復調するレヴォーグ。BTCCタイトルの奪還は果たせるか? [2019年05月25日更新]
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第1ラウンド「ブランズ・ハッチ」:開幕戦PPレース2で表彰台を獲得。
イギリスツーリングカー選手権は、世界で最も歴史と権威のあるツーリングカーレースシリーズです。ここに挑戦を続けているのが、Adrian Flux Subaru Racing。TeamBMRというレーシングファクトリーがエントリーするチームで、スバル・レヴォーグをベースとしたマシンでBTCCに参戦を続けています。
初登場は、2016年。どう考えても不利であろう、巨大なツーリングワゴンのボディとあって、序盤は苦戦が続きました。しかし、中盤戦以降、徐々に自力を発揮。終わってみれば、4回のPPと6回の優勝と見事な成功を収めます。
2017年、スバル・レヴォーグを駆るアシュリー・サットンが、BTCCタイトルを獲得。レヴォーグは、参戦僅か2年目にして、ライバルを制圧。見事に王座を獲得したのです。
2018年シーズンは、前半戦で大きく遅れを取る厳しい展開。中盤で怒涛の巻き返しを演じ、終盤までタイトル争いに踏みとどまるも、それが精一杯。タイトルは、BMWを駆るコリン・ターキントンが獲得。サットンは、ランキングは4位に終わりました。
そして、迎えた2019年シーズン。新たにセナ・プロクターをチームに迎え、2台体制でタイトル奪還を目指します。さてさて、今年もレヴォーグの輝く姿を見られるのでしょうか。モータースポーツの本場で、スバル本社のサポート無しで奮闘するTeamBMR。では、彼らの序盤戦の闘いを見ていきましょう。
第1ラウンド「ブランズ・ハッチ」:開幕戦でPPを獲得するも、レース2で2位を死守するのが精一杯。
開幕戦はブランズ・ハッチ。インディ・サーキットと呼ばれるショートコースレイアウトで争われます。大きく回り込んだコーナーが多く、立ち上がりのトラクションに優れた、スバルやBMWのFR勢に有利なレイアウトです。開幕戦のPPを獲得したのは、アシュリー・サットン。2位には昨年までのチームメイト、ジェイソン・プラトが続き、3〜5位はワークスBMW勢が占拠します。
やはり、今年の最大のライバルは、3台を擁するワークスBMW勢。今年から新たに3シリーズセダンにマシンをスイッチし、必勝体制でタイトル奪取を狙っています。どうしても、サットンの孤軍奮闘となりがちな、スバルにとっては大きな壁です。
第1戦:タイヤ選択が明暗を分ける。ジョッシュ・クックが独走。サットンは、9位に沈む。
イギリスらしく霧に煙る中、2019年シーズンが遂に幕を明けます。上位9台がウェットタイヤをチョイスする中、BTC RacingのシビックTypeRを駆るジョッシュ・クックはドライタイヤを選択。この選択が明暗を分けることになります。
スタートこそリードを奪ったサットンですが、中盤に差し掛かると、路面が乾き出す辛い展開。ジョッシュ・クックはスリックのアドバンテージを活かして、9周目にはBMW3台を一気にパス。さらに、そのままの勢いでサットンをも料理し、トップを奪取します。タイヤが厳しいサットンやBMW勢は、次々にスリック勢の餌食になっていきます。勢いの違うジョッシュ・クックは、周回遅れを作る圧倒的なスピード。サットンは何とかラップ遅れを免れますが、結果は9位。厳しい出足となります。
第2戦:一旦はトップに立つものの、終盤にペースダウン。何とか、2位を死守。
レース1の順位でグリッドが決まるレース2は、サットンが躍動する、素晴らしいレースとなります。FF勢が上位を占拠する中、レヴォーグは素晴らしいダッシュで一気に3台をパス。2周目にはモファットのメルセデスをパスし、5位に浮上します。続け様に3台を次々にパスし、2位に浮上。これに続くのが、ジョーダンの330i。2台は、前を行くクックとの差を詰めていきます。
14周目には、ホンダ、スバル、BMWでバンパーtoバンパーの激しい攻防戦。何度もジョーダンに並び掛けられるも、これを何とか退けると、15周目にはクックの隙を突いて、サットンがトップを奪取。テールをスライドさせながら接近戦を繰り広げるジョーダンとサットン。17周目、ジョーダンがホームストレートでパス。
ところが、ジョーダンにはついて行けず、タイヤが尽きたサットンは一気にペースダウン。残り3周は4台を引き連れ、厳しい展開となります。最後は、0.042秒差でギリギリ2位を死守。何とか、シーズン初表彰台を獲得します。
第3戦:2台ともに、接触・コースアウトに終わる。
上位10台がリバースグリッドとなる、レース3。1コーナーでトップを奪ったのは、プロクターのレヴォーグ。しかし、あっという間に弾き出されてコースアウト。サットンは8位。その後方から激しいプレッシャーを掛けるのが、3台のBMW勢。序盤は、ソフトタイヤを選択したマシンが上位を占拠します。
10周目、リヤバンパーを損傷したジョーダンは、ターキントンを前に出します。中盤に差し掛かると、サットンは徐々に進撃を開始します。ところが、11周目。ヒルのAUDI S3をパスしたサットンに対し、ヒルがリヤから厳しくヒット。スピンアウトにより手痛いダメージを追ってしまいます。
優勝は、フォーカスを駆るトム・チルトン。ところが、彼には5秒のペナルティが待っていました。14周目の最終コーナーでマット・ニールとの接触が原因でした。結局、優勝はロリー・ブッチャーのシビック。チルトンが2位となります。
第2ラウンド「ドニントン・パーク」:サットンが2戦連続2位表彰台を獲得するも、手強いライバルに苦戦。
第2ラウンドは、ドニントン・パーク。PPは、コリン・ターキントンのBMW 330i。今年もタイトル最右翼のターキントンに対し、サットンは3番手グリッドを確保。絶対に負けてはならないレースが始まります。
第4戦:ターキントンに勝てず。手堅く2位をキープ。
スタートに勝るサットンは、今シーズン絶好調のクックをパスして、ターキントンの後方に付けます。その後方で多重クラッシュが発生。ジョーダンの330iは手酷いダメージを受けてしまいます。これで、セーフティカー導入。処理に時間が掛かり、リスタートは7周目。これで、レースは一気に残り2/3。
ところが、8周目に再びセーフティカー導入。リスタートは10周目。トップ2台に、サム・トルドフのシビックが迫るも、スピンアウト。3位にはワークスBMWのオリファントが浮上します。
ターキントンは、危なげなくトップをキープ。そのままチェッカーを受け、今シーズン初優勝。サットンは手堅く2位をキープします。
第5戦:サットンが連続2位となるも、ライバルのターキントンが2連勝。
レース2、スタートでダッシュに失敗したサットンは3位に後退。それでも、厳しくオリファントのインをこじ開け、2位を奪還。2017年と2018年王者のマッチレースの展開となります。クラッシュによりセーフティカーが導入され、リスタートは7周目。ターキントンが絶好の奪取を決めたのに対し、サットンはオリファントの接近を許してしまいます。何とかこれを凌ぐと、オリファントはペースを落とし、後方にはワークスシビックを駆るマット・ニールが浮上します。
12周目、再びセーフティカー。16周目のリスタートでも、ターキントンはトップを危なげなくキープ。17周目、タイヤが厳しいのか、サットンはニールにパスされ3位に後退。ほぼ同じくして、プロクターがクラッシュのダメージでピットイン。最終周、表彰台を死守したいサットンに対し、チルトンが激しくチャージ。何とかこれを凌いで、サットンは2位を獲得します。
2レースで表彰台を死守したものの、最大のライバルとなるターキントンが2連勝という、サットンには最悪の展開です。
第6戦:楽ではない展開の中、サットンが5位に入賞。
リバースグリッドのレース3。スタート後間もなく、後方で2台のVWが激しくクラッシュし、セーフティカー導入。リスタートは8周目。トップを行くのは、今シーズンから新型カローラ・スポーツにスイッチしたトム・イングラム。この時点で、サットンは7位。プラトのヴォクスホールを挟んで、ターキントンは9位。
9周目、クロスラインでチルトンに仕掛け、これをパス。しかし、12周目にプラトに交わされ、再び一歩後退。14周目、ターキントンがチルトンをパスして8位。対するサットンは、14周目にはプラトとヒルとの5位争いを展開中。
16周目、プラトを最終シケインの進入でパスし、6位を奪還。18周目、タイヤが厳しくなる最終盤、ヒルを最終シケインの進入で再びパス。
優勝はイングラムのカローラ、2位にはコラードのヴォクスホールとなり、サットンは5位でフィニッシュします。ターキントンは、モーガンにパスされて9位。
序盤2戦を終え、手堅く好位置をキープしたサットンがシリーズランキングでトップに浮上。他を圧する速さこそ無いものの、タイトル奪還に向けて最高の展開となります。ただ、3台のBMW勢の強さは特筆すべきものがあり、シリーズ後半には厳しい戦いが待っていることでしょう。
第3ラウンド「スラクストン」:厳しい展開が続くも、レース3位を獲得。
スラクストンで開催される、第3ラウンド。PPは、旧型シビックを駆るサム・トルドフ。ターキントンが手堅く4番手グリッドを確保。対する、サットンは7番手に沈みます。それもそのはず。ランキングトップのサットンは、ウエイトを54kgを積み込んでいるのです。
第7戦:BMW絶好調。スバルは、厳しい防戦一方の展開。
レース1は厳しい展開が予想されます。54kgものウエイトが辛いサットンには、いつものダッシュがありません。トップはトルドフがキープ。2位にBMWのジョーダン、これにダン・カミッシュのシビックが続きます。サットンは何とか7位をキープしますが、後方からニールとコラードが接近してきます。
サットンは完全に防戦一方の展開。10周目、アウトから被せたニールと、これを凌ぎたいサットンが交錯。ニールはこれに打ち勝ち、サットンは一歩後退を強いられます。
13周目、ジョーダンがトルドフに並びかけると、一気にパス。残り3周、3位のカミッシュの後方にターキントンが接近してきます
シーズン2勝目となるジョーダンが優勝。トルドフが2位、カミッシュが3位となり、ターキントンは4位を確保。サットンは、最終的にプラトの後方9位でチェッカーを受けています。
第8戦:さらに厳しい展開。サットンは、11位に沈む。
レース2は、スタートのダッシュに勝るBMW勢が1-2体制で始まります。サットンは8位に浮上。このレース2は、比較的落ち着いた展開。トップ2台に続くのは、ワークスホンダのカミッシュ。そこから間隔を開けて、4位のプラトと5位のニール。トップを守るジョーダンにピタリと付けるターキントンにとって、最高の展開です。
一方のサットンはイングラムにパスされ、9位に転落。何とかこれをキープすべく藻掻くものの、結果は11位。厳しいレースとなりました。
優勝はジョーダン、2位にターキントンとワークスBMWが1-2フィニッシュ。3位にカミッシュが続きました。
第9戦:激しくチャージするも、2位奪取は叶わず。
リバースグリットのレース3。不調の甲斐あって、サットンのウエイトは一気に0kg。しかも、11位フィニッシュのため、レースはPPからのスタート。対して、たっぷり48kgを積み込んだターキントンは苦戦必至です。
スタート直後、クックがサットンをパスしてトップに浮上。しかし、3番手のコラードがリヤからヒットされスピン。コース中央で後ろ向きとなり、ここにモーガンのメルセデスが激しくヒット。セーフティカーが導入されます。
5周目、レース再開。サットンはブッチャーに抜かれ、3位に転落します。レースが終盤を迎えた15周目、ペースの上がらないブッチャーに対し、サットンは再び接近を開始します。一方のターキントンは、プラトに抑え込まれ9位という厳しい展開。
残り3周、サットンはブッチャーに対し、チャージを開始。最終シケインでインを浮かせながら、激しくこれを追っていきます。残り2周、遂にバンパーtoバンパーに持ち込むと、2位争いは遂にファイナルラップに持ち込まれます。しかし、ストレートで勝るブッチャーがこれを退け、サットンは3位。クックが優勝を飾ります。ワークスホンダ勢がまだ優勝の無い中、早くも2勝目を飾っています。
BTCC 2019年シーズン中盤戦展望。プロクターのペースが上がらず、サットンは今年も孤軍奮闘。
第3ラウンドを終え、ランキングトップにはターキントンが浮上。同ポイントでブッチャーが2位、クックが3位。サットンは4位で中盤戦を迎える事になります。トップとの差は、僅か5ptです。
今シーズン、タイトル争いは最も手堅いターキントンとサットンの2人が中心となるでしょう。台風の目となるのは、クックでしょう。時折見せる速さは、侮りがたいものがあります。今シーズン最多勝はジョーダンですが、早くもポイント差が40pt以上開いており、早晩に追いつかない限り、ターキントンのサポート役をさせられる可能性が高いでしょう。