新型レヴォーグと共に登場、EyeSight ver.4の実力徹底検証。 [2019年10月27日更新]
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高精度マップとロケーターが、高速道路の道路形状を把握。高精度での車予測制御を実現する。
・高精度マップ&ロケーター(新開発)
GPSと準天頂衛星「みちびき」を介してロケーターが自車位置を正確に特定し、高精度マップで高速道路形状をクルマが把握することで、カーブ前減速や渋滞時のハンズオフ走行支援を実現しました。
カーブ手前での自動減速は、スバルが1998年の「ADA」で実現していた機能です。当時の技術とは、当然比較になりませんが、22年の歳月を経て再び機能が復活することになります。
地図データ及びロケータにより導き出されたカーブ通過可能速度と現在速度と照査し、必要ならば減速を行い、スムーズなカーブ進入を実現します。これまで作動を停止していたような半径の小さなカーブでも、減速・ステア・再加速により、レーンキープアシストが可能となり、作動範囲が大幅に拡充されます。
一方、渋滞時のハンズオフを実装するには、国の認可が必須です。ver.4ではその認可を受けることで、一定速度以下(渋滞時)のハンズオフ(手放しの時間制限の撤廃)を実現します。現在のツーリングアシストには、先行車追従時に不意の動きに釣られてしまう欠点があります。これでは、とても認可は得られませんから、ロケータと高精度マップによって「正規の進路」を常に把握し、進路を維持する機能を追加するものと思われます。
スバルは、敢えて作動速度域を「渋滞時」に限定することで、レーダ4個のみの追加で、この機能を実現することができたのでしょう。
ここで問題となるのは、高速道路形状を認識するために実装される高精度マップです。高速道路形状は、道路開通や工事等によって、刻々とその形状を変えていきます。もし、実際の道路形状と異なっていれば、重大な制御ミスを誘発することになります。
これを抑止するには、車両とデータサーバを自動接続して行う、高精度マップの自動更新が必須となります。当然ながら、これを実現するには、データ通信料・地図データ更新料が発生します。自動車がその機能を維持するために、固定費が必要になる時代がやってくるのです。これは、ユーザには煩わしいことに違いありません。
コネクティッドサービスは、本当に浸透・発展するのか?保険会社と重複する技術領域、交通整理は誰がする?
・コネクティッドサービス(SUBARU国内初採用)
“つながる安全”として、万が一の衝突事故時にクルマから自動で緊急通報を発信。オペレーターにより消防や警察に救援を要請するとともに協力病院とも連携することで、迅速な救命活動につなげる先進の救急自動通報システムを採用。また、ドライバーが体調不良に陥るなどの緊急時には、ボタンひとつでオペレーターにつながるSOSコール機能も搭載しました。
エマージェンシーコールは、高精度地図のリアルタイム更新と共に、コネクティッド技術の中心に据えられるサービスの一つです。自車が異常を感知した際に、緊急通報を自動的に発報。これにより、事故に対する早期対処を実現します。
コネクティッドはCASEの一つに数えられる、次代を担う重要技術です。これを実現するには、ネットワークセキュリティの確保や通信サービスの提供・管理、24時間オペレータサービスに際しての人員確保など、ネットワーク構築に付随して多種多用な設備・体制を用意せねばなりません。そこには、かなりの投資が必要となります。
ver.4は、スバル単独の技術で開発されています。となれば、コネクティッドに関する技術も、すべて自前で用意しているはずなのです。この段階で、スバルが単独でコネクティッドを導入したのであれば、大いなる冒険と言えるでしょう。
一方で、エマージェンシーコール等のサービスは、既に保険会社も取り組みを開始しています。指定のドラレコを取り付けることで緊急時を判断し、緊急通報と事故報告を自動で行うサービスです。このドラレコは、運転マナーも同時に採点していて、スコアによって割引が付帯するという特約が付きます。同種のサービスが重複する必要は全くありませんから、この辺りの交通整理は自動車業界全体で実施していく必要があるように思われます。
ユーザとして案じるのは、通信費の月額負担です。毎月のお小遣いに悩む世間のお父さんにとっては、本当に頭の痛い問題です。特に、通勤にはクルマを使わない方にとっては、無意味な出費とも思えるかも知れません。
先行するトヨタのG-BOOKでは、数年間の無料期間を設けています。しかし、有料期間になると契約解除するユーザが多いようです。月額は数千円でも年間では数万円の出費です。ユーザが求める機能が余程実装されない限り、サービスの継続・発展は難しいように思われます。
この点を考慮すれば、データ通信はスマホアプリを介して行い、データ提供サービスは点検パック等にまとめた先払い形式とするのが現実的でしょう。
スバルが独自開発する最後のアイサイト?ver.4の登場は、2020年後半。
スバルが独自開発するアイサイトは、恐らくver.4が最後になるものと思われます。1980年代末に始まった、その試みの全てが、ここに結実することになります。ver.4のデビューは、スバルにとって重要な一里塚となります。次のver.5は2025年頃の登場が見込まれますが、この時点ではトヨタを筆頭にオールジャパン体制で作り上げた、レベル4相当のシステムが登場し、スバルもこれを採用することになるでしょう。
ただ、スバルのアイサイトは世界に誇るべき技術です。世界でも珍しい個性派メーカーが、独自に積み上げた技術と知見によって、世界を驚かす先進的システムを一早く実用化したことは、長く自動車史に刻まれる偉業に違いありません。
惜しむらくは、技術進展の歩みが早すぎたことです。開発領域は加速度的に拡大し、最早スバル単独では手に余るほどに発展してしまいました。
今後は、複数のメーカ・サプライヤが共同で専門会社を設立し、ここで集中して開発を行うようになるでしょう。また、道路・信号等のインフラ整備が必要となれば、IT系企業やゼネコン等、様々な企業の協力・出資が必要になるでしょう。こうして、さらに技術領域は拡大していきます。いつしか、プラットフォームの共通性と汎用性が課題となり、一強多弱の時代を経て、何れかのメーカに集約されていくでしょう。
これは、PC用OSや携帯電話の歩んできた道と同じです。
自動車事故ゼロへ、死亡者ゼロの時代へ向けて、技術の歩みは進んでいきます。AIや5Gなど、技術の可能性は止め処なく拡大していきます。その中で大切なことは、何か。それは、一人ひとりのエンジニアが持つべき倫理、それが問われる時代が来ることでしょう。