開発部門の再編計画。三鷹事業所を再編し、群馬の開発体制を強化。 [2020年06月13日更新]
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2020年06月13日 スバル
太田本工場の研究開発用施設を建て替え。三鷹の機能を一部統合。
日刊工業新聞は6月8日付けで、以下を報じています。[リンク>>]
「SUBARU(スバル)は、国内唯一の生産拠点となる群馬製作所(群馬県太田市)の本工場(同)敷地内にある研究開発用施設を建て替える。投資規模は約300億円。群馬製作所内に分散する研究開発部隊や東京事業所(東京都三鷹市)の一部を集約するほか技術者の増員も検討する。スバル独自の運転支援システム「アイサイト」などの新技術の開発につなげる。
また本工場の敷地に隣接する土地約5万9000平方メートルに走行試験場を新設する。新たな走行支援システムや自動運転技術などの試験に活用し、研究開発から試験までを一本化する。既存のテストコースがあるスバル研究実験センター(栃木県佐野市)との移動の効率化も図る。」
この記事の要旨は、三鷹事業所の一部機能を群馬に統合することにあります。三鷹事業所では現在、エンジン、ドライブトレインに加えて、アイサイト関連の研究開発拠点が置かれています。ところが、シャシー系の開発部門は太田、テストコースは葛生にあるため、この間の地理的乖離が開発の弊害となっていることは容易に想像できます。
太田と三鷹の間にある果てしない距離感が、心理的乖離の原因に。
小生の実家は三鷹の隣市ですが、太田に行くのは大変でした。過去の経験では、たっぷり2時間半は掛かった覚えがあります。あの「360」開発の時分には、この距離をラビットスクーターで走ったのですから、それはそれは大変な旅程だったことでしょう。。。
鉄道移動は、特に絶望的です。一旦都心を東に横断し、北千住から東武線特急を利用して2時間半。自動車でも、圏央道経由で2時間。。。建設中の外環が開通すれば、一気に短縮されるでしょうが、それでも1時間半は掛かります。スバルとしては、開発拠点を太田に一本化すれば、開発効率の向上を図ることができます。また、各開発部門の連携強化も可能です。
ただ、「都落ち」となる群馬への転勤は、そう簡単に受け入れられるものではありません。2時間以上を要するとなれば、引っ越さねばなりません。東京圏では、市立中学への進学希望率が高いですから、県外への引っ越しには特に抵抗感が強いのです。となると、孤独な単身赴任。。。受け入れを渋って、転職を選ぶ方もゼロではないでしょう。
特に、トヨタ及びデンソーの自動運転系開発拠点が都内で本格稼働しつつある状況では、アイサイト関連の人員流出は免れません。結果的に戦力低下を招き、統合化の効能は半減してしまいます。
三鷹から何を統合し、三鷹に何を残すのか。人材流出の危険性も。
これらを勘案する限り、三鷹のすべてを太田に移管するのではなく、一部施設と部門は存置するであろうことが想像されます。
例えば、トヨタとの協業である電動化関連部門は、豊田及び東富士からの便が良い三鷹に存置されるでしょう。また、個人の能力に依存しやすいアイサイト系のソフトウェア開発部門も、人員流出防止の観点から存置される可能性が高いと言えます。
一方で、エンジン・ドライブトレイン関連部門は、太田へ統合されるでしょう。そもそも、都内からの通勤圏で内燃機関開発を行っているのは、他にはいすゞくらいのもの。日産、ホンダも開発拠点は宇都宮周辺、日野、ふそうも北関東に開発拠点を置いており、人材流出のリスクが少ないと言えます。
エンジン・ドライブトレインの開発は、シャシー開発と連動せねばなりません。昨今、マッチングに若干の齟齬を感じるのは、地理的乖離及び心理的乖離が影響していることが想像されます。今後、自動車の電子制御はさらに深度化・複雑化します。これらを総じて検証・実証するには、統合された開発環境は必須と言えます。これを解消するためにも、太田への統合にはメリットがあるでしょう。
経営上重要事項にも関わらず、未だ公式発表なし。その意味する処とは。
さて、新設されるテストコースですが、59,000㎡では高速走行試験は一切不可能。よって、市街地を模したテストコースの新設が考えられます。同様の設備は北海道の美深試験場にも存在していますが、如何せん遠過ぎますし、冬季は使用できません。そこで、現在は本社敷地内で行っている市街地模擬走行試験を、新設のテストコースで実施するようになるのでしょう。
恐らく、テストコース内には研究棟も建設され、社員の往来や建物等の遮蔽物の設置により、よりリアルワールドに近い試験を実施するものと思われます。オンライン地図サービスで見る限り、本社工場の東側隣接地で整地作業が進められており、ここが当該地だと思われます。
問題となるのは、300億円もの原資です。COVID-19の最中にあっては、もっとも設備投資は招かれざるもの。事業着手(=発注済み)であれば、計画は進められるでしょうが、未発注であれば延期の可能性が高くなります。実際、リーマンショックの際には、先行発注となる開発機材は予算執行したものの、肝心の建屋建設を延期として、折角の新品機材を数年間倉庫行きとした事例もありました。
今回の開発部門の再編計画も、同様の事態となる可能性もあります。気になるのは、公式リリースが無いこと。開発部門の再編・強化及び自動運転開発体制の強化は、株式市場に対してもプラスのニュースのはず。にも関わらず、それをしないというのは、芳しい状況では無いように思われます。