スバルは、ニュルブルクリンクに何を求めるのか。 [2022年06月07日更新]
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第50回記念レースを制したのは、アウディ・15号車。
2022年5月27日〜28日にかけて決勝が行われた、第50回ニュルブルクリンク24時間レース。コロナ禍で参戦を停止していたスバルは、3年ぶりにファクトリー体制で復活参戦。その他、100台以上(!!)のマシンがオールドコースとグランプリコースを接続した超ロングコースに集いました。
現地時間16時、快晴の中で幕を開けた、2022年ニュルブルクリンク24時間レース。序盤から、SP9クラスに分類されるGT3マシンが激しいトップ争いを演じます。いきなり不運に見舞われたのは、昨年の優勝車マンタイ1号車。日没前、他車と接触してコントロールを失うと、激しくクラッシュ。早々にリタイヤに追い込まれます。逆に、序盤から安定していたのは、アウディ勢とAMGメルセデス勢。中でも、アウディ・15号車は常に上位をキープ。レース折返しを前に、盤石のリードを確保します。これに追いすがったのは、BMW勢。新型車M4を投入したBMWは、今回必勝体制を構築。並々ならぬ決意で挑んでいました。ところが、ローヴェの98号車が早々にクラッシュ。夜半に99号車がクラッシュすると、残された20号車は28日早朝、果敢に15号車に挑みます。ところが、突如降り出した雨でコースアウト。タイヤがバーストし、トップ争いから脱落してしまいます。
20号車が消えた後、15号車に挑んだのは、敢えて冷静にレースを展開してきたAMGメルセデス・3号車。昼前に一気にペースアップすると、15号車のテールに喰らいつき、プレッシャーを掛けていきます。明暗を分けたのは、再び降り出した雨。3号車のスリックに対し、15号車はカットスリック。これが功を奏して、15号車は1分ものマージンを確保することに成功したのです。15号車はパワステトラブルをフルード補給で凌ぎ、最終ピットストップで課された1分のペナルティも、十分なマージンを確保。その座を譲ることなく、見事優勝を確定させました。
今年も危険なクラッシュが続発。安全対策は急務。
グリーン・ヘルと仇名されるニュルブルクリンク。今回も、ヒヤッとさせられるクラッシュが多発しました。
特に、マンタイ1号車がクラッシュしたシーンは、激しいトップ争いの最中のアクシデント。コントロールを失ったマシンがコースを横断し、ウォールに激しくヒット。二次衝突が起きていれば、深刻な事態になっていた可能性がありました。同じ場所では、数台がクラッシュしており、同様にコースを横切ってストップしています。ランオフエリアがない故のことですが、2020年代のイベントとして、このような危険なレイアウトが許されるのでしょうか。。。二次衝突は危険なTボーンクラッシュの可能性が高く、対策は必須でしょう。
小生がモータースポーツに興味を持ったのは、1990年。折しもF1ブーム真っ盛りの頃。以来、多くのドライバー・ライダーの訃報に接してきました。この30年、モータースポーツは劇的に変化しました。米国式フルコースコーションの導入、VSCやスローゾーン、車両の安全対策や性能調整など、数多の対策で安全の向上を図ってきました。それでも、死亡事故は起こり続けています。
数年前、GT-Rが観客席に飛び込み、観客が死亡する事故が起きたニュルブルクリンク24時間。しかし、SP9クラスのマシンは、依然として危険なスピードで鍔迫り合いを演じています。何らかのスピード抑制策は必須に思われます。
急峻な地形故か、このレースではレッカー車がコース上を走行します。言わずもがな、非常に危険なシーンです。レッカー車とのクラッシュは、F1日本GPでのジュール・ビアンキの死亡事故を想起させるもの。レッカー車走行中はダブルイエローを提示するか、レッカー車をコース外に走行させるなど、対策が求められます。
ニュルブルクリンク24時間は、素晴らしいレースイベントです。今や、「世界四大24時間レース」と言えるほどに、規模を拡大しています。また、スパ、ルマンと同様の気まぐれなニュルウェザーは、見る者に手に汗握るスペクタクルを演出します。ただ、2020年代に相応しい安全対策は導入されて然るべきでしょう。
クラッシュによりリタイヤに終わった、スバルの挑戦。
さて、今回のスバル・WRX STI 114号車のチャレンジ。深夜3時過ぎ、突然のタイヤバーストによりコースアウト。激しいクラッシュにより損傷がフレームにまで及んだことで、リタイヤを選択。残念な結果に終わりました。ただ、残念だったのは、レース結果ではありません。レース中、114号車の動静がまったく伝わってこなかったことです。
今回、コロナ禍での参戦からか、スバルによるオンボード中継はなし。公式ライブストリーミングでは、映像はトップ争いを演じるGT3ばかりで、下位クラスではGT4やTCRが中心。114号車が映ったのは、他車のオンボード映像のみで、それも1回のみ。。。STIの公式SNSのアップも緩慢で、状況を伝えるのはライブタイミングのみという、スバルファンには辛い状況でした。
あるタイミングから、114号車の周回数が64周でストップします。この時点で、既にクラッシュしていたはずですが、ライブストリーミングでは一切報じられず、状況は判然とせぬまま時間だけが過ぎていきました。1時間ほど経過した頃、公式レポートが更新。クラッシュが発生し、ドライバーは無事ながらも、車両の状況は不明。との情報がアップされます。しかし、続報がありません。
ニュルブルクリンク24時間では、先述の通りレッカー搬送後の修復が認められています。搬送して戻された車両を修復中なのか、損傷が酷くて修復不可能なのか、状況が不明なまま時間だけが過ぎていきます。漸く、リタイヤが伝えられたのは、クラッシュ発生から数時間後のこと。
徹夜で見守っていたスバルファンもいたことでしょうし、奇跡の復活を今か今かと待ってい方もいたはずです。レッカーで戻ってきた姿や修理に挑む模様を、現地から公式SNSで伝えることも出来たはずでしょう。しかし、スバルはそれもしませんでした。今後は、二度とファンの期待を裏切らないよう、チームは真摯に努力すべきです。
GT3/GT4への流れへ抗い、SP3Tへの参加を続けるスバル。
時の流れは早いもので、WRCからの撤退から早14年。車両規定の改定により、水平対向エンジンのメリットが失われたスバルは、成績低迷打開の糸口が見いだせないまま、失意の撤退を決断します。活動の場所を失ったスバルが、次なるステージに選んだのが、ニュルブルクリンク24時間でした。
当時のニュルブルクリンク24時間は、ドイツ国内の草レース。ワークスなんて見る影も無い頃。殆ど市販車同然のクルマが多数集まる、お祭りイベントの色彩が強いものでした。そこに、スバルはチャレンジャーとして挑戦を開始します。
参戦の目的は、レースを通じて市販車を鍛え上げること。グリーン・ヘルと仇名される厳しいコースでWRXの弱点を見出し、より高い完成度を目指すのが、目標だったのです。つまり、参戦の主題はレース結果ではなく、市販車へのフィードバックであり、その成果がR205を始めとするSTIコンプリートカーでした。
しかし、GT3の登場が、ニュルブルクリンク24時間の色を変えていきます。当初、GT3へのOEMの直接的関与は禁じられていました。OEMはあくまで設計者であり、製造者であって、エントラントであってはならない。それが、GT3の基本理念でした。ところが、ドイツのOEMは、この基本理念をなし崩し的に破壊していきます。彼らは隠れワークスを組織し、各レースの制覇を目指し始めたのです。そして、気が付いた時には、GT3はOEM戦争の場になっていました。
ニュルブルクリンクへ参戦する意味は、何処に。
そうした流れの中にあって、スバルは蚊帳の外から出ようとはしませんでした。スバルは、あくまで市販車強化を目的とし続けたのです。しかし、それがスバルの本来意義と見出したのなら、それもまた是。ところが、スバルには、熱心に応援するファンがいます。ある時は、同一クラスのアウディ・TTと丁々発止のバトルを展開。ファンの声援を得たWRXですが、惜敗を喫します。以来、ファンの声援を受けたスバルは、捲土重来を狙って参戦目標にクラス優勝を掲げるようになります。
その一方で、スバルが参戦するSP3Tクラスは過疎化を始めます。より濃密なコンペティションを求めて、ライバルは次々にGT3やGT4へと去っていったのです。SP3Tは、いつの間にか中古レーシングカーを持ち込むプライベータのクラスとなっていました。
しかし、SP3Tの実態とは裏腹に、スバルはWRX STIの強化を続けます。巨大なリヤウイングやシーケンシャルミッションなど、市販車とは凡そ関連のない「タマ」が、次々に投入されたのでず。この時点で、WRX STIは市販車との関連性を失い、スバルは本来の参戦目的を失ったはずでした。
しかし、スバルは撤退を選択することはできませんでした。そして、2022年。コロナ禍を潜り抜けたスバルは、3年ぶりにニュルブルクリンクへ戻ってきました。クラス優勝を目標に掲げて。。。
次期WRX STIは、存在しません。EJ20の生産も、既に終了しています。今や、スバルは参戦する意味をすべて失っています。来年以降、スバルは如何なる体制を以て、如何なる目的・目標を以て挑戦を継続するのでしょうか。後述のカーボンニュートラル燃料仕様のBRZでは、2000Lもの燃料をドイツへ持ち込まねばなりません。それは到底不可能。では、次なる答えは何なのか。。。年末年始のSTI活動計画発表を楽しみに待ちたいと思います。
新たに始まったファクトリー活動。その目指す処は。。。
ニュルブルクリンク24時間の興奮も冷めやらぬ、6月4〜5日。日本の富士スピードウェイでスーパー耐久第2戦フジ24時間レースが開催されています。コンセプトは、ニュルブルクリンク24時間と同じ。種々雑多なマシンに広く門戸を開き、多くのエントラントを集めようというもの。このコンセプトは成功しつつあり、富士24時間は多数のエントラントを集め、初夏のお祭りイベントとして定着しつつあります。
中でも注目を集めているのが、トヨタとROOKIE RACINGによる共同プロジェクト。水素エンジン搭載のカローラSPORTと、カーボンニュートラル燃料を用いるGR・86の2台。レースという厳しい環境下で先進技術開発を進めることで、代替燃料へ衆目を集めるとともに、開発のスピードを高めることを目的としています。豊田氏は広く関係各所に呼びかけ、モータースポーツに研究開発の輪を広げています。トヨタに続き、スバル、マツダも実験車両を投入した他、日産も新たに新型Zの実験車両を投入したのです。
スバルが投入しているのは、BRZをベースにカーボンニュートラル燃料を使用するプロトタイプモデル。但し、エントラントはあくまでスバル。参戦費用をマーケティング部門から捻出するワークス体制ではなく、研究開発部門から支出するファクトリー体制で参戦しています。第2戦となる富士24時間では、ドア等をCFRP化。新たにボンネットにエアアウトレットを追加するなど、モデファイが進行。急速な開発の進展を伺わせます。
日本のOEMは、BEVだけが次世代自動車の答えではないと考えています。発展途上国の中には、日常的に電力不足に見舞われる国もあり、こうした国では引き続き化石燃料に依存することになるはずです。その一方で、二酸化炭素の排出削減はマスト。そこで考えられるのが、化石燃料からカーボンニュートラル燃料やバイオ燃料への転換です。日本のOEMの試みは、将来きっと大きな成果を得られるでしょう。今後の開発の進展を楽しみにしたいと思います。