7代目となる新型レガシィが、シカゴで遂にデビュー。 [2019年02月10日更新]
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2019年2月8日。7代目レガシィが、遂にワールドプレミア。
2019年2月8日。米国で開催されるシカゴオートショーにて、7代目レガシィがデビューを飾りました。初代誕生から、ちょうど30年。そして、その主軸に据えられたのは、レガシィ伝統のターボモデル。新型レガシィは、スポーツセダンでの復権を目指すべく、その船出を迎えたのです。
今回デビューした新型レガシィは、クリアで伸びやかな印象のオーソドックスなセダンのみ。フォードがセダン市場から全面撤退するなど、セダン好きには肩身の狭い今日此の頃、果たして新型レガシィは成功を収められるのでしょうか。
まずは、レガシィの歴史を簡単に振り返っていきましょう。
深刻な経営危機の中、有ろう事か世界ラリー選手権に挑んだ初代レガシィ。
1989年に誕生した、スバルの旗艦モデル「レガシィ」。当時のスバルは最悪の逆境の最中にありました。主力のレオーネは「へバル・ボローネ」と揶揄され、店頭では閑古鳥が鳴き、企業の存続さえ危ぶまれる始末。初代レガシィは霧に煙る曇天の下、荒ぶる海に漕ぎ出していくことになります。
初代レガシィは伝統的なセダンに加えて、新ジャンルとなるツーリングワゴンの2種。これに、高出力ターボ+四輪駆動という画期的なドライブトレインを組み合わせてのデビュー。知的で軽快なデザインを備えた初代レガシィは、徐々に成功を収めていきます。しかし、確実な成果を得るには「技術的信頼」が不可欠でした。
そこで、初代レガシィは自らのパッケージングの優秀性を顕示すべく、ミドルクラスのセダンながら、なんとWRCへ参戦。狭いラリーロードにボディを擦り付け、巨体はみるみるボロボロに。それでも諦めず、一心に激走を続けるレガシィは、次第にファンの心を捉えていくのでした。その活躍を背景に、ターボモデルはファンの垂涎の1台へと成長していきます。
2代目レガシィの後期型が、国内上限の280psに到達。爆発的なヒット。
レガシィが絶頂にあったのが、2代目の後期型。インプレッサWRX STi譲りの280psの強心臓を持ちつつ、誰にも劣らない実用性と居住性。レガシィは、一気に大ヒットモデルへと成長。次々と現れる強力なライバル達を、返す刀でバッサバッサと打ち破っていきます。
絶好調だったレガシィですが、その転換点となったのは4代目レガシィ。国内で熱烈なファンを獲得したのに対し、北米ではサッパリ。しかも、原価率が高く、売れても売れても儲けはサッパリ。外から見れば成功作に見える4代目レガシィでしたが、内部ではスッカリ失敗作の烙印を押されてしまったのです。
一方、北米市場では、高性能で信頼性の高い4WDパッケージを持つスバルへの期待感は、ドンドン高まっていました。ただ、大柄な彼の地の人々にとって、4代目レガシィのボディは余りに「コンパクト」。とても、車格に見合うサイズではありませんでした。
殊更重要だったのは、土地柄でした。北米大陸には、峠道は数えるほど。そう、北米で求められるのは、クイックなハンドリングではなく、余裕のあるクルージング性能だったのです。
余裕あるボディに、滑らかなクルージング性能を持つセダン。この要求性能を見る限り、それは既にレガシィではない、はずでした。
ツーリングワゴンもない、ターボもない。ラグジュアリーなソフト路線。此れの何処がレガシィ?
北米での躍進に望みを託したスバル。遂に、5代目レガシィでの一大路線転換を決断します。ボディ幅を一気に拡大し、ラグジュアリー路線へと転向。この選択は、ビジネス的には大成功を収めます。特に、第3のレガシィであるアウトバックが、クロスオーバーという新ジャンルを確立し、大ヒット。ドンドンと販売を増やしていったのです。
このスマッシュヒットにより、レガシィでは驚きの主役交代劇。勇躍センターへ躍り出たのは、末っ子のアウトバック。以後、レガシィはアウトバックを前提としてボディ設計が行われるようになります。
高付加価値モデルが販売を牽引する当時のスバルの好調さは、他メーカー垂涎の的。ポルシェにさえ匹敵する高収益体質へと、見事に変身を遂げたのです。
そこで、6代目レガシィでは更なる決断が下されます。ツーリングワゴンをレヴォーグという独立モデルに移行させ、自らのラインナップをセダンとアウトバックの2種に絞ったのです。変革はそれだけに留まりませんでした。なんと、伝統のターボモデルを廃止。強心臓ターボのツーリングワゴンという、レガシィのイメージリーダーがラインナップから消え去ってしまったのです。
「こんなの、レガシィじゃない!」一体幾人の熱いレガシィフリークが、拳を向ける先も分からず悲嘆に暮れたでしょうか。6代目レガシィB4は、スッカリフツーのセダンになっていたのでした。
ターボモデル復活。7代目レガシィは伝統に根ざし、更なる進化を目指す。
ボディサイズ<全長×全幅×全高> | 4840×1840×1500mm(190.6×72.4×59.1in.) | |
ホイールベース | 2750mm(108.3in.) | |
最低地上高 | 150mm(5.9in.) | |
エンジン | FA24型2.4L水平対向4気筒DOHC直噴ターボ | FB25型2.5L水平対向4気筒DOHC直噴 |
排気量 | 2387cc | 2498cc |
ボア・ストローク | 94×86mm | 94×90mm |
出力 | 260hp/5600rpm (263.6ps) | 182hp/5800rpm (184.5ps) |
トルク | 277lb-ft/2000-4800rpm (375.6N-m) | 176lb-ft/4400rpm (238.6N-m) |
燃料タンク容量 | 70L(18.5gal) | |
燃料種類 | 87AKI | |
トランスミッション | リニアトロニック | |
駆動方式 | シンメトリカルAWD | |
タイヤサイズ | 225/55R17、225/50R18 | |
乗車定員 | 5名 | |
そして、今回デビューを飾ったのが、7代目レガシィ。まずは、先行してセダンのみがワールドプレミアされました。2019年は、レガシィ誕生から30年の節目。スポーツセダンのパイオニアとしての復権はなるのでしょうか。
注目は何と言っても、トップエンドのターボモデル。アセント譲りの2.4L直噴ターボは、もちろん伝統の水平対向4気筒。スペックでは、S4/レヴォーグに搭載される2.0L直噴ターボに劣るものの、低回転域からフラットかつ分厚いトルクを提供します。この新エンジンは、北米のみ設定されていた、3.6L6気筒モデルの後継エンジンとしてラインナップされます。
スタンダードは、新型フォレスターに先行搭載されている2.5L直噴NA。今回新たに直噴化されたことで、スペック上でも性能向上を果たした他、より高いレスポンスを実現し、ストレスフリーの走りを提供します。
これらに組み合わせるトランスミッションは、レシオカバレッジが拡大された新リニアトロニック。ピッチの小さなチェーンに置き換えることで、ドリブン側のプーリを小径化。これによって、より高い変速比を実現しています。この効果は絶大で、特に高速域でのエンジン回転を低下させて、燃費改善を図ります。
そして、もちろん全モデル・全グレードAWD。低重心で極めてバランスの取れた、機敏かつしっとりとしたスバルならではの走りを実現します。
徹底的に剛性向上を図った新プラットフォームの採用により、ハンドリングは劇的に改善。
シャシーは、2016年デビューのインプレッサで初採用された、スバル渾身の新プラットフォーム「SUBARU GLOBAL PLATFORM(SGP)」を採用。縦方向に走る7本ものフレームによって、フロア剛性を徹底強化。これによって、静粛性を阻害するフロア振動を徹底的に排除。加えて、シャシー剛性と衝突安全性を劇的に改善しています。
このSGPは、ランクルに匹敵するボディサイズを有する3列シートSUVのアセントを前提に設計されており、1.5t級のレガシィクラスでは相当に余裕のあるシャシーとなっています。
ただ、今回の進化はこれだけに留まりません。新たにフルインナーフレーム構造をスバル車として初採用。より剛性を高めつつ、軽量化をも両立させています。
従来工程では、アッパーボディとアンダーボディを各々アッセンブリーした上で、これを接合していました。これに対し、フルインナーフレーム構造ではボディ構造を骨格と外板に分け、骨格となるフレームを先行して組み上げていくことで、各部材をより高強度で接合。ここに外板を組み付けていきます。その結果、生産性が向上する他、剛性向上、軽量化、部品点数の削減が可能になります。
スバルは、なぜシャシー剛性にこだわるのか。それは、スバルらしい走りのための進化。
シャシーは、クルマという動体のすべての土台です。これが強靭でなければ、他の部位の剛性をいたずらに高くしても、まったく意味がありません。
例えば、貧弱なシャシーに硬いサスペンションを組み合わせても、歪むのはシャシーばかり。ボディは軋み、タイヤの接地は常に不正確。これでは、優れたハンドリングなど実現のしようもありません。ツーリングカーやラリーカーが、ボディにロールゲージを張り巡らせるのは、それ故のこと。
スバルがSGPの設計に際して、徹底的に剛性向上を図ったのは、それがためのこと。SGPではシャシー性能が向上した分、さらにサスペンション剛性をも徹底的に強化。タイヤが常に正確に地面を捉えられるように、改善を図っています。
今回、新型レガシィではフロントサスペンションに、軽量高剛性のアルミ製ロアアームを採用。新設計のダンパーによって、動的質感の向上を図っています。