新型レヴォーグ[VN型]特集:その3 シャシー・サスペンション系ドライビングインプレッション [2020年12月17日更新]

レヴォーグ
 

ニュース ピックアップ [  レヴォーグ  ]

次のページ>>1 2 3

 

文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

高度なスタビリティとしなやかな乗り心地を両立させる、可変減衰力電子制御ダンパー。

568 532
 
600
600

ダンパーとは、ストローク時に筒内のフルードを狭い流路を通すことで、流動抵抗を生じさせ、減衰特性を得るものです。この減衰力は、単位時間あたりの孔を通過するフルード量に比例するため、減衰特性はストローク速度に依存します。速いストロークでは減衰力は大きく、ゆっくりとしたストロークでは減衰力は小さくなります。ただ、これでは路面入力には硬く、姿勢変化に対してはコシのないサスペンションになってしまいます。そこで、ストロークと比例して荷重が増加するスプリングを組み合わせることで、スタビリティと乗り心地を上手く両立させたサスペンションを成立させているのです。しかし、姿勢変化を抑制すれば乗り心地は悪化し、乗り心地を良くすれば姿勢変化は大きくなってしまいます。

そこで、新型レヴォーグが採用した電子制御サスペンションでは、ダンパーの減衰特性をリアルタイム制御することで、乗り心地を確保しつつ、姿勢変化を最小限に抑制することを可能にします。制御に際して参照するのは、加速度計のデータ。加速度計は、フロントでは左右ダンパー下部に各1個、リヤでは車体中央部フロアに設置される制御ECUに内蔵。これら加速度データに加え、車体のジャイロセンサー及びエンジン、ブレーキ等のビークルダイナミクスコントロールから情報を元に、電子制御ダンパーECUが最適な減衰力を演算子、4本の電子制御ダンパーのソレノイドバルブをリアルタイム制御します。

STI Sportのサスペンション制御アルゴリズムは、スカイフック理論に基づいたものです。スカイフック理論とは、車体を宙吊りにした状態で、タイヤ接地面を路面のう凹凸に完全に一致させることができれば、車体は常に一定の姿勢を維持できる、というもの。その究極的存在が、シトロエンのハイドロサスペンションです。魔法の絨毯とも呼ばれるその乗り心地は、快適そのもの。但し、路面と完全に隔絶されているため、路面からのインフォーメーションは皆無ですが。。。

STI Sportでは、これらリアルタイム制御に加え、ドライブモードセレクトによる特性選択も可能です。セレクトモードは、[Comfort][Normal][Sport]の3段階。使用環境や好みに合わせて、サスペンション特性を変化させることができます。例えば、路面が荒れがちな市街地では[Comfort]、路面がスムーズな高速道路や郊外路では[Normal]、ワインディングでは[Sport]と、使用環境に合わせて積極活用するのがオススメです。

 

数々投入される最新技術。2ピニオン電動パワステ、電動ブースター、新AWD制御。

473 627
 
500
500
500

今回、シャシー側の新技術はこれだけに留まりません。数多くの新開発技術が投入されています。

STI Sportのドライブモードセレクトでは、パワステのアシスト特性を選択可能です。モード選択は、[Comfort][Normal][Sport]の3段階。これを可能にしたのが、新たに投入された2ピニオン方式の電動パワーステアリングです。

これまで、電動パワステのフィーリングは、油圧パワステに劣るものとされてきました。酷いものでは、ステアリングトルクがコリッとステップ状に変化し、微小舵角ではまともに操舵できないような代物も存在します。これでは、ドライビングを愉しむなぞ、根本的に不可能です。新型レヴォーグでは、ドライバー入力軸をアシスト軸と完全に分離することで、操舵時のフリクションを低減。路面からのインフォーメーションをより明瞭に伝達しつつ、より自然かつダイレクト感の高いステアリングフィールを実現します。

また、ブレーキシステムも一新。新たに、マスターシリンダーASSY&エレクトリックブースターASSYを採用しています。コントロールユニットを一体化することで、従来の負圧ブレーキブースターと同等のサイズに留めています。その導入目的は、EyeSightとのマッチングにあります。すなわち、追従クルコン及びPCB(プリクラッシュブレーキ)作動時の応答性を改善です。

先行車に追従する場合、その制御をより自然にするには、人間が良くするように2台前の車両の動向を見ることが大切です。しかし、こうした制御は余りに難易度が高く、安定性と冗長性に欠けるため、導入されていません。そこで、直前の先行車のみの動向に依存する場合、その減速から早い段階で自車の減速を開始する必要があります。そして、それはPCBでも同様です。

新型レヴォーグでは、ブースターの電動化により応答性を格段に向上。より早い段階で作動させることで、安心感と信頼感のある減速が実現します。また、そのフィーリング改善も図っており、短いストロークながらもしっかりと効くブレーキフィーリングが実現しています。

また、AWDシステムも制御が変更されています。アクティブトルクスプリットAWDと呼ばれる、このAWDシステムはスバルでは最もコンベンショナルなシステムですが、今回新たにリヤへのトルク伝達のタイミングを早めるよう、制御ロジックを変更。再加速時の加速レスポンス改善を図っています。

また、STI Sportではドライブモードセレクトに、[Sport]が追加されています。コーナー旋回中のリヤへの駆動配分を増やすことで、前輪のコーナリングフォース容量を増加。コーナー脱出時のアンダーステアを改善し、トラクションを向上させます。

 

静寂に包まれるキャビン。きめ細やかでスムーズな加速感。路面から隔絶された、滑らかな乗り心地。

1100
 

さて、技術談話はこのくらいにして、スバルの新たなフラッグシップモデルを実際に走らせててみましょう。

まず、驚かされるのは、恐ろしく進化した静粛性。エンジンが掛かっていることを忘れさせるくらい、そのアイドリング音は静か。アイドリング回転を常に1000rpmにキープするCB18の独特の制御も相まって、キャビンはまったくの静寂に包まれます。フォレスター・SPORTで聞かれたカツカツッという特有の燃焼音さえも、新型レヴォーグでは聞き分けることは不可能です。

ドライバーズシートは、インプレッサに比較すれば、少しアップライトな姿勢。最も低い設定としても、臀部より膝を高く置くような姿勢には設定できず、背もたれを少し立て目にして座るのがベストポジションの様子。

折角なので、ドライバーモニタリングシステムに登録しましょう。間違って、カメラ部を見ていても登録はできません。運転する時のように、正面を向くのがベスト。じきに、登録完了のメッセージ。こうしておけば、新型レヴォーグの最新技術の恩恵をより多く受けることが出来ます。

準備万端、出発準備完了。ブレーキペダルを踏み込み、セレクトレバーをDレンジに引き込むと、電動パーキングブレーキをリリース。いよいよ、新型レヴォーグが歩みを始めます。

特段、何も驚くことはありません。公道に出て、アクセルを踏んでいってもそれは同じ。ターボでござい、といった下世話な加速感は一切ありません。きめ細やかでスムーズなトルクで、スーッとごく自然にスピードが伸びていきます。

ただ、よくよく分析していくと、その違いが見えてきます。ただ単に単なる加速なれど、ただ単なる加速とはやっぱり違う。パウンドケーキというより、上質なカステラ。緻密で味がギュッと濃縮されているけれども、舌の上でスーッと溶けていく。そんな質の高い加速感なのです。ガサツにガーッとエンジンが引っ張っていくのではなく、スーッと音もなくスピードが伸びていく。そう、しっとりとしているのです。

勿論、そのしっとりとした加速感は、エンジンだけで実現できるものではありません。ボディ―サスペンション系の仕事ぶりは、決して見過ごしてはいけません。タイヤは路面の段差やアンジュレーションに良く追従して忙しく動き、ボディは路面から隔絶されたかの如く、常に穏やかな平静を保っています。ただ、その動きは決してわざとらしいものではなく、気が付かねば仕事していることさえ気付かぬほど、滑らかなフィーリングです。

 

滑らかでしっとりとした、ステアリングフィール。しなやかに路面に追従するタイヤ。盤石のスタビリティ。

700

ステアリングのフィーリングは、しっとり滑らかで実に緻密。遊びと呼ばれるような、腑抜けたスコスコの手応えは皆無。微小舵角から、キッチリと反応(=インフォーメーション)を返してきます。しかし、そのインフォーメーションは、メリハリのある明瞭明確なものではなく、しっとりと穏やかなもの。それ故、スパスパッと豪快に切り込んでいく様なイメージではなく、スッスッと軽やかに駆け抜けていくイメージ。絶対性能よりも、しなやかな快適性に主眼を置く、新型レヴォーグのコンセプトが見えてきます。

ブレーキング時のノーズダイブ→コーナリング時のロール。それら一連の動きは上手く抑制されていて、そのフィーリングは常に緻密でしっとりとしています。決して、無理に拒否されている実感はありません。ハードブレーキングでも、路面の凸凹を綺麗にいなしつつも、ノーズはスッと下がるのみ。姿勢変化が抑制されているのは確かですが、先代STI Sportのような不自然感は全くありません。そこには、絶対に馬脚を顕にしないという、絶対的な自信が溢れているようにも感じられます。実に、頼もしい。

決して派手さは、ありません。これ見よがしのアピールもありません。あらゆる最新技術が全く美しく調和していて、「何の変哲も無い」フィーリングが演出されているのです。例えるなら、自家製コンソメ。凄まじい手間が掛るけれども、テーブル上では単なるコンソメスープでしかない。そんな驚異的な「何の変哲も無さ」が、新型レヴォーグの凄みだと言えるでしょう。

高いコーナリングGを掛けていくと、その傾向は更に顕著になります。グッ―とアウト側に荷重が掛かっていっても、底付き感は全くゼロで、ドタバタ感はありません。事も無げに、タイヤが行儀よく路面に追従するため、Gの抜ける感じが一切無いのです。まだまだ、イケる。そう思わせるほどの盤石の安心感があります。

アクセルOFF→ブレーキング→ターンイン→アクセルON→コーナー脱出、という一連の流れは常に穏やかでスムーズ。タイヤには程よい接地感があり、ドライバーの意志に何処までも忠実。ただ、脱出時のトラクションの掛かり方には、若干唐突感が感じられます。そこで、STI Sportならば、AWDは[Sport]がオススメ。こちらなら、リヤに積極的にトルクが伝達されていくので、不自然さは残りません。

 

ドライブモードセレクトを試してみる。

580 520
 
800

続いて、ドライブモードセレクトを試してみましょう。これこそ、新型レヴォーグのインプレッションを最も難しくさせる、スバル期待のウェポンです。なお、ドライブモードセレクトはSTI Sport専用。新型レヴォーグをお好みにカスタマイズしていく楽しみを味わいたいのであれば、STI Sport一択。高いけれど、選ぶ価値はある。そう思わせるものであるのは、間違いありません。

では、ドライブモードセレクトについて、まずは詳細を見ていきましょう。まず、モードはプリセットの[Comfort][Normal][Sport][Sport+]の4つ。これに、カスタマイズモードである[Individual]が加えた、計5つ。簡単に言えば、前者4つはスバルのオススメモード。これに対し、[Individual]はすべてが自由。1つずつ、お好みのセットアップを試していくことができます。

モード設定可能なコンポーネントは、[パワーユニット][ステアリング][サスペンション][AWD][EyeSight(追従クルコンの加速設定)][エアコン]の6つ。このうち、通常走行に関連するのは[パワーユニット][ステアリング][サスペンション][AWD]の4つ。この4つのセッティングは様々に組み合わせることができ、自由にそのキャラクターを作っていくことができます。

ドライブモードセレクトの選択は、ステアリングホイールの右側スイッチパネルにあるスイッチで行います。「☆」マークは[Individual] 専用。[MODE]のスイッチでは、プリセットの4つのモードを選択可能です。何れかのスイッチを押すと、センターインフォメーションディスプレイにモード選択画面がポップアップ表示されます。選択されているセッティングは、画面上にブルーで表示されるため、現在どのセッティングであるかは一見して判別可能。実に分かりやすい表示です。

一方、[Individual]モードでは、ディスプレイに表示された各コンポーネント毎に、自由にセッティングを選んでいくことができます。それでは、次は各コンポーネント毎にモード別にセッティングを見ていきましょう。

 

ドライブモードセレクト:1.パワーユニット

1100
 
650

これまでのSIドライブと同様に[I][S][S#]の3つ。[Comfort][Normal]では[I]が、[Sport]では[S]、[Sport+]では[S#]が選択されます。

[I]は、エンジン回転数をなるべく低い回転数で維持します。その目的は、燃費にあります。CB18エンジンは、リーンバーンターボ。負荷が40%以下の領域では、積極的にリーンバーンを用いることで、燃費を改善します。このモードでは、CB18はまるでNAエンジンの如く、滑らかかつスムーズ。アクセルを踏み込んでいくと、スーッと自然に速度が伸びていきます。そのフィーリングは、実に穏やかでしっとりとしていて好印象。CVTならではの、ショックがまるでない加速フィーリングは、最高です。

もっともスポーティな[S#]は、かなり機敏な印象。エンジン回転は、ちょっと高めの2400rpmでキープ。アクセルを強めに踏み込んでいくと、グッとトルクが湧き出し、力強くグーーっと伸びやかに加速していきます。最高出力が177psとは、とても信じられない加速感。ピークパワーよりも、ターボのトルクで押していく感じです。ただ、この状態でも常にフィーリングは滑らか。先代レヴォーグのFA20DITの[S#]ような、グワンッとしゃくる感じや、過給圧がオーバーシュートするような「行儀の悪さ」は一切ありません。右足に常に忠実で、力強くとも穏やかさを失っていません。

そこへ行くと、[S]の印象は控えめ。[I]と[S#]の中間ですが、[S#]ですら穏やかさを備えているため、[S]の印象が比較的薄いのです。もちろん、そのフィーリングは滑らかで、より良いレスポンスを備えています。

 

ドライブモードセレクト:2.ステアリング

650

選択モードは、[Comfort][Normal][Sport]の3つ。[Comfort]では[Comfort]、[Normal]と[Sport]では[Normal]、[Sport+]では[Sport]が選択されます。

[Comfort]は、操舵力が軽め。そのため軽快感があり、スッスとステアリングを切っていくことが可能です。初期応答は少しマイルドになり、フィーリングは滑らかかつ穏やか。ただ、少々重みに欠けるため、高速道路では少し心許ない印象。ただ、逆に操舵の機会が多い市街地走行には最適です。

[Normal]を選択すると、操舵力は少し重めに変わります。高速道路では、重みを増した操舵力がより良い直進安定性を作っている印象です。一方、市街地ではちょっと重みを感じはするものの、重たいッという印象はありません。全体にバランスの良い印象です。

[Sport]では、グッとステアリングは重みを増してきます。そのキモは、車速に対し一定の操舵力。ステアリングを切り込んでいくと、重めのフィーリングから「正直」にヨーが立ち上がる印象。ただ、市街地走行ではちょっと重すぎる感があります。左折の際などは、ちょっと煩わしささえ感じます。

 

次のページ>>1 2 3

 

スバルショップ三河安城 店舗案内

スバルショップ三河安城本店
スバルショップ三河安城和泉店
 

>>最新情報一覧

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

JAPAN MOBILITY SHOW 2023...

2023年10月12日 スバル

 
 

夏季休業のごあんない

2023年08月12日 スバル

 
 
 
 
 
 
 

自動車は、どう進化すべきか。...

2023年05月09日 スバル

 
 
 
 
ニュースピックアップ