ポルシェ、本当にルマン撤退。行き先は、Formula E。 [2017年08月11日更新]
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マツダ、デイトナ制覇へ始動。チーム名は何と、マツダ・チーム・ヨースト!!!!
スポーツカーレーシングをこよなく愛する者にとって、青天の霹靂とはこの事でしょう。世界で最も覇気のないスポーツカーレーシング活動をしていたマツダと、世界最強のスポーツカーレーシングチームが手を組むと言うのですから。小生も、まったく予想だにしていませんでした。
マツダが、北米マツダの主導でIMSAに参戦を開始して以来、まったく目立った成績を挙げられていません。昨年はルマン優勝25周年を記念して「CHARGE」カラーで参戦した際には、結果は無残なものでした。改善が急務であったのは疑いようもない事実でした。
ただ、ヨーストとジョイントするからには、負ける訳にはいきません。世界最強のヨーストでも勝てないとしたら、よっぽどクルマが悪いに違いないからです。マツダは、大勝負に出たことになります。
デイトナ24時間、セブリング12時間というビッグレースに挑戦。
現在、マツダが取り組んでいるのが、IMSAのDPi(デイトナ・プロト・インターナショナル)というプロトタイプカテゴリー。WECで成功を納めているLMP2をベースに、オリジナルエンジンとオリジナルカウルでモデファイしたものです。現在はキャデラック、日産、マツダが参戦しています。デイトナ24時間やセブリング12時間など伝統あるイベントで総合優勝を狙えるうえに、手頃な参戦費用と効果的なプロモーション効果も相まって、いくつかのメーカーが今後の参戦に興味を示しているようです。
マツダは、早々に今年の参戦休止を発表。8月から、ヨーストと合同で来年へ向けたテストを開始するようです。来年早々に開催されるデイトナへ向けて万全を期すあたり、さすがヨーストと言わざるを得ません。順当に行けば、デイトナ・セブリングの二冠も夢ではないでしょう。
マツダのルマン復活参戦はあるのか?
こうなると期待されるのは、ルマン挑戦の再開です。1991年のルマン制覇から既に26年。当時の感動を再び、というファンも多いことでしょう。しかし、状況はそう単純ではありません。
急激な発展を遂げるDPiですが、FIAとACOはWECとルマンへのDPi導入には否定的です。LMP2は3人中1人はアマチュアドライバーが義務付けられるなど、ミリオネア向けのアマチュアカテゴリーです。今年のルマンでは、香港のムービースターであるジャッキー・チェン・レーシングのマシンが2~3位を獲得するなど、より一層の注目を集めています。メーカーが関与するDPiはLMP2よりも速いはずですから、ミリオネア達はLMP2から興味を失うでしょう。折角育ったLMP2を破壊する必然は、何処にもありません。
ただ、WECがDPiに門戸を開かざるを得なくなる可能性があります。昨年を以ってAudiが撤退したため、WECのLMP1-Hに参戦するのはトヨタとポルシェのみ。そのポルシェも今年中の撤退が噂されています。LMP1-Hの課題は、参戦費用の高騰と技術ハードルの高さです。今年、小林可夢偉が叩き出した3分14秒791のルマンコースレコードは、大方の予想を6秒も上回るもの。LMP1-Hの技術レベルは、既に究極の領域に到達してしまっています。
LMP1-Hに鳴り物入りで登場した日産は大惨敗の末に、すでに黒歴史化。将来的に復帰を唯一希望しているプジョーは苦戦が目に見えているため、ハイブリッド技術の単純化を求める有様。LMP1-Hの永続性が疑わしいのです。WECとルマンは、世界最高のモータースポーツです。プライベータに総合優勝を争わせる訳にはいきません。となると、WECはDPiに門戸を開いて、メーカーの新規参戦を導く以外にないのです。
ヨーストならば、どのメーカーでも成功可能。
もし、ポルシェが7月末に撤退を発表すれば、トヨタはWECプログラムを再考せざるを得ません。小生は、Audi同様に鬼の居ぬ間に連勝を重ねて金字塔を築くのが、最もコストパフォーマンスに優れたプランだと考えていますが、トヨタが同じ考えとは限りません。卑怯な勝利と罵られるのを恐れて、撤退する可能性もあります。
もしそうなった場合、主役を失ったWECは衰退を恐れてDPiの導入を急遽決定するはずです。すると、突如マツダにデイトナ・セブリング・ルマンの三大耐久レース三冠の可能性が訪れます。もし、それが成った場合、マツダが獲得する名声は計り知れません。
巨人トヨタでさえ辛酸を嘗めているルマンで、マツダは成功できるのでしょうか?可能性は、あります。それも高い確率で。残念ながら、それはマツダが凄いからではありません。パートナーが、ヨーストだからです。
驚愕のルマン24時間、15勝。
ルマン13勝を誇るヨースト・レーシングは、ポルシェのワークスドライバーであったラインホルト・ヨーストが1978年に設立。以来、ポルシェとのコネクションを巧みに利用し、時にワークスを打ち破りつつ活躍を続けてきました。初優勝は1984年。翌1985年も連勝。その後、1996年と1997年も2連勝。ルマン最強のポルシェワークスを破っての優勝は、ヨーストにしか成し遂げられない偉業でした。双方とも、全く同じシャシーでの優勝。新車を作るだけの予算がない中で、勝ち得た優勝でした。
1998年を以ってポルシェがトップカテゴリーから撤退を決めると、ヨーストは仕事を失います。当時のルマンでは「屋根付き」と「屋根なし」で若干ルールが異なっており、どちらが有利とも言えない情勢でした。そこで、Audiはルマンへのチャレンジへ向けて周到な二正面作戦を準備。Audiは、屋根付きを元トヨタ・チーム・トムスのRTNへ委託すると共に、屋根なしをヨーストに委託。RTNの仕事は酷いもので、こちらは惨敗。一方のヨーストは、明らかに戦闘力不足のR8Rながら、表彰台を獲得。この結果、その後のAudiの活動はすべてヨーストに委託されます。
以後、アウディ・チーム・ヨーストとして、ルマンで9勝。さらに、アウディスポーツ・ノースアメリカ名義でも、2勝。加えて、1994年のダウアーポルシェや2003年のベントレーも実際はヨーストが走らせていますから、実質15勝。恐ろしいほどの強さです。
最強チームとタッグを組むマツダ。さぁ、スバルはどうする。
マツダは、今後「マツダ・チーム・ヨースト」として活動を開始します。この活動は、間違いなくマツダのブランドイメージに貢献するでしょう。ソウルレッドの美しいマシンが、栄光のチェッカーフラッグを受ける瞬間。その瞬間、ソウルレッドはあのチャージカラーと同様、伝説のカラーリングとなるのです。
それは、スバルのWRブルーと同じストーリーです。マツダは、遂に大きな一歩を踏み出すのです。しかも、最高のタイミングで。
さぁ、スバルはどうするのでしょう。モータースポーツで勝ち得たブランドイメージは、モータースポーツでしか維持できません。アイサイトはいくら優れていても、伝説にはなれません。アイサイトに感謝する人は居ても、アイサイトに恋い焦がれる人は居ないからです。安全だけではブランドは築けない、ファンは作れないのです。
もう、Subaru of America(SOA)の忍耐は限界のようです。スバル本社とは別に、彼らは独自の活動を開始しています。次のターゲットは、もしかするとDPiかも知れません。スバルは、GTクラスに参戦するベース車両を持っていません。しかし、イギリスにはBTCC用のFA20DITがありますから、これを仕立て直してLMP2に搭載すればDPiの完成です。SOAには難しくても、プロドライブならこの位の仕事は朝飯前。低予算で効果的なプロモーション。このプランは、非常に魅力的に思えます。
兎にも角にも、スバルも新たな一歩に踏み出すべきです。その発表は、いつになるのやら。
ポルシェ、本当に撤退。行き先は、Formula E。
7月28日、ポルシェがLMP1-Hからの撤退を正式発表。昨年のAudiに続く撤退によって、LMP1-Hにはトヨタが残るのみ。2011年以来、長らく続いてきた華やかなりしルマンでの激闘にもいよいよ終止符が打たれます。
ルマンは、幾度も繁栄と衰退を繰り返してきました。それでも、ルマンがルマンであり続けたのは、その歴史に価値があるからです。マツダを見ても分かる通り、たった一度の優勝であっても伝説となりうる。それが、ルマンの価値です。
フェラーリとポルシェは、世界の冠たる自動車ブランドですが、ルマン無くして彼らの名声は有り得ませんでした。60年代までは、地味なF1よりも華やかなスポーツカーレーシングの方が人気が高かったのです。彼らは幾度もルマンで勝利を積み重ねたことで、今に続くブランド価値を築き上げました。
でも、彼らはルマンの価値に限界を感じ、去っていきます。彼らの行き先は、新時代レースシリーズであるFormula E(以下、FE)。2020年までには、ルノーに続いてAUDI、BMW、メルセデス、ポルシェらが続々とワークス参戦を開始します。