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遂に、6代目。インプレッサが新たな1ページを刻む。
2023年3月2日、GC型、GD型、GH型、GP型、GT型と連綿と続いてきた歴史に、新たな1ページGU型が加わります。レオーネ→レガシィへの進化に際し、ラインナップに空いた隙間を埋めるべく登場したインプレッサ。その歴史も、遂に6ページ目となります。
今回のGU型進化に際して、最大の話題はセダンの廃止でしょう。セダンモデルはG4と銘打たれ、GC型以来の長い歴史を受け継いできました。しかし、今回無念のカタログ落ち。今後は、ハッチバックモデルのインプレッサと、クロスオーバーモデルのクロストレックが、インプレッサシリーズの歴史を紡いでいくことになります。
クラウンを筆頭にセダンは次々に廃止されており、近い将来にはプレミアムブランドでしか買えない特別な存在となるのでしょうが、これも時代の流れと言うものでしょう。
初代ゴルフを嚆矢とする、ハッチバックモデルは自動車の一つの理想形です。高い走行性能を実現するための、低重心パッケージングとコンパクトなボディ。そこに、4人乗車に最適な最大限の居住性と荷室を与えた、2ボックススタイル。ハッチバックは、一切無駄のない理想的なデザインと言えます。6代目インプレッサは、ハッチバックモデルのみに絞ることで収益性を高め、スバルの企業価値向上に貢献度の高いモデルとなることでしょう。
アグレッシブさを増したエクステリアデザイン。
GU型インプレッサは、旧型モデルの正常進化版。そのGT型インプレッサは、カー・オブ・ザ・イヤーを獲得する程、自他共に認める優秀なモデル。これをベースに更なる進化を果たしたとあれば、その出来栄えは大いに期待できるというもの。
最大の変化は、インテリア。一見して目を引くのが、センターに鎮座するインフォテイメントシステム。エアコンやシートヒータ、X-MODEなど、各種デバイスの操作はこちらから行います。基本的にはディスプレイオーディオで、スマホとの連携が基本。そのため、ナビゲーション機能はメーカーオプションです。他メーカ製のものと異なり、購入後のナビゲーション機能追加は不可能ですから、注意が必要です。もう1点ご注意頂きたいのは、アイサイトXが装備されないこと。GNSS衛星からの位置情報を元に、道路情報を得てハンズオフ機能を実現するアイサイトXは、各種ハードウェアの追加が必要になるため、非常に高価。そのため、アイサイトX搭載モデルは、レヴォーグ、WRX S4、アウトバックとハイエンドモデルのみに限られます。但し、アイサイトそのものは、これと同等のver.4が搭載されているため、最先端の先進安全技術を手にすることが可能です。
インテリアは、スバルらしくサッパリとした構成。すべてが機能本位の考え方でまとめられています。操作時にインパネを見て、ボタンを探していては、安全を損なう。航空機メーカーらしい発想に基づいてデザインされたものです。
エクステリアデザインは、GT型を基本にしつつも、よりアグレッシブさを増しています。フロントエンドに精悍なイメージを与える繋がり眉毛デザインは、昨年から登場したスバルの新たなデザイン要素。中央には伝統のヘキサゴングリルを配し、ここに鋭くアイラインが切れ込むように、薄く精悍なヘッドランプユニットを配置。ヘキサゴングリルへ向かって、四方からグッと押し出すような面とラインを強調することで、フロントエンドの薄さと力強さが巧みに演出されています。切れ長のヘッドランプは、レヴォーグの小さなお目々が苦手との意見を反映したものでしょうか。現時点での評判は上々です。
サイドも、負けずに進化。フロントフェンダー後方、サイドを深くソリッドに彫り込むことで、ボトムに厚みを持たせ、マッシブな骨格感とフェンダーの力感を演出。ブリスター状のリヤフェンダーは、リヤエンドに急激に落ち込ませることで、ハッチバックならではの軽快感を表現。腰高になりがちなリヤエンドは、やや大型なリフレクタを左右両端に配置することで、ワイド感を演出。インプレッサらしい、走りの良さが表現されています。
フルインナーフレーム構造を導入した、第2世代SGP。
GU型は、新たに第2世代SGPをベースにしています。これに先立つ第1世代SGPは、2016年登場のGT型インプレッサに初採用された、スバルの新世代プラットフォームでした。世界最高水準の衝突安全性能実現を目標に、従来にない頑強な強度設計を採用。これに伴って、剛性は劇的に改善。ボディ単体のねじり剛性・曲げ剛性のみならず、サスペンションの取り付け剛性も大幅に向上。これにより、タイヤの位置決め剛性の引き上げが可能になり、タイヤの接地精度改善に伴う、ハンドリングの正確性・質感が大幅に向上しました。また、剛性の改善により、固有振動数の大幅引き上げを実現。ドタバタ音やフロア共振、気柱振動が劇的に改善。静粛性が大幅に高まった他、スバルが希求する動的質感の改善に大きく寄与しました。
第2世代SGPは、SGPの設計をそのまま引き継ぎつつ、フルインナーフレーム構造を採用したSGPのマイナーチェンジ版です。フルインナーフレーム構造は、ホワイトボディの組立工程を変更し、先行して構造用部材を組み上げた後に外板を接合する方式。従来の側構体を先行組み立てする従来方式に比して、構造用部材間の接合を念入りに行うことが可能なため、ホワイトボディ単体での強度・剛性の向上が実現します。さらに、第2世代SGPでは構造用接着剤を積極導入。スポット溶接は接合面積が少なく、結合強度が弱いのが難点。そこで、これを構造用接着剤で補うことで、構造重量を維持しつつ、強度・剛性の改善を実現。さらに、パネル間に構造用接着剤を挟むことで、ボディ全体に振動減衰性を持たせています。これにより、第1世代より遥かに高い剛性・強度を実現しつつ、振動に対して高い減衰特性を持つ、靭やかかつ強靭なボディに進化させています。
本稿執筆時点では、クロストレックの一般試乗は未解禁。だからと言って、その実力は「推して知るべし」では、拙文意味を果たさず。そこで、インナーフレームの効果を、BRZに見てみましょう。現行BRZは、旧型のプラットフォームをそのまま流用しつつ、インナーフレーム構造と構造用接着剤を導入。その結果、劇的な剛性向上と動的質感の改善を実現しています。これを以て鑑みるに、新型インプレッサの実力も、劇的な改善を果たしていることは想像に難くありません。既に、非常に高い次元にあるGT型から、一層の改善を図るのですから、その実力は大いに期待できるでしょう。
マイルドハイブリッド、e-BOXERにFF仕様が登場。
プラットフォームがマイナーチェンジであることから分かる通り、基本的なパッケージングはGT型からのキャリーオーバー。ボディサイズの変更は、主にデザイン上の都合。基本的なディメンションが引き継がれただけでなく、カップルディスタンスもそのまま。つまり、パッケージングはGT型そのまま。当然、パワートレインもキャリーオーバーとなります。
と言っても、何から何まで同じではありません。主力パワートレインとなるe-BOXERには、新たにFF仕様が追加されています。インプレッサにFF?と訝しがる方も多いかも知れません。しかし、AWDのイメージは、WRXから来るもの。そもそも、GC型やGD型で再量販グレードだったのは、実はFFのスポーツワゴン。ステラより安い!と言われたのは、営業現場の懐かしい伝説。意欲的な価格設定もあって、結構売れたのです。
その伝統を受け継いだのか、時の流れなのかは、定かではありませんが、スバルは新型クロストレックでもFFモデルを積極的にプッシュしています。まぁ、口酸っぱくAWDの優秀性を叩き込まれてきたスバルのセールスマンには口幅ったいことでしょうが、致し方ありません。FFも結構イイですよ!
縦置きのスバルのパワートレインでは、駆動方式の変更は難しいことではありません。実のところ、FFもFRもAWDも自由自在なのです。e-BOXERでも、それは同様。センターデフを介さず、そのままフロントデフに繋ぐことで、新たにFF用マイルドハイブリッドを実現しています。
e-BOXERの良さは、自然なこと。確かに、燃費上は大した効果はなく、重量も嵩みます。でも、そのドライバビリティは秀逸。不自然さは一切なく、スムーズにトルクが繋がっていきます。モータ出力が限られるため、蹴り出しはそれなりですが、だからこそジャークが少なく、フィーリングが自然。右足が望んだ通りにトルクがデリバリーされるのは、和製ハイブリッドでは貴重です。
(小生は、右足で加速のリズムを作れないTHSのトルクフィーリングが、どうにも納得いかないのです。モリゾー氏が大鉈振るって改善してくれると思いきや、早くも退任報道。。。アクセルはトルク制御であって、スピード制御じゃないのに!)
新型インプレッサを待ち受ける時代とは。
さて、新型インプレッサはどのような生涯を送るのでしょうか。2023年発売となれば、次世代モデルの登場は2029年。激変の時代、自動車はすっかりその姿を変えているのでしょうか?
2029年ともなれば、国内OEMもラインナップの約半数はBEV化されているはず。その動向のカギを握るのが、軽BEV。スズキが直近の登場を予告した軽BEVは、トヨタ主導でスズキ・ダイハツと共同開発中のもの。つまり、日本の軽自動車の約6割が、このパワートレインをベースとすることが可能になる、期待のBEVプラットフォームが間もなく登場するのです。
3t級BEVを造ってエコと主張する欧州プレミアムブランドは論外として、BEVの最適解は航続距離が最低限で済むコンパクトモデル。セカンドカーであれば、使うのは買い物や通勤。日に精々数十キロで、走行も市内のみ。この程度ならば、バッテリ重量もPHEV程度で済むはずです。バッテリ搭載量=BEV価格ですから、航続距離を抑えれば、価格も抑えることができます。スズキは軽バン仕様で200万円以下を公約していますから、大いに「大衆化」が期待できるでしょう。その後、多くの主力モデルにも波及することが、既に予告されています。もし、軽BEVが成功したとなれば、日本市場は一気に激変します。短距離需要は一気にBEV化が進行。一躍、軽BEVは時代の寵児となって、市場を席巻するはずです。唯一の課題が電力需給ですが、バッテリ容量が小さい上に、毎日の充電が不要とあれば、それ程大きな問題にならない可能性もあります。
でも、BEV化は脱炭素の手段の一つ。つまり、OEM側の理屈に過ぎません。今求められているのは、そんな枝葉末節の話ではなく、自動車の価値そのものの変革です。前代未聞の激変期、地図のない大航海時代、CASEだの、MaaSだのと言われつつ、もう10年。未だに、誰一人として21世紀の自動車の最適解を見いだせないまま、いたずらに時間だけが過ぎています。なぜでしょう?
それは、自動車産業の誰しもが、現在の延長線上に最適解を見出そうとしているからです。黒電話の延長線上を幾ら手繰り寄せても、スマホには絶対に辿り着きません。なぜなら、スマホは単なる電話ではなく、PCであり、手帳であり、テレビであり、日記であり、カメラであるだけでなく、今やパートナーであり、お医者さんであり、世界と繋がるコミュニケーションツールだからです。自動車だけを見つめていても、自動車の未来は見えてこないのです。
21世紀の自動車は、単なる移動手段ではなく、個人空間であり、パートナーであり、自己表現手段であるだけでなく、自己実現をアシストしてくれる、オーナー自信の可能性を無限に引き出す人生に密接な存在であるべきです。そのような自動車が市場に現れた時、ハッキリとそこに歴史の境界線が描かれるでしょう。皆さんは、自動車にどんな未来を描きますか?