新型フォレスター+e-BOXER。その魅力から、ベストバイを考える。 [2019年01月30日更新]
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フォレスター Advance試乗記。e-BOXER、その実力派とは。
昨年夏にデビューした、新型フォレスター。スバルショップ三河安城では、2台の試乗車をご用意しております。
1台は三河安城本店配備のX-BREAK。エンジンは、水平対向4気筒の2.5L自然吸気。17インチタイヤと撥水加工インテリアの装備で、内外装に施されたオレンジのアクセントが特徴です。アクティブな雰囲気を楽しみたい方に、オススメのグレードです。
そして、もう1台が和泉店配備のAdvance。こちらは、e-BOXERと呼ぶモータアシストユニットをパワートレインにしています。エンジンは水平対向4気筒ながら、サイズダウンした2.0L自然吸気。これを補うのが、リチウムイオン電池で駆動されるアシストモータ。タイヤは上級仕様の18インチで、ドライバーモニタリングシステムという新基軸が話題のグレードです。
今回は、X-BREAKと比較しつつ、Advanceの試乗レポートをお届けします。
最小限のボリュームで、最大限のアシスト。それが、e-BOXER。
新型フォレスターから「e-BOXER」と名を改めた、スバルのハイブリッドシステム。2.0LNAの水平対向4気筒とリニアトロニック(金属製チェーン式CVT)の組み合わせはそのままに、インプットシャフトの後端に小型の駆動アシスト用モータを加えたものです。その登場は、2013年。XV HYBRIDは、スバル初のハイブリッド車として、大いに注目を集めました。
このハイブリッドシステムのメリットは、大掛かりな改良をせずに既存の車種に搭載できる点にあります。フロントエンドにエンジン再始動用バッテリを追加しつつ、スペアタイヤの積載スペースに駆動用バッテリとインバータユニットを搭載。ただ、その分モータ出力は限られたもので、燃費向上の効果は限定的なものとなっていました。
今回、フォレスターのフルモデルチェンジに合わせ、システムを全面的にアップデート。駆動用バッテリをリチウムイオンに換装して容量を大幅に拡大した他、システム電圧の昇圧によって実質的なモータ出力の向上も図っています。
限限まで稼働率を高めた、e-BOXERの小型アシストモータ。
昇圧の効果は、あらゆる瞬間にアリアリと感じることができます。蹴り出しのトルク感が、相当に高まっているのです。低速域からの再加速でのモタツキ感が解消され、アクセルを踏んだ瞬間、スッと前に伸びる。そんな印象です。
逆に言えば、これはCVT特有の弱点でもある訳で、e-BOXERがそのネガ封じをしているとも言えるでしょう。
但し。。。そう。この注釈こそ、e-BOXER最大の課題です。
この蹴り出し感は、あくまで「蹴り出し感」止まり。スッと伸びるけど、スッーと伸びていってはくれません。そこから先は、エンジン回転を高めに維持(つまり、CVTの変速比を高く保つ)することで、加速を作っていきます。
一方で、アシスト効果は確実に向上しています。定格出力13.6kWと決して大きくないモータですが、アシスト頻度を高めることで、最大限のアシスト効果を得ているのです。印象としては、常に最大出力。「モータくん、小さいのに頑張ってるなァ」と応援したくなる気分です。
絶対性能は、明らかにX-BREAKが上。
国道23号線を走ると分かりますが、絶対性能では2.5LNAに明らかに分があります。
2.5Lは力強く漲るトルクが頼もしく、ドンドン1.5t級のボディを押し出していきます。一方、e-BOXERは蹴り出しこそスッと行くものの、その後が続かず息切れ感。。。モータが疲れちゃった分、エンジンが代わりに頑張って回る感じです。
エンジンが回転で頑張るのは燃費に良くない訳で、車線は常に右!という方には不向きでしょう。ただ、高速でも常に左車線という方ならば、エンジン回転も低く維持できますから、燃費向上効果も期待できますし、絶対性能のネガも気にならないはずです。
80km/h程度で巡航していると、下り坂や緩い減速時にはEVモードとなって、エンジンが停止します。これは、XV HYBRIDでは無かった制御。低負荷領域で、細かく燃費を稼いでいきます。
エンジンの停止頻度を限界まで増やし、モータアシストも可能な限り増やすことで、持てる駆動系パッケージをフル稼働。キャリーオーバーのコンポーネントが多い中、やれるだけの事はやったんだ。そんなエンジニアたちの努力が垣間見えるようです。
但し、タイヤは17インチ仕様の方がベター。
新型フォレスターのホイール一覧。左から、Advanceの18インチ、Premiumの18インチ、X-BREAKの17インチ、Touringの17インチ。
e-BOXERの標準装着タイヤは、Premiumと同じ18インチ。X-BREAK(オールシーズン)やTouring(サマータイヤ)の17インチよりも、インチアップされています。18インチでは、よりスタイリッシュに仕上がってはいますが、バネ下重量は確実に増加しています。
残念ながら、そのネガは明らかです。トータル評価では、明らかに17インチが上。どうしても、バネ下重量増加によるドタバタ感が気になるのです。しかも、比べる対象がオールシーズンのX-BREAKというのが、なおさら辛いトコロ。
ゴムタイヤに空気を入れるのは、タイヤに減衰能力を与えるため。インチアップすれば、タイヤの空気充填の絶対量は少なくなり、減衰能力は低下します。乗り心地は悪化し、路面追従性能も低下します。ボディへの衝撃入力が厳しくなりヘタリが早まります。ギシギシ・ドタドタと、ボディの老化が早まるのです。
しかも、タイヤの交換費用は、確実に高額になる。これらを総合して考えれば、やはり17インチ仕様がベター。但し、Advanceでは18インチのみの設定。この点は、考慮する必要があるでしょう。
あなたなら、どのフォレスターを選ぶ?
Advanceは、モータアシストによる先進的な走りと装備が魅力です。漲るトルクはなくとも、精緻な駆動制御は魅力で、やはりスバルらしい1台と言えるでしょう。高い車両価格に驚く方はいらっしゃるでしょうが、細かくメーカーオプションを見ていけば、存外にお買い得なのをご理解頂けると思います。
ただ、小生のベストチョイスは、Touring。リセールバリューを考えなければ、価格もリーズナブルですし、17インチにトルクの太い2.5Lの組み合わせと、コストパフォーマンスは抜群です。ただ、スバルの意図的な価格設定によって、実質的な価格差が15万円以下に抑えられていますからお得感はソコソコ。本当に悩ましいところです。
もちろん、オレンジのアクセントがOKという方ならば、X-BREAKがベストチョイス。装着タイヤは、オールシーズン。チェーン規制下の道路の走行は不可能ですが、温暖な地域であれば、スタッドレスタイヤも不要かも知れません。その分、ライフサイクルコストの低減も図れます。
価格は近接していますが、結構キャラは違って設定されている新型フォレスター。ぜひ、じっくりと乗り比べて、ベストチョイスを探してみて下さい。