SUBARU GLOBAL PLATFORM登場。その真の実力を計る。 [2016年03月12日更新]
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SUBARU GLOBAL PLATFORMの登場でスバルの何が変わるのか。
3月7日、9年に渡って継続使用されてきた「SIシャシー」に代わる次世代プラットフォームとして導入される「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」についての技術発表を行いました。
2025年に至る次世代のスバルを担うSGPの開発目標は、以下の通りです。
【SUBARU GLOBAL PLATFORM の主な特長】
2025 年までを見据えた次世代プラットフォームとして、以下を実現します。
■ スバル史上最高レベルの総合性能進化
1. 高性能を超えた、感性に響く「動的質感」
2. 世界最高水準の「安全性能」
■ 将来の電動化にも対応し、全車種の開発を一つのプラットフォーム設計構想で実現
「際立つ」ために開発された、スバルグローバルプラットフォーム(SGP)。
SGPの開発目標には、プラットフォームの開発では一般的な生産性向上、コストダウン、モジュール化などの文言や、燃費向上、軽量化などの言葉も見当たりません。それはなぜなのでしょうか。
新興国市場において成功を納めるには、技術哲学やブランドヒストリーよりも、強烈なインパクトが効果を発揮します。そのため、多くのメーカーが小難しい技術哲学よりも、デザインやスペックに重きを置くようになりました。自動車から技術的個性が急速に失われているのには、そんな一面もあります。
スバルが重要視するのは、北米や日本といった成熟市場です。ここで持続的な成功を納めるには、ブランドイメージに対する技術的、歴史的裏付けが必要です。その場しのぎのイメージ戦略では見透かされてしまうのです。そこで、スバルは伝統的な技術的個性を継承・発展させつつ、「動的質感」と「安全性能」の向上を中期経営計画の柱に据えました。
よりスバルらしくあるために、「SUBARU DNA」をより進化させつつ「究極の走り」と「究極の安全」を追求するために、スバルはSGPを新たに開発したのです。
7本ものフレームが前後に縦貫する特徴的なフレーム構造。
今回、SGPの開発にあたってもっとも重要視されたのは、ボディ剛性の大幅な向上です。
現行SIシャシーの構造と比較してみた時、もっとも目に付くのが、フロアを前後に走る7本ものフレーム。多くのプラットフォームでは3〜5本のフレームを見ることができますが、前後に計7本ものフレームを持つものは類を見ません。中でも目新しいのが、フロントサイドから斜めにフロアを貫通するフレームです。このフレームは燃料タンクをグルリと回りこんで、リヤまで繋っています。これは剛性と衝突安全性の双方の向上を図るためのもので、前後に貫通するフレームが切れ目のないボディ剛性をもたらします。
SGPでは、このフレームとバルクヘッドが交差するポイントを起点から、フレームが放射状に広がる設計になっています。フロントタイヤの反力を受け止めるこの付近を徹底的に強化することで、ボディ全体の剛性の向上が図られているのです。また、この付近ではサブフレームから後方に左右に伸びる大きな「ステー」が目立ちます。ロアアームの前後の取付点を強化することで、タイヤの位置決めを徹底的に強化しています。サスペンションでは、まるでレーシングカーのように長く採られたサスペンションアームが印象的です。長いサスペンションアームは、接地面変化をより小さくできるので非常に有効です。
出来ることは、徹底的に取り入れていく。そんな貪欲さがこのプラットフォームから見えてきます。
大幅に向上したボディ剛性値。
スバルの公表値によれば、フロント車体横曲げ剛性では現行車比+90%、フロントサスペンション剛性では現行車比+70%、車体ねじり剛性では現行車比+70%、リヤサブフレーム剛性は現行車比+100%とのこと。徹底的に強化されたフロア構造によって、ボディ剛性は大幅に向上しています。
これまでも、ボディ剛性の高さに定評があったスバルですから、より一層の強化によってボディ剛性は比類なきレベルまで到達するはずです。では、なぜスバルはこれほどまでボディ剛性の向上にこだわるのでしょうか。
クルマを「よく走らせる」には、常に上手くタイヤを接地させるか、がキモです。路面の凹凸、車両の挙動、慣性力など状況がどのように変化しても、接地面変化は避けねばなりません。それには、サスペンションが設計通りに作動していることが前提です。しかし、そのサスペンションの取付点自体が変形・変位していたとしたら、どうでしょう。サスペンションは設計通りに作動せず、タイヤは想定した通りに接地しません。だからこそ、スバルはSGPを徹底的に強靭に鍛え上げたのです。質の高い走り。それには高いボディ剛性が必須なのです。
また、ボディ剛性の向上は振動・騒音対策にも有効です。1kgの鉄のカタマリと、1kgの薄い鉄板を、同じ力で叩いた時。鉄のカタマリの方が、甲高く小さな音がします。これは、鉄のカタマリの方が剛性が高いためです。クルマで生じる振動は幾種類もありますが、タイヤ、エンジン、ドライブトレインのいずれかが発生源です。そのどれかの振動の周波数と、ボディの固有振動数が等しくなると、不快なビビリ音が生じます。この時、ボディ剛性を上げていくと固有振動数が高くなっていくので、こうした振動と共振を起こしにくくなるのです。
振動や騒音があるとドライバーは不快感なだけでなく、クルマに不安感を覚えます。ボディ剛性の向上は静粛性に直結するだけでなく、「走りの質感」を大きく向上させるのです。
世界一の衝突安全性能を目指す。
米国のIIHSの実施する、64km/hで前面25%をバリアに衝突させるスモールオーバーラップ衝突試験。この試験では、衝突エネルギーは片側のフロントのサイドフレームに集中します。サイドフレームが潰れつつエネルギーを吸収し、残存エネルギーがAピラーの付け根部まで達すると、Aピラーとサイドシルの上下2方向に分散されるのですが、ここの強度が不十分だとうまくエネルギーを伝達できず、フロントドア開口部分が大きく変形してしまうことになります。これは下肢への重大な障害としてカウントされ、低スコアの要因となります。
そこで、SGPではAピラー付け根部分の大幅な強化を図っています。さらに、サイドフレーム後方からリヤタイヤ前方へ斜めに縦貫するフレームを新たに設けることで、衝突エネルギーの高効率での分散を図っています。
しかし、実際の道路上ではまっすぐ正対して衝突することはあり得ません。そこで構想されているのが、さらにハイレベルなオブリーク衝突(斜め方向の衝突試験)です。斜め方向からの衝突ではサイドフレームはうまく潰れず、これを折るような強い衝撃が掛かるため、エネルギー吸収が図れません。SGPでは、これに対応する設計になっているようです。わざわざ、フロア上に7本ものフレームを設けたのは、ここに理由がありそうです。
動的質感の向上。その先にあるもの。
スバルをスバルたらしめているのは何か。この模索の先に見つけたもの。それが、動的質感というキーワードでした。性能やスペックではなく、「質が高い」と感じさせるだけの走りのレベルを実現する。それこそが、スバルであり続ける答えであると、結論づけたのです。そのためには、誤魔化しではなく、直球勝負。そんな強い思いが伝わってきます。
右のグラフに示すように、スバルは動的質感のレベルを欧州車を凌駕する領域まで向上させようとしています。そのうえで、価格は据え置くとしているのです。ただ、動的質感とは走りそのものだけに留まりません。走る際に、ドライバーが触れるその全てが動的質感を左右します。ステアリングの感触、シフトレバーやパドルの操作感、メーターパネルのデザイン、各種スイッチの節度感。こういった諸々のものにまで、評価の対象は広がっているのです。スバルが、この辺りをどれだけ向上させられるのか、楽しみに見ていきたいと思います。
スバルは、プレミアムブランドに並ぶ動的質感を、アッパークラスの値段で実現しようとしています。この戦略はさらに大きな成功をもたらすでしょう。まもなく、登場する新型インプレッサ。その登場が、今から楽しみです。