2代目WRX S4、フルモデルチェンジの詳細を徹底解説。 [2022年02月23日更新]

WRX
 
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新世代WRX S4、遂に現わる。
 
2022年2月23日 フルモデルチェンジの詳細を徹底解説。

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文責:スバルショップ三河安城 和泉店

お問い合わせ:0566-92-6115

担当:余語

 

2代目WRX、間もなく出荷開始。今、新たな歴史を刻み始める。

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スバル WRX。それは、胸高鳴り、心踊らせる1台。スバルにとって、欠くべからざる存在であり、守り育てるべき伝統でもあります。

初代GC8は、WRC参戦車のベースモデルとして、インプレッサをベースに誕生しています。ただ、初代インプレッサの開発に紆余曲折があったことは余り知られていません。

スバルは、この「レオーネ後継車」の開発時点で、水平対向エンジンの放棄を決心しており、直4搭載のFFモデルとして開発していたのです。3代目レオーネは「ヘバル・ボローネ」と言われる始末で、旧態依然としたエンジンのパワー不足は致命的でした。そこで、スバルは水平対向を放棄することで、世界の潮流に歩調を合わせ、一気に巻き返すことを考えていたのです。

開発は順調に進行し、テスト車両は既に実走テストを重ねていました。ところが、急速な円高がスバルを追い詰めます。深刻な経営悪化を危惧した経営陣は、トップダウンでレオーネ後継車を初代レガシィベースで開発する旨を決定。これを聞いた開発陣の反発は凄まじく、出社拒否するメンバーまで現れます。窮した経営陣は、かの百瀬晋六を投入。一人ひとり説得し、何とか開発再開に漕ぎ着けます。

こうして誕生したのが、初代インプレッサです。ただ、開発陣がノーマルモデルそっちのけで開発にのめり込むことを恐れたために、WRXの存在は開発末期までずっと秘匿されたという逸話が残されています。その後のGC8の活躍は、今更言うまでも無いでしょう。ブルーのインプレッサは、あっという間にWRCの伝説へ昇華。スバルは、憧れのブランドへと一気に躍進を遂げます。

 

インプレッサと袂を分かち、早10年。WRXは、期待の2代目へ進化。

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時代は下って、2011年。インプレッサとWRXは、スカイラインとGT-Rと同様、両者は別モデルとして袂を分かちます。GP/GJ型インプレッサは、アイサイト搭載のファミリーモデルとして人気を集め、派生車XVは一躍シリーズの牽引役へ成長を遂げます。一方、WRXは旧型モデルの販売が継続されました。

この処置は、日本専用のツーリングワゴンモデル・レヴォーグとの兄弟車となるため。VA型WRXは、3年遅れて2014年に発売が開始されます。ATモデル「S4」は、2.0Lレヴォーグと共通のFA20DITを搭載し、アイサイトを標準搭載。一方、6MTモデル「WRX STI」は国内ではEJ20を継続搭載する一方、輸出仕様はトルクを重視した2.5LのEJ25の搭載としています。

レヴォーグとWRXは、名称こそ全く違えど、型式は同じV系であり、前骨格は共通。さらに、フロントドアやインテリアはGP系インプレッサとも共通。そこかしこに、インプレッサファミリーだった名残が残されていました。

そして、2021年。先行した2代目レヴォーグに1年遅れて、2代目WRX S4が発売開始されます。エンジンはトルクを重視して、北米専売の2.4LDITをパフォーマンスモデル向けに仕立て直して搭載。トランスミッションも、先代S4同様にリニアトロニックを継続するものの、全面的に改良された「スバルパフォーマンストランスミッション」を採用。アイサイトは、2代目レヴォーグと共通の第4世代を採用しています。

 

もしや、XV??いや、VIZIV Performance CONCEPTがベースです。

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新型WRX S4、驚くべきはエクステリアデザインです。それは、近年稀に見る、何にも似ていない独創的なデザイン。唯一似ているとすれば、それはXV。。。

ただ、実際にはそうではありません。このデザインは、スバルは2017年に参考出展した「VIZIV Performance CONCEPT」がベース。これを市販モデルとして、忠実に再現したものなのです。スバルはこれまで、「最もコンセプトモデルの再現度が低いメーカー」として、有り難くない称号を頂戴してきました。今回はその汚名を雪ぐべく、「完コピ」を図ったのです。

この特徴的なデザインは、前後バンパーに留まらず、フロントフェンダー、リヤドアに加え、リヤクォーターにも及ぶため、モデルライフ途中での大手術は絶対不可能。スバルは不退転の覚悟を以て、独創的なこのデザインを実現したものと思われます。

スバルの狙いは、着実に効果を上げています。新型WRXの特徴的なアピアランスは、世界中で大きな話題となりました。失敗を恐れて、変化を拒むOEMが多い中、まずは勇気を称えるべきでしょう。

新型WRXのデザインのポイントは、より明確に「拡幅」したように強調すること。勿論、ベースのナローボディが存在しないのに、わざわざワイドキットっぽく見せることには異論があるでしょう。ただ、ナローボディに対する拡幅がWRXの伝統だと考えれば、過去のWRXに対するオマージュだと考えることもできます。

今回の2代目WRXへのフルモデルチェンジは、WRXという歴史に於いて大きな節目となります。伝統のEJ系はいよいよ生産を終了。ボディの大型化に伴い、ラリー活動も区切りを迎えるでしょう。では、何を以て、WRXなのか。何のために、WRXは存在するのか。2代目WRXは厳しい宿題を課せられたと言えます。

 

モータースポーツという呪縛から解き放たれ、WRXは新たな章へ。

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先述の通り、WRX STIはホモロゲーションモデルとして誕生しました。つまり、最大の目的はモータースポーツフィールドで勝つことにありました。しかし、スバルは、WRXのフルモデルチェンジに際し、モータースポーツでの要求を鑑みずに開発したように思われます。

そもそも、Cセグメントのセダンに適したカテゴリーは少なく、可能性があるとすればWTCRのみ。ただ、これとて実際は1クラス下のマシンがターゲット。かつてレヴォーグが参戦していたBTCCは一つの候補でしょうが、イギリス国内選手権にわざわざワークスで参戦するとは思えません。全日本ラリー選手権への参戦も厳しいでしょう。既に車重は1600kg近くまで増加し、ボディは70mmも長くなっています。しかも、ライバルは400kg近く軽量なGR・ヤリス。敵うはずもありません。全米ラリー選手権にはSOAが支援を継続するでしょうが、こちらも大規模なプロジェクトにはならないでしょう。

唯一、WRXが走れるのは、ニュルブルクリンク24時間のみ。ただ、排気量増加に伴って、SP3TクラスからSP4Tクラスへの変更を強いられるはずで、Porsche 718 Cayman GT4と競うこととなるため、厳しい戦いが想像されます。これを回避するため、SP-Xクラスへ特認車両として参戦する可能性もあります。

何れにしても、2代目WRXがモータースポーツで活躍する可能性は低いでしょう。ただ、これは世の趨勢。市販車ベースカテゴリーの主役は、専らGT3。一方、ラリーでの主役はBセグメント以下のサブコンパクト。WRXが出られるフィールドがない以上、致し方ありません。

逆に、ホモロゲーションモデルという束縛から解き放たれ、WRXはより自由になります。絶対的性能より、普遍的快適性を。スペックよりも、満足感を。今まで、心なしか犠牲を伴ってきた制限から、WRXは完全に自由になるのです。これは、WRXという歴史上、決して不本意な後退ではなく、必ずしや意義ある前進となるはずです。

 

過激なドーピング志向とは一線を画す、WRXの新たなパワーソース。

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2代目WRX S4のパワーソースは、北米専売の3列シートSUV「アセント」用に開発されたFA24DIT、水平対向4気筒2.4L直噴ターボエンジン。これをWRX用にリファインしたユニットが搭載されています。最大出力は、275ps(202kW)/5600rppm。最大トルクは、375N・m(38.2kgf・m)/2000〜4800rpm。先代S4のFA20DITに比して、最大出力で約8%、最大トルクでは約6%低下し、リッターあたりのパフォーマンスでも出力で23%、トルクでは22%低下しています。

エンジンの出力低下に加えて、車重が60kg増加していることから、絶対的パフォーマンスが下がっているのは確実。ただ、この事実が、WRX S4の意味を台無しにするか?そう問われれば、そうじゃない!と、小生は間違いなく断言できます。

過剰なスペックは、実際には意味を成しません。しかし、それを成立させるには、より強靭なシャシーと、より太いタイヤと、より制限の厳しい電子制御を必要とします。結果的に、それはコストを押し上げ、しっぺ返しでクルマは鈍重になります。そうやって出来上がるのは、電子制御がビンビンに効いて、ギュンギュン曲がるだけのタイムアタッカー。実のところ、スペックだけを追いかけても、良いことは一つも無いのです。

実のところ、スバルが出力を制限した最大の理由は、駆動系にあります。スバルは世にも希少なパッケージングゆえ、トランスミッションもデフもすべて内製。もし、エンジン出力が駆動系のトルク容量をオーバーするのなら、トランスミッションもデフもすべて、自ら新規に作り直さねばなりません。

確かに、それも一つの勇気でしょう。FA24DITは350psは可能なはずで、これに耐えられる駆動系があれば、世界に伍するパフォーマンスも実現可能です。でも、そのコストは必ずしや価格に反映されます。つまり、値段は倍になるでしょう。

実際、M3やGT-Rはそうした道をひた走っています。でも、WRXがその道を往くことは、真にファンが望むことなのでしょうか?

GC8以来、スバルの魅力は「一味違う満足を得られつつ、アフォーダブルである」ことにあります。新型WRX S4は、そのギリギリを攻めてきた。モアパワー・モアスピード=モアマネー。けれど、その中でも出来うる最善をお届けしたい。新型WRX S4からは、そんな思いを感じ取ることができます。

 

第二世代SGPのカギは、フルインナーフレーム構造と構造用接着剤。

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新型WRX S4では、新たに第二世代SGPを採用しています。スバルの新世代プラットフォーム「SUBARU GLOBAL PLATFORM」は、2016年にインプレッサと共にデビューしたため、先代WRXは旧型SIシャシーの補強版を用いていました。そのため、300ps級は少々キャパオーバーで、尖ったパフォーマンスを実現することはできませんでした。

しかし、今回はSGPをさらに進化させた第二世代SGPを採用。強靭なシャシー剛性を手に入れています。第二世代のキモは、フルインナーフレーム構造と構造用接着剤の積極採用にあります。

従来、乗用車は下面のシャシーに、左右側面、ルーフとなる上面の各パネルアッセンブリを接合して組み立てていました。この手法は生産性を格段に向上させるものの、各パネル間の接合に外板が邪魔して、綿密な接合ができません。フルインナーフレーム構造は、構造部材を先行して組み上げ、外板は最後に貼り付けていくことで、部材間の接合をより強固にすることが可能です。例えば、新型BRZは同じシャシー設計を流用しつつも、インナーフレーム構造化することで、剛性の大幅引き上げに成功しています。

また、構造用接着剤も剛性向上に大きな役割を果たしています。日本のOEMは生産性を理由に、スポット溶接に固執してきました。確かに、スポット溶接は歩留まりもよく、コストダウンが可能です。ただ、接合面積が「点」であるため、「線」で接合する連続溶接に比して、大幅に接合強度に劣ります。結果的に、補強で剛性を稼ぐしかないため、国産車のホワイトボディはどうしても重たいのです。そこで、スバルは積極的に構造用接着剤を導入。それも、SGP第1世代のインプレッサ系での7mから、一気に26mまで増やすことで、更なる剛性向上を図っています。

結果は、如実に現れています。ねじり剛性のうち、静剛性を+28%、動剛性を+11%向上させることに成功しているのです。静剛性とはボディに対してグーッと押し込んでいくような負荷に対する抵抗性を、動剛性とはグッグッと叩くような衝撃入力に対する抵抗性を示しています。

例えば、高G旋回中にアウト側のタイヤが路面の凹凸を拾うような場合、シャシーのキャパが小さいと、途端にガシガシと揺すられて、進路が乱れます。こういう状況でも絶対に馬脚を現すことなく、懐深い安心感の高い挙動を堅持する。スピード域を高めても、恐怖とリスクは決して高くならない。常に安心感に包まれた中で、存分にパフォーマンスを愉しむことができる。それが、新型WRXの目指すパフォーマンスの境地です。

 

より正確性の高い走りへ。伝達系の精度向上を目指し、進化した足回り。

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サスペンション形式は30年来変わらぬ、フロントにストラット、リヤにダブルウィッシュボーン。当然、シャシーの進化に符合して、サスペンションも相応のアップデートが成されています。

SGPが志向したのは、より正確性の高い走り。荒れた路面でも、ウェットでも、スノーでも。如何なる環境に於いても、優れたスタビリティとコントロール性を実現することで、常にドライバーの意志に忠実な、懐深く滑らかな「上質な走り」を手に入れる。スバルはこれを「動的質感」と呼び、その深度化と充実を目指してきました。

ドライバーがライントレースする際、その操作はありとあらゆる伝達系を経由してタイヤに至り、クルマの動きは再び伝達系を介してドライバーにフィードバックされます。つまり、伝達系からヒステリシスを排除することが、精度向上に繋がることになります。ただ、レーシングカーのようなギチギチの伝達系では、快適性のカケラもありませんから、上質な走りは望むべくもありません。不快な成分はきっちりカットし、伝えるべきを伝えるけども、情報はチャントと調律する。そういった吟味が、新型WRX S4では徹底されています。

サスペンションストロークは、フロント:5%、リヤ:20%伸ばすことで、路面変化への追従性を向上させています。さらに、前後スタビライザーの取付方法を変更。フロントはストラットへ取付とし、リヤはボディへダイレクトマウント化。これにより、ロール剛性を20%向上。また、ロールモーションをより自然なものとするため、ロールセンターを前下りに変更。懐深く足はしっかり動かすけれど、ふにゃっとはさせない。しっかり芯のある走りを志向しています。

フロント転舵時の回転中心軸(キングピン軸)をホイール側に近付けることで、キングピンオフセットを6%低減。ステア時のトルクを軽減した他、外乱に対する耐性を改善。さらに、ストラットのトップマウントをダイレクト式から入力分離式に変更。コイルスプリングは直接、ダンパー入力はマウントゴムを介することで、フィードバックする情報の選別を行ってます。

パワステには、2ピニオン電動パワーステアリングを採用。ドライバーの入力トルクを検知する入力軸と、モータトルクを入力するアシスト軸を分離することで、操舵時のフリクションを低減すると共に、リニアで滑らかなアシストを実現。さらに、フィードバックのより明瞭な伝達を図っています。

 

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