新型レヴォーグ[VN型]特集:その3 シャシー・サスペンション系ドライビングインプレッション [2020年12月17日更新]

レヴォーグ
 
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新型レヴォーグ試乗記第1弾。その走りを徹底解説。
 
2020年12月17日 新型レヴォーグ特集 第3弾 シャシー・サスペンション系の技術詳細

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

スバルショップ三河安城本店に、新型レヴォーグ試乗車:STI Sport EXが到着。

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待ちに待ち侘びた、新型レヴォーグ試乗車。遅ればせながら、12月5日に弊社スバルショップ三河安城本店に回着。さらに、12月4日に春日井、12月10日でトヨタ博物館と、2箇所で試乗会が開催。漸く、その実力のほどを体感できる機会が参りました。

今回体感した試乗車は、すべてSTI Sport EX。新型レヴォーグの頂点に君臨する、最高峰グレードであると共に、世界最高峰の運転支援技術を誇るアイサイトXを搭載する、2020年スバル渾身の1台です。2020年12月7日には、「2020―2021 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の受賞が発表され、ますますその期待は高まっています。

今回は技術レポート第2弾として、シャシー系に話を絞って、そのインプレッションをお伝えして参ります。

 

全身から解き放たれる、絶対的な自信。威風堂々たる、一種独特の雰囲気。

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新型レヴォーグが、いま眼前に。その雰囲気は、これまでのどのスバル車とも異なる、一種独特のもの。威風堂々。少なからぬ気高さがあり、何処か泰然としています。ドアノブを引く我々に、少しの緊張を抱かせる、そういう意志の強さを感じさせます。その全身に、絶対的な自信を漂わせているのです。

スバルが全身全霊を賭けて開発した、新たなるフラッグシップ。エンジン、トランスミッション、シャシー、サスペンション、パワステ、アイサイト、アビオニクスと、ありとあらゆる領域の技術を全面刷新。並々ならぬ決意を以て、スバルは新型レヴォーグに生を授けました。しかし、それら新技術を飛び道具とはせず、新型レヴォーグという一つの完成形の中に、全て平等に調和させようという試み。飛び道具に頼らず、技術の調和とトータルの完成度で勝負する。それが、新型レヴォーグに与えた覚悟です。

 

能ある鷹は爪を隠す。あくまで主役はドライバー。完全に調和・調律された技術の数々。

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能ある鷹は爪を隠す。その決意と覚悟を、新型レヴォーグ自らが体現しているからこそ、その雰囲気を独特のものにするのでしょう。

少し重めのドアを引き、ゆっくりと開けていく。そこに広がる景色は、スバルという概念を軽く超えていく、圧倒的なもの。複雑な構成のパネルが緻密に重なり合い、調和的にコックピットを構成しています。アナログ計器は全廃、スイッチ類は最小限として、その機能は全てディスプレイに集約されています。いわゆる、グラスコックピット。

ただ、得てしてデザイナーは、飛び道具を強調しがち。直近のメルセデスやプリウスPHVは、その象徴でしょう。ところが、新型レヴォーグは違うのです。巨大ディスプレイとて「計器」の一つとして、全体の雰囲気に完全に調和させています。ドライバーを主役に、それら技術はあくまで従者として、全てを完全に調和させる。だからこそ、このグラスコックピットは肌馴染みが良いのです。これは、実に心地よいものです。

 

驚くことは何もない。しかし、恐しいほど緻密・濃密で、しっとりとした心地よさ。

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ドライバーズシートに身を沈め、手馴染みの良いステアリングホイールを握る。目を瞑っていれば、何の変哲もないスバルの香りが広がります。ブレーキを踏み込み、エンジンを始動する。聞き慣れたクランキング音で、新世代エンジンCB18が目を覚ます。やはり、何の変哲も無い日常です。

だが、その変哲のなさは、全く隙きのない濃密な日常であることに気付くのに、大した時間は掛かりません。新型レヴォーグは、CB18エンジンに象徴されるように、調和が命題。ですから、「何の変哲も無い」日常感は、その至上命題を全身隈なく徹底して初めて得られた、高次元の完成度の上に成立しているものなのです。

その沙汰を表現するとすれば、「しっとり」という言葉が適切でしょう。触れるもの、聞こえる音のみならず、五感で感じるもの全て。身の馴染み方が、実にしっとりしているのです。

新型レヴォーグは、決して飾らない。これ見よがしに、何かを誇示することもありません。そうした有り様もまた、しっとりとしているのだです。パリッとしたスーツではなく、存在を忘れるかの如く肌馴染みの良いアンダーウェア。そんな雰囲気かも知れません。そういった感応のすべてが「しっとりとした心地よさ」を感じさせるのでしょう。

 

インナーフレーム構造を採用した、第2世代SGP。劇的に向上した剛性。

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新型レヴォーグが採用したのは、2019年登場の新型レガシィ以降に採用される第2世代SGP。

2本のメインフレームを前後に縦貫させて、「剛性の谷間」を徹底排除。さらに、ホイールベース間に多数のフレーム構造を形成しつつ、バルクヘッド及びAピラー基部を徹底強化。重量増を許容しつつ、劇的な強度・剛性の強化を実現。世界最高の衝突安全性能と欧州車を凌駕する走りを実現した、第1世代SGP。

これに対し第2世代は、基本的設計は同一ながら、新たにインナーフレーム構造を導入。主要構造部材を先行して組み上げることで、構造部材間の接合強度を改善。さらに、従来のスポット溶接に加えて、構造用接着剤を積極導入。スポット溶接された2枚のパネル間に充填することで、「点」接合を「面」接合化。接合強度を大幅に改善した他、その減衰特性により微小振動の低減を図っています。構造用接着剤の塗布長は、第1世代SGPのインプレッサの7mから、一気に27mまで拡大されています。

また、ワゴンボディの新型レヴォーグでは、徹底した補強を実施。リヤホイールハウス付近には、前後縦貫フレームから立ち上がる3本の補強部材を追加。荷重の流れをスムーズにすることで、リヤ周りの剛性を徹底強化しています。また、リヤドア下やBピラー上部など剛性上の弱点を徹底的に潰していくことで、従来とは一線を画す異次元のボディ剛性を実現しています。

新型レヴォーグは初代レヴォーグに比して、ねじり剛性では+44%、フロント横曲げ剛性でも+14%、動的なねじり剛性でも+14%の向上を実現しています。その効果は実に目覚ましく、強烈な路面入力を受けても決して馬脚を顕にしない、堅固なボディを実現しています。

また、ボンネットフードに加えて、フロントフェンダーをアルミパネル化。軽量化に配慮しつつ、構造を見直すことで、歩行者保護を改善しています。

 
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鍛え上げられたインナーマッスルが作る強い体幹が、しなやかに足廻りを動かす。

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スバルが、ボディ剛性向上に徹底的にこだわるのは、サスペンションを確実に機能させるため。もし、路面入力にボディが負けていては、足を設計通りに動かすことは不可能。インナーマッスルを鍛え、ボディバランスと敏捷性を高めるアスリートと、まったく同じコンセプトです。

サスペンション形式は、フロントにストラット、リヤにダブルウィッシュボーンと大きな変更はありません。ただ、サスペンションストロークを、フロントで+25%、リヤで+10%(STI Sportのみ+5%)と増加。ノーズダイブ及びロール時にも、充分な縮み代を確保することで、路面への追従性を改善しつつ、底付き感の抑制を図っています。

初代レヴォーグでは、足廻りを硬めに引き締めることで、ガッチリとスタビリティを確保するコンセプト。そのため、固く荒れた路面でのブレーキングでストロークが不足し、ドタドタタッと馬脚を顕にすることがありました。これに対し、新型レヴォーグでは劇的に向上したボディ剛性により、高度なスタビリティを確保しつつ、しっかりと足を動かして乗り心地とNHVを両立させるのが狙い。荒れた路面でのブレーキングでも、余裕あるストロークを生かしてタイヤの接地性を確保することで、スタビリティを確保しようというのです。

その目的は、スバルのフラッグシップたるしっとりとした心地よさの実現にあります。しかし、ドライバーのみに力点を置くのであれば、スタビリティにのみ注力すれば良いはず。しかし、新型レヴォーグはそれをしなかった。その理由は、恐らく「反省」でしょう。初代レヴォーグは、マイナーチェンジ時に足廻りを大幅に変更し、柔らかく仕立て直しています。その理由は、硬すぎる足廻りにありました。絶対性能を重視する余り、フラッグシップとして有するべき快適性に欠けていたのです。

そこで、スバルが新たなるフラッグシップに求めたのが、絶対性能と快適性の調和でした。絶対性能を疎かにすることなく、全ての乗員が感じられる快適性を極める。しかし、これを達成するには、より良いドライビングのためのインフォーメーション伝達と不快な振動・騒音の遮断という、相反する技術目標を達成せねばなりません。

 
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徹底した伝達系の改善が生み出す、決して不快ではない路面インフォメーション。

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優れたドライビングプレジャーを提供するには、伝達系の精度改善が肝要です。タイヤ→ホイール→ハブ→ストラット→ストラットマウント→ボディ→シートフレーム→シート→腰と、タイヤからの路面情報は多種多様な部品を経由して伝達されます。ですから、各部品間のバックラッシュや嵌め合いが大きければ、伝達されるインフォーメーションは減衰し、手まで届かず消えてしまいます。遊びを極限し、精度を詰めていく。そうすることで、ドライバーはハッキリと路面を感じることができるようになるのです。

ただ、インフォーメーションとは、そもそも振動の一種。これを全て伝達していては、乗り心地は不快極まりないものになってしまいます。つまり、振動を適切に取捨選択する設計が求められるのです。

初代レヴォーグは、インフォーメーションを重視する余り、不快な振動もそのまま伝達していました。そのため、同乗者から乗り心地に関して、芳しからぬご評価を頂いていたのは事実です。そこで、新型レヴォーグはコンセプトを一新。絶対性能と快適性の調和を実現するために、ボディ剛性を徹底強化しつつ、足廻りをしなやかな仕立てとしたのです。ただ、しなやかな足廻りと、コシのない足廻りは違います。コシのない足廻りでは、ドライビングプレジャーを提供することはできないのです。

ドライバーが路面をハッキリと感じつつ、同乗者全てが満足する快適性を実現する。この相反する技術目標を達成するため、幾つもの改良が成されています。キングピン軸は限界まで外出しされ、マスオフセットを縮小、外乱による影響の抑制を図っています。また、前後サブフレームの単体剛性を向上させつつ、ブッシュを改良。加えて、ダンパーのフリクション低減を図った他、入力分離式マウントを採用。路面からのインフォーメーションを効率よく伝達しつつ、不快な振動をカットするよう改善を図っています。

ただ、スプリングレートを落とし、ダンパーを緩めていては、コシのない足廻りとなってしまい、スタビリティすら疎かになってしまいます。そこで導入されたのが、最高にして最強のウェポン。STI Sport専用の電子制御ダンパーです。

 
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