SUPER GT第6戦で、BRZが圧倒的な速さで優勝を飾る。 [2018年10月04日更新]
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SUPER GT第6戦で、BRZが圧倒的な速さで優勝を飾る。
SUPER GT。BRZは、スポーツランドSUGOで行われた第6戦で、見事ポールtoフィニッシュを飾りました。それも、他を寄せ付けぬ圧勝。長らく苦戦が続いてきた今シーズンの雪辱を、見事果たしました。
SUGOは、日本の国際サーキットでは珍しい、地形をふんだんに活かしたレイアウト。全長も3737mと短く、周り込んだセクションを含むコンパクトなレイアウトが特徴のテクニカルサーキットです。それゆえ、エンジンパワーよりもシャシーパフォーマンスの性能差が出やすいサーキットです。
パワー不足に苦しむBRZにとっては、千載一遇のチャンス。ここぞとばかりに、パフォーマンスを発揮した、という訳です。ただ、計算上はそうであっても、他のマシンに先行を許せば、パワーに劣るBRZでは逆転は不可能。ドライバーにとっては相当なプレッシャーだったはずです。
そう、BRZは相当のパワーハンデを負って、シリーズを戦っているのです。
最大限の優遇処置を受けても、苦戦が続いてきたBRZ。
SUPER GTのGT300クラスは、プライベータを対象としたクラス。種々雑多なマシンが溢れる、スポーツカーの見本市のような楽しいクラスです。
と言っても、元々のパフォーマンスが異なるマシンで魅力あるレースを行うのですから、各マシンの性能差をゼロにしなければなりません。でないと、資金力の差=成績差と、まったく面白くないレースになってしまいます。
そこで、主催団体のGTAは、年毎の調整に苦労を重ねてきました。かつては、ほとんどのマシンが国内のレーシングファクトリーで作られるオリジナルマシンだっただけに、その苦労は並大抵のものではなかったようです。そこに、トヨタ(apr)とホンダ(無限)がハイブリッドを投入。そして、GT3の参加要請と、苦労はますます増えるばかり。
その調整値はレースの度に修正されるうえ、高地にある富士スピードウェイは特別な調整がなされます。その上で、毎戦均衡した熱戦が繰り広げられているのです。
たった2000ccの排気量しか持たないBRZは、最大限の優遇処置(車重とブースト圧)を受けてシリーズを戦っているのです。
JSPCとJTCC。2つの失敗を教訓に運営される、SUPER GT。
JSPCは、グループCを対象としたプロトタイプカーによる耐久レース。初期の構図は、序章のプライベータポルシェに、国産ワークスが挑むという図式。バブル景気前夜の好景気で、プライベータポルシェは豊富な資金を元手に大活躍。中には、アマチュアでレースを始め、女性を渡り歩いて資金を作り、JSPCまで辿り着いたという猛者まで居たほどです。
この図式は、国産勢の懸命な開発努力によって崩壊します。ポルシェは完全に時代遅れとなり、2台の日産ワークスがJSPCを席巻。そして、バブル崩壊。プライベータは消え去り、1992年には全部でたった9台。悲しい終焉でした。
もう一つは、JTCCです。イギリスのBTCCに端を発するツーリングカー規定は世界に広まり、1994年には日本にも導入。当初は、拮抗した熾烈なバトルが魅力でしたが、国産勢の台頭とともに様相は変化します。
特に深刻だったのは、速すぎるアコードの登場。ホンダは、F1活動の終了と共にJTCCに全力を投入。ホンダは、あっと言う間にJTCCを席巻。そうこうするうちに、ホンダと日産が業績不振を理由に撤退。1998年は、トヨタ製マシンのみで争われ、TTCCと揶揄される始末。余りに寂しい幕引きとなりました。
ワークスがしのぎを削る、GT500。プライベータの楽園、GT300。
勝てば、イイ。勝って勝って勝ちまくれ。そんな参戦姿勢でメーカーに参加されては、JSPCやJTCCのように、「一強他弱」となってレースシリーズは崩壊します。
しかし、主役たるワークスチームは、メーカの経営陣と株主の承認のもと予算を確保し、活動しています。その成果は、ただ一つ。勝って、メーカーに貢献すること。当然ながら、レースシリーズの繁栄や維持は眼中にありません。
一方のプライベータは、ワークスの鼻を明かすのが最大の楽しみ。プライベータだからと言って、すぐ周回遅れになるのなら、出ない方がマシ。主催団体にとっても、グリッドを華やかにするには、多数のプライベータの存在は欠かせません。
そもそも、両者は相容れない目的を持っているのです。
そこで、SUPER GTはワークス用カテゴリーとプライベータ用カテゴリーを完全に分離。GT500は完全にワークスマシンのみとし、GT300はあらゆるプライベータに門戸を開く。これが実を結んで、シリーズは安定が維持されてきました。今や、SUPER GTはアジアでも開催され、ドイツのDTMからラブコールを送られるほど、その成功は世界から称賛されています。
SUPER GTはレースではなく、レーシングエンターテイメント。
1994年にJGTCとしてスタートしたSUPER GTは、性能調整を前提にスタートしたレースシリーズです。速いマシンがあれば遅くし、勝者にはウェイトを課す。こうして、性能が常に拮抗するよう「演出」しているのです。
そう、SUPER GTは「純粋なレース」ではありません。「レーシングエンターテイメント」なのです。
今や「純粋なレース」は、唯一F1のみです。それがために、資金力+技術力=成績差と、F1の図式は常に明確。シリーズは、完全にメルセデスが掌握しており、「波乱の展開」など何年も見ていません。F1の人気は低下する一方です。結末の知れた「レース」など、面白くなくて当然です。
SUPER GTは、メーカーの都合に流されず、ファンを第一としてシリーズを運営しています。誰が優勝するか毎戦予想も付かず、熱戦が繰り広げられています。その甲斐あって、その人気は今やすっかり安定期に入っているようです。
今年は、ジェンソン・バトンの参戦によって、世界の注目はますます増しており、今後も世界から有力ドライバーが続々SUPER GTになだれ込んでくることでしょう。また、近い将来DTMとの交流戦も開催される予定で、そうなると5メーカーが踵を接する戦いが見られるようになるでしょう。
理想のプライベータ専用マシン、GT3???
様々なマシンがしのぎを削るGT300クラスは、SUPER GTの努力の結晶です。現在、GT300のグリッドの大半を占めるのが、GT3マシンたち。
GT3は、メーカーが開発して販売する、市販レーシングカーです。「一応」価格は規制されていて、大凡6500万円程度。ニュルブルクリンク24Hレース等の耐久レースに参戦するため、高い信頼性が担保されているのが特徴で、中にはオーバーホール期間が20,000kmに達するマシンもあります。ドイツメーカーが主流ですが、NSXやRC-F、GT-Rなど国産マシンも活躍の幅を広げつつあります。
ただ、リヤエンジンのポルシェ911や2.5t級のベントレー・コンチネンタルを競わせるには、性能調整が不可欠。これをBOP(Barance of Perfomance)と呼び、FIAが毎年同じサーキットを実際に走らせて細かく調整値を決定してます。
買ってスグに優勝を争える。しかも、メンテナンスも容易。GT3は、プライベータの理想のマシンなのです。しかも、マシンによっては自ら刻むヒストリーによって、プレミアムを付けて再販することも可能。GT3は、GT300クラスにとって理想的なマシンに思えます。
が、そうではありません。GT3の影で、煽りを受けたのが国産オリジナルマシンたちです。
GT3の増加が、国内レーシングファクトリーの首を絞める。
プライベータの楽園たるGT300は、国内のレーシングファクトリーにオリジナルマシン製作という、貴重な現金収入の機会を与えてきました。これに対し、既製のGT3マシンは、メーカーの製作したマシンを走らせるだけ。これでは、メンテナンス料しか収入になりません。
これでは、国内の貴重な人材や技術が失われてしまいます。しかも、GT3で儲かるのは海外メーカーで、国内に落ちるお金は微々たるもの。
この状況を打破するために考えられたのが、SUPER GTオリジナルのマザーシャシーです。CFRP製モノコックや主要コンポーネントを共通品として安価で販売し、オリジナルマシンを製作する土台を提供。空力開発やシャシー開発の機会を与えています。レーシングファクトリーは、開発の進捗と共に収入が得られる、という訳です。
ただ、GT3は急速に開発が進行しており、速いうえに壊れない。しかも、同じマシンでアジアのGTシリーズや、ニュルブルクリンク24Hまで遠征可能とあって、GT3はGT300を席巻しつつあります。