BTCC最終戦を追ったドキュメンタリームービー公開。 [2017年10月20日更新]
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スバル、久しぶりの戴冠。参戦2年目で、BTCCタイトルを獲得!!
日本から遥か彼方、モーターレーシングの聖地であるイギリス。彼の国で歴史と伝統を誇るツーリングカー選手権BTCCで、スバルが遂に栄冠を獲得しました。今シーズン、MGより移籍した新進気鋭のアシュリー・サットンがドライバーズタイトルを獲得したのです。
TeamBMRが開発したレヴォーグは中盤戦以降一気にペースを上げて、絶対的優勢と思われたBMW勢を凌駕。中盤4ラウンドで、1位4回、2位3回、3位1回と抜群の強さを発揮。終盤戦が混戦模様となったことで、サットンは優勢をキープ。昨年でスバルを去ったコリン・ターキントンを上回って、見事タイトル獲得に至りました。
史上初めて成功したツーリングワゴンのレーシングカー。
これまでも、珍妙なツーリングワゴンのレーシングカーが登場しては消えていきました。その多くは、マーケティング上の理由でした。
中でも印象深いのは、TWRが1994年のBTCCに投入したボルボ850エステートです。かつて、その速さからフライングブリック(空飛ぶレンガ)と呼ばれた、240ターボの再現を狙ったもの。ところが、当時のBTCCは10メーカーがワークス参戦(!!)という超激戦状態。TWRと言えども、当然ながらワゴンではムリだったらしく、翌年からはセダンが投入されることになります。
これまた珍妙なのが、シムスが1996年のJTCCにエントリーしたインプレッサワゴンでしょう。4WDではルール状不利なため、FRにコンバート。エンジンは、なぜかEJ18をベースに仕立てた2.0LNAエンジン。どうして、セダンじゃダメだったのか?まったく存在理由が不明なまま、絶望的にスピード不足のこのマシン。終始テールエンダーで役目を終えることになります。BTCCレヴォーグの先祖と言うべきか、スバルの黒歴史と言うべきか。悩むところです。
歴史と伝統を誇る、世界最古のツーリングカー選手権。
ツーリングカー選手権は、ファミリーカーたるセダンやハッチバックで争われるレースカテゴリーの一つです。大衆からは縁遠い高価なスポーツカーではなく、一般大衆にも親しみ深いファミリーカーをベースとするため、世界各地で安定した人気を誇っています。
ツーリングカー選手権は、クラッシュ上等の熾烈なバトルが魅力です。幅寄せ、押出し、道連れと、兎に角何でもあり。レース距離が短い超スプリントレースであるのと、マシン自体が比較的安価かつ重大事故になりにくいのが、その理由です。
中でも、BTCC(英国ツーリングカー選手権)は世界最古の歴史を持つ偉大なるレースシリーズです。最高潮に達したのは、1990年代。世界各地から9メーカーがワークス参戦し、元F1ドライバーが参戦するという、世界選手権まがいのレースが行われました。当然、そんな栄華は長続きするはずもなく、21世紀に入る頃には国内選手権らしいスタンスに戻っています。
何しろ楽しい、BTCC。これぞ、モータースポーツの原点。
F1は、退屈。そう言われて久しい、昨今。これ程予想がつかないレースが行われるのは、世界広しと言えども、BTCCくらいでしょう。
何しろ、予選でさえ25台が1秒以内にひしめく大激戦。それが、決勝でガツガツぶつかりながらの大混戦となるのです。スタートでは、多重クラッシュは当たり前。しかも、1ラウンドに3回のレースがあり、3レース目はトップ10を逆順にしてのスタート。楽しくないはず無い。それが、BTCCの魅力です。
現在のBTCCは過当競争を防止するため、緻密かつ慎重なコストマネージメントのもとで運営されています。純粋なワークスチームはなく、各コンストラクターがメーカーの支援を受けつつ、独自のマシンを開発して参戦しています。
突如発表された、レヴォーグの参戦。
2015年シーズンにパサートCCで参戦していたTeamBMRはVWとの関係終了を受けて、新たにスバルUKの支援で参戦する事を発表します。誰しもが予期しない、突然の参戦発表でした。より規模の大きなBMWやホンダ等に対して、スバルでチャレンジできるのか大いに疑問でした。何より、正気を疑ったのは、ベース車両がレヴォーグだったからです。
この時点で、このプロジェクトが実を結ぶと考える者は少なかったでしょう。どうせワゴンじゃどうにもならず、1年でインプレッサにスイッチされるに違いないと。
2016年シーズンのキックオフである、プレシーズンテストは製作が間に合わず欠席。しかし、TeamBMRは本気でした。開幕戦には、きっちり4台を間に合わせたのです。ところが、ここからが本当の苦難の始まりでした。第1ラウンドで前途多難な大苦戦。第2ラウンドでは出火事故に見舞われてしまいます。続く第3ラウンドはエンジンの見直しを図るべく、欠場。鳴り物入りで登場したレヴォーグでしたが、完全に期待ハズレ。誰しもが、レヴォーグの将来を諦めていました。
突如、快進撃を開始するレヴォーグ。
長いインターバルを挟んで中盤戦に突入した、2016年のBTCC。面目躍如、一気に快進撃を開始したのが、レヴォーグでした。
第4ラウンド第1レース。いきなり、コリン・ターキントンがポールtoウィン。ジェイソン・プラトも3位表彰台を獲得します。ここから、21レースでターキントンは5勝。表彰台の常連となった2台のレヴォーグは、シリーズランキングでも一気に急上昇。最終戦まで、ランキング争いに踏みとどまる大健闘となります。
史上初めて、ツーリングワゴンのレーシングカーが成功を収めた瞬間でした。空力的には若干有利ながら、コンパクトなシビックやBMWと比べると、明らかに不利なレヴォーグの大柄なボディ。その不利を跳ね除ける、見事な活躍でした。
最終戦まで、もつれ込んだタイトル争い。
昨シーズン5勝を挙げて見事ランキング4位を獲得したコリン・ターキントンでしたが、契約が不調。新たにBMWのメーカーサポートを受けるウェストサリーレーシングに移籍にしてしまいます。空いたシートは、戦闘力不足のMGながら活躍を見せた新進気鋭のアシュリー・サットンに託されます。サットンは、BTCCのレジェンド、ジェイソン・プラトと共に2017年シーズンに挑みます。
ブランズハッチで開幕した2017年シーズン、昨年の好調が嘘のようにスバル勢は大不調に陥ります。それでも、第2ラウンドのドニントンパークでサットンが2度表彰台を獲得すると、第3ラウンドでも上位をキープ。第4ラウンド以降は抜群の強さを発揮すると、そのまま好調を維持してランキングトップで最終ラウンドを迎えます。奇しくも、ランキング2位はBMWへ移籍したばかりのターキントン。その差は、たった10pt。タイトル争いは、FR車同士の対決となります。