家にいよう。特別企画 クラブ・スバリズム歴史発掘!技術的偉業10選 第4弾「デ・ハビランド コメット」 [2020年04月23日更新]
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設計値のたった6%で発生した疲労破壊。
たった1830回目の加圧で、客室窓隅に疲労亀裂が生じたのです。亀裂は前後方向に急速に進展し、構造部材に達すると機体を輪切りする方向に向きを変えて進んでいったのです。この機体は従前に1230回飛行していましたから、計3060回の飛行で機体が空中分解することを実験結果は示していました。大方の予想に反して、疲労寿命は設計値のたった6%に過ぎなかったのです。
サルベージされた残骸には、実際に機体天井部のアンテナ取付部の隅に疲労亀裂が発生した痕跡が残されており、実験の正しさを証明していました。
この試験により、以下の2点が判明します。第一は、開発段階に於ける疲労試験の前段階に於いて、この機体に2倍の安全率を確認するための予圧試験を実施していたため、応力集中部が塑性変形して疲労強度を高めていたこと。第二は、高高度飛行に備える予圧構造に対する知見が不足していたため、金属疲労が及ぼす影響が充分解明されていなかったこと。この2点に結論付けられることになります。
コメットが人類に遺した偉大な知見とは。
現在の航空機開発では、静強度及び疲労強度の2つの試験で設計の正しさを実証しない限り、耐空証明を得られません。各々別の地上試験機を用意することを義務付けているのです。1機は静強度試験用で、機体の強度設計を実証する試験に供されます。もう1機は疲労試験用で、地上滑走・離陸・巡航・着陸を模した負荷と予圧・減圧を繰り返すことで、疲労設計を実証します。この制度の採用以後、航空の安全性は飛躍的に高まりました。
コメット連続墜落事故は、航空機開発に全く新たな知見をもたらしました。機体の一部に損傷があっても、安全上最低限の機体強度を維持するというフェールセーフ設計も、その一つです。今、私たちが安全に空の旅を楽しめるのは、間違いなくコメットのもたらした知見のお陰です。
その恩恵は航空技術に留まらず、工学的分野全体に飛躍的な発展を促しました。特に、技術的発展期にあった自動車に於いてその影響は大きく、現在の自動車分野に於ける疲労耐久性評価は、航空技術に端を発するものです。