生・株式会社SUBARUの二本柱として、その屋台骨を支えています。
航空機部門は、回転翼機を宇都宮製作所で、固定翼機のコンポーネントを愛知県の半田/半田西工場で生産。一方、自動車部門の生産拠点は、国内では群馬製作所が唯一。この管轄下にて、本工場、矢島工場、大泉工場の3つの生産拠点が稼働しています。本工場はガソリン車、矢島工場はガソリン車に加えてe-BOXER車の完成車を生産。これら2工場で、世界生産台数90万台の約6割に当たる約60万台を生産しています。残り約30万台は、米国インディアナ州のSIAにて生産を行っています。一方、大泉工場はパワートレイン生産拠点。ここでは、ソルテラを除いた全生産台数分のスバル製水平対向エンジン及びトランスミッションを、一括集約して生産しています。
そのソルテラの生産は、群馬製作所ではなくトヨタ自動車元町工場が担当しています。トヨタ・bZ4Xの兄弟車であること、トヨタ初の本格的BEVであることが、その理由です。電動AWDシステム開発には関与したスバルですが、その生産はすべて外部に依存しているのが現状です。
新たに完成車3工場、パワートレイン2工場に。
さて、これら現状の生産体制が、電動化戦略によってどう変化するのでしょうか。最大の変化は、旧産業機器生産工場だった北本工場が再稼働。新たに自動車事業生産拠点として加わることです。これにより、スバルの国内生産拠点は、全4拠点となります。
この新生北本工場で生産されるのは、トヨタのTHSをベースとするハイブリッドユニット「次世代e-BOXER」で、その生産は2025年中に開始される見込みです。モータ及びバッテリ容量を大幅に強化した次世代e-BOXERを、標準パワートレインとして導入することにより、メーカートータルでの平均燃費の大幅改善を実現します。
同時期に、矢島工場でBEVの自社生産がスタートします。但し、矢島工場にはBEV専用ラインは設置されず、ガソリン/次世代e-BOXER車との混流生産が行われます。その規模は当面は10万台規模ながら、最終的に20万台まで増強される計画です。ただ、国内40万台体制を目指すには、これでは力不足。そこで、2027年以降に、パワートレイン専用工場の大泉工場に、BEV専用完成車生産ラインを新設。20万台規模でBEV生産を開始します。これら、BEV生産の2拠点体制の構築により、2028年以降に目標の40万台体制を確立する見込みです。なお、e-Axle生産の記述が無いことから、BEVパワートレインはトヨタ系のBulE Nexusからの全面調達となるものと思われます。
この国内生産体制の再編により、完成車生産拠点は3工場に増加。国内生産体制は20万台を加えた全80万台へ、世界生産台数は約110万台へと増強されます。
スバルがBEV自社生産体制を整える理由とは。
次に、スバルはBEVの自社生産を開始する理由を考えてみましょう。3月公表の「国内生産体制再編計画について」では、その狙いとして以下2点が挙げられています。
1つ目は、BEVへの移行期においては、必要に応じ、ガソリン車・HEVの生産も確保できる柔軟な体制を構築すること。
2つ目は、収益性にはまだ課題の多いBEV事業においても、効率の良いBEV生産を実現させ、事業性向上を目指す。
完成車生産拠点を国内で2工場しか持たないスバルにとって、BEVへの移行は大変なリスクです。航続距離に難がある現状では、BEVに大きな需要は見込めないため、新規ラインを設置しても低い稼働率に悩まされることになります。一方で、混流生産を図るとなれば、現行車種の生産に大きな影響を及ぼす可能性があります。企業規模の小さなスバルにとって、BEV自社生産は容易ではなく、一種の賭けでもあるのです。
ただ、いつまでもトヨタに生産委託していては、BEVの需要が急拡大した時に対応できません。スバルの生産枠は、受託側のトヨタの決定に左右されるからです。そこで、当初は矢島工場での混流生産として、ガソリン/HEVとBEV双方の生産体制を確保しつつ、BEV生産の技術取得・知見蓄積を図り、その後BEV専用ラインを新設するという戦略が最適とされたのです。
スバルがBEVブランドへ大転換する可能性も。
ここで注目は、「BEVへの移行期」に於いて「ガソリン車・HEVの生産『も』確保」の文言です。スバルが、トヨタの全方面作戦とは異なり、BEVへ全面移行する可能性が伺えます。同じ中規模メーカーのVOLVOやBMWはアグレッシブにBEV戦略を進めており、同様にスバルがBEVブランドへ大化けする可能性もゼロではありません。
スバルは、2022年1月の東京オートサロンにて、ニュルブルクリンクでのタイムアタックを目的としたBEVプロトタイプ「STI E-RA」を発表しています。その後話題は沙汰止みですが、こうしたパフォーマンスやモータースポーツ活動によって、BEVブランドとしてのイメージを確立し、水平対向エンジンからの早期脱却を図るのも、一つの戦略として考えられます。
ただ、トヨタへのBEVパワートレインの全面依存は、莫大な開発費を節約する最善のリスク回避策と言えど、同時に頭の痛い問題でもあります。この先、スバルは自らの望むパワートレインを自ら開発できない、「シャシー屋」になってしまうからです。例えば、スバルブランドを象徴するハイパフォーマンスモデルを開発するにしてもも、その心臓は他社製ですし、そもそもトヨタのe-Axleにその用意がなければ実現不可能なのです。
BEVを新規開発するにしても、全てはトヨタ次第。ブランド力強化には独自性と差別化は必須でも、自由にならない。このジレンマを如何に乗り越えるか、注目されます。
40万台のBEVすべてがスバル車ではない?
2028年となれば、今からたった5年後のこと。現状のスバルの世界生産台数90万台のうち、BEVが40万台となれば、それは相当な割合です。北米市場向けにはガソリン車供給が続くことを差し引くと、国内販売では8割方がBEVとなる可能性もあります。
ただ、BEVの40万台全てがスバル向けと考えるのは早計です。トヨタ向けモデルの受託生産の可能性もあるからです。BEVではプラットフォーム、パワートレインは完全に共用ですから、スバルでトヨタのBEVを生産するのも当然容易なはずです。スバルにとっては、自らの需要に限らず、ラインの稼働率を確保できるため、渡りに船のプランとなります。
この場合、GR・86のような特殊なモデルと異なり、トヨタ並みの生産性実現及び品質確保は必須となるはず。スバルにとっては、新設ラインの稼働率確保を図れるだけでなく、トヨタ生産方式による収益性改善も図れる訳で、ステークホルダーにとってホクホクの事業計画となるでしょう。
一方、トヨタ側にもメリットがあります。それが、災害時のリスク分散です。近年の発生が予想される、南海トラフ巨大地震等の激甚災害。こうした場合、九州、東北、中部に加えて、新たに北関東に生産拠点を確保することで、冗長性確保が可能になるのです。トヨタが何らかの要因でピンチに陥った時、トヨタ自動車九州、トヨタ自動車東日本に続く、「トヨタ自動車北関東」としてスバルの役割がクローズアップされることになるでしょう。
登場が予告された、BEV3車種はナニモノ?
さて、今回新たに登場が予告されたのが、BEV3車種。何処にも「自社開発」の文言はありませんから、パワートレインを含めて全てがe-TNGAをベースとするであろうことは明らか。つまり、豊田章男氏が電動化戦略を発表した際に、投入を予告したBEV35車種に強く関連付くモデル、ということになります。
今回発表の画像は、「画像はイメージです」の注釈付き。それでも、3車種のサイズ感が違うので、何らかの情報が反映されたものであることは伺えます。ここで重要なのは、これら3車種がSUVとしての投入が予告されていること。従来からのSUV中心の戦略は、BEV時代でも不変ということでしょう。
ベールに包まれた3台のうち、まずは右奥のモデルは、縦横比を見る限り、かなりコンパクト。但し、明確にボンネットがあるので、軽規格には収まらないはず。このサイズのSUVとなると、ライズ/ロッキー/REXといった処でしょうか。
続いて、中央のモデルは、他2車種より若干全高が低いように見えます。丸みのあるボンネットはしっかり長さがあり、ルーフはリヤエンドまで伸びており、クロストレックより全長が長いように思えます。レヴォーグサイズのクロスオーバーでしょうか。
最後は左奥のモデルは、一般的なSUVよりも車高が高く見え、SUVというより背高ミニバンに近いように思えます。三菱デリカD5のようなモデルでしょうか。スバル初のスライドドア乗用車の可能性もあるかも知れません。