スバル初のBEV、注目のソルテラ試乗記。 [2022年05月20日更新]
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スバルの近未来を予告する、新世代BEV。それが、ソルテラ。
2022年は、スバルは新たな歴史を刻み初めます。伝統のWRX STIに別れを告げ、革新のソルテラを新たにラインナップに加えるのです。ここから2030年代へ向け、スバルは大きく姿を変えていくことでしょう。
今、時代は激動の最中にあります。COVID-19のパンデミックには少し光が挿しつつあるものの、半導体の全世界的な不足は慢性化しつつあり、某OEMでは納期1年が珍しくないという異常事態。そこに加えて、ロシアがウクライナに侵攻。欧州は積極的な軍事支援を開始し、長期戦の気配が濃厚。世界は大戦と核戦争の瀬戸際で、不穏な状況に飲み込まれつつあります。その影響か、円安が急激に進行し、原油価格は高騰。日本のガソリン・軽油価格は、政府の財政投入なくして維持困難な状況に陥っています。
そんな最中、名古屋スバル本社にて、ソルテラの関係者向け試乗会が開催されました。COVID-19の影響を鑑みた結果、市街地での試乗となったことは残念ですが、困難な状況下で無事開催いただいた事、まずは心より感謝申し上げたいと思います。試乗は、本社周辺を走る1周2〜3kmのコース。国道21号線を一部走行するものの、その殆どは市街路。速度域が低いため、クルコンの試用やハンドリングのテストは叶わず。ただ、実際の走行環境に近い走行条件であるとも言えます。
10年・18万キロ。トヨタが考える、真に持続性のあるBEV。
トヨタ・スバルの特別チームは次世代BEV開発に際して、便利さや派手さよりも、10年後にもちゃんと使えるエコカーであることを何よりも優先しました。ソルテラでは、家庭用充電器による「ゆっくり充電」を推奨しています。急速充電は、冬季のバッテリ予熱、夏季のバッテリ冷却が必要なばかりか、バッテリ寿命を著しく縮めるからです。同様に、急速放電によってバッテリを痛めるため、高加速モードも用意されていません。高性能はエコカーには本来不要なのです。
それは、10年・18万キロという耐久性目標を達するために、何よりも必要な決断でした。本来、BEVは環境負荷を低減するための人類共通の決断であるはずです。自らの欲求を自制し、地球環境の持続性を優先する。そのためのBEVであったはず。トヨタ・スバルは、BEVの基本を首尾一貫徹底しただけなのです。
そもそも、「速い・高い・凄い」という価値観自体、50年も前のもの。それらは、Z世代にとっては何の意味も成さないのでしょうから、21世紀中盤に於ける自動車の絶対的価値について、改めて考える必要があるのは間違いないでしょう。
現状、人類は効率的にリチウムイオンバッテリーをリサイクル・廃棄する術を確立できていません。BEVは数百kgに及ぶ巨大なバッテリパックを搭載しており、これを廃棄するのは、乾電池やスマホを廃棄するのとは訳が違います。多くのOEMはリユースでごまかしていますが、これはリサイクル・廃棄を先延ばしにするその場凌ぎに過ぎません。当然、リユース使用が完了した暁には、リサイクル・廃棄が必須となるのですから。
トヨタ・スバルは、真に人類に貢献するBEVを目指してきたのです。それは、800V急速充電や500kW級のパワーなど、本来BEVの意義に真っ向から反する「ギミック」に夢中になる他OEMに対して、強烈なアンチテーゼとなるでしょう。
スバル感の薄いインテリアは、次世代車両の香り。
ソルテラの第一印象は、想定外のボリューム。ハリアーもかくや、というサイズ感。少し縮尺感がおかしくなるような、そんな大きさです。それもそのはず、全長は4,690mmに達し、全幅は1,860mm。結構なボリュームです。
グレードは、ET-HS。ボディカラーはXVのクールグレーカーキに近い印象の、ハーバーミストグレーパール。ルーフにはメーカーオプションのソーラーパネルを搭載しており、一見してハイエンドグレードであることが分かります。ホイールサイズは、スバル史上初の20インチ。ブレーキ周りは、回生ブレーキを常用するためコンパクトな印象です。
いざ、乗り込んでみると、お馴染みのスバル感は希薄。それでも、完成度の高さを感じます。落ち着いたドアの開閉音、ドアを閉めた際の静寂感。明るくクリーンな印象のインテリアと、上質感に溢れたタンカラーのレザーシート。シンプルなインフォメーション系のデザイン。良い意味でスバル感が薄いため、次世代車両であることがひしひしと感じられます。
ステアリングは、面白いほどにコンパクト。その横に、横長のディスプレイが鎮座します。センターコンソールは、全体に平たく広いデッキ感覚。各種ボタンが縦ではなく、横に並ぶのは、スバルでは余り見ない光景です。デッキになったコンソールの下は、トレーになっており、スマホやその充電器など様々なモノを置くのに重宝します。シートは、体全体に馴染んで包み込んでくれるスバル感はなく、何となく突っ張った感じがします。
驚いたのは、グローブボックスが無いこと。車検証入れは何処?と聞けば、センターコンソールが二重底になっていて、その下に収めるというレクサス方式。この辺りにも、トヨタの香りを感じることができます。
重さは一切感じない。電動車らしい溢れるトルク感。
スタートボタンを押し、ソルテラを起動させます。エンジンが目を覚ますとか、心地よいサウンドが響くとか、タコメータの針が踊るとか、そういう儀式が皆無なため、何処か拍子抜けな印象が残ります。メータパネルが鮮やかに立ち上がり、起動プロセスが完了したことを教えてくれます。
セレクトノブを押し込みながら、右に回すと「D」レンジ。電動パーキングをリリースし、ブレーキペダルを離せば、スルスルと走り出します。トルコンもクラッチもなく、直に同期電動機が駆動するため、ダイレクト感は素晴らしいものがあります。空走感やギクシャク感は全くなく、右足の動きに極めて精密に追従します。
500kgものバッテリを搭載するため、総重量2.3tという超重量級。ただ、同期電動機は低回転域から高トルクを発揮するため、重さは一切感じません。望むトルクは、望んだだけ得ることができます。ただ、ディーゼルと違って、吹け切った感もないため、持続的に加速を維持することができます。
一般道に出ると、床板の厚みを感じます。一段高い場所から運転している感覚で、プラドやデリカに通じるものです。それ故か、接地感は少し希薄で、空飛ぶ絨毯感があります。車体の慣性が大きいためサスペンションの動きが良く、重心高が低いため揺すられるような動きは少なく感じます。NVHはおしなべて良好ですが、路面のキツいギャップではタイヤから突き上げを感じます。これは、BEV特有というより、20インチという巨大なタイヤのネガでしょう。
国道に出たので、右足を少し踏み込み、流れに乗ってみます。すると、間髪入れずに速度がスッーと上がっていきます。もっと踏み込めば、モータらしい力強いトルクを感じることができます。軽快とは言えないまでも、重さを感じることはありません。トランスミッションが無い故のダイレクト感は、BEVならではでしょう。望みのトルクを望んだだけ得られる。これも、BEVならではのメリットです。
BEVの駆動制御の可能性は無限大。ワンペダルも好印象
BEVの同期電動機では可変電圧可変周波数(VVVF)制御が用いられており、電圧で出力を、周波数で回転数、位相差でトルクを直接的に制御しています。内燃機関のような間接的制御でありません。そのため、ドライブフィールは自在に演出可能。VSCやTCSは当然ながら、4輪駆動の前後軸強調制御でさえも、端から制御に入れ込むことが可能です。BEVに於ける、制御の自由度の高さは無限大と言えます。
ただ、トルクが回転数に反比例するという特性が人間の感覚と真逆のため、これを緩和するための工夫が必要です。特に、ジャークと呼ばれる「しゃくる」ような加速度の時間変化は、しばしば問題となります。急激なトルク変化は、低μ路ではスリップに繋がりますし、乗員には内蔵を揺すられるような不快な感覚を与えます。
試乗中、右足を意地悪にギュッと踏み込むと、若干のジャークを感じました。トルコンを挟まないが故に、モータのトルク変動がそのまま加速度を変化させてしまうのです。これを抑制するためにも、もう少しアクセルペダルを重くしても良いのかも知れません。
スバルが「S Pedal」と呼ぶ、ワンペダルはセンターコンソールのスイッチで作動可能です。同期電動機は、回転磁界と回転子の「位相差」をプラス値とすれば加速、マイナス値とすれば回生ブレーキとなります。S Pedal作動時は、アクセル全閉時に位相差がマイナスとなって回生ブレーキが作動します。なお、S Pedalで回生ブレーキ作動した場合に、キチンとブレーキランプが点灯するは嬉しいポイントです。
スーッとスムーズに走る。それが、ソルテラの持ち味。
全体的な感覚で言えば、胸のすくような加速感とか、鮮やかなな敏捷性とか、グイグイ追い込んでいく感じとか、そんな「もっと走りたくなる」感覚はありません。バッテリ残量を意識しつつ、穏やかにミニマムで走る。そういう感覚が、ソルテラにはしっくりくるように感じます。だからなのか、「よーし、試してやろう!」と、コーナーに突っ込んでいく興味は一切湧いてきませんでした。そういう意味では、開発のコンセプトは車両全体によく反映できていると感じますし、その一貫性には目を見張るものがあります。
試乗が終了し、最後は車庫入れ。残念ながら、アドバンスドパークを試す機会はありませんでした。ただ、新たにパノラミックビューモニターが搭載されたため、車庫入れでもボディサイズを感じずに済んだのは印象的でした。
この後、助手席・後席で試乗する機会がありました。感嘆したのは、寧ろこちらの方。トランスミッションに起因するショック・衝動はなく、減速も常にスムーズ。前述のギャップでの突き上げ感はありますが、重心の低さ故の安定感には素晴らしいものがあります。BEVならではの振動・音のない快適性は、パッセンジャーこそより良く感じられるものと痛感させられます。
ソルテラは、おしなべて快適です。これ見よがしのギミックが無い所も、SDGsに真に即しているという意味で、小生には好意的に感じられます。走りは実にスムーズですし、乗り心地も十二分に快適です。勿論、人間味は薄れていますが、それはBEVという機構上、これは致し方ないところでしょう。ソルテラはbZ4Xと共に、真に良心的なBEVとして、良いスタートを切ることになるはずです。
BEV1台所有よりも、内燃機関との両刀使いがベスト。
ただ、500km弱という航続距離には、一抹の不安は隠せません。A/C使用時には100kmほど減じるので、実質400km弱。突然の急用で遠出、、、しかし、残りバッテリ残量は40%以下!。。。という事態が想像されます。勿論、急速充電のスポットは増えていますし、そのナビゲーションも十分です。しかし、ソルテラ、bZ4X、日産のアリア、軽BEVなど、今年は矢継ぎ早に国産BEVが登場します。そうなれば、充電スポットは足りなくなるのは必然。加えて、充電スポットでは、充電完了したのに場所を占拠し続けることがあり、状況を更に悪化させていると聞きます。。。課題は、依然山積しています。
もしも、爆発的にBEVが増えたら・・・、災害時に数週間電力供給が途絶えたら・・・。やはり、BEVは中継ぎに過ぎない、と小生には思えるのです。容易に運搬可能で、注げば満タン。という液体燃料のメリットは計り知れません。人類にとって、内燃機関は不可欠の存在です。BEV一辺倒にならずとも、内燃機関とBEVの両刀使いであっても良いと思うのです。
家族2台持ちならば、1台は長距離移動を考慮してHVを、もう1台は短距離移動用にBEV。災害時は、燃料供給が途絶えればBEVを、電力供給が途絶えればHVを。そんな組み合わせこそ、最適・・・。小生にはそう思えるのですが、皆さんは如何お考えでしょうか。